在宅患者訪問薬剤管理指導料は、要件を満たしていても「その患者・その場所・その薬局」では算定できない場面があります。訪問してから気づくと、その回はまるごと持ち出しになります。
本記事は医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料について、算定できない7つのケースと、代わりに何を算定できるかを通知の原文にもとづき整理します。介護保険側は 居宅療養管理指導が算定できないのはどんなとき? をご覧ください。
- 入院中・介護老人保健施設で療養中は「在宅での療養を行っている患者」に当たらず算定不可
- 要介護・要支援認定がある患者は介護保険の居宅療養管理指導費が優先=医療保険では算定しない
- 他の薬局が既に訪問薬剤管理指導を行っている患者には算定不可(在宅協力薬局の枠組みを除く)
- 16kmを超える訪問は特殊な事情がない限り算定不可
- 特別調剤基本料Bの薬局は算定不可
ケース一覧【早見表】

| ケース | 算定 | 根拠 | 対処・代替 |
|---|---|---|---|
| ① 入院中/介護老人保健施設で療養中 | × | 通知(3)「在宅での療養を行っている患者」の定義 | 退院前なら退院時共同指導料(600点)を検討 |
| ② 医師・薬剤師の配置が義務付けられた施設に入所中 | × | 通知(3) | 告示128号・特養等の取扱通知に規定する場合を除く |
| ③ 要介護・要支援認定を受けている | ×(医療保険では) | 給付調整通知・告示128号 | 介護保険の居宅療養管理指導費で算定 |
| ④ 他の薬局が既に訪問薬剤管理指導を行っている | × | 通知(3) | 在宅基幹薬局・在宅協力薬局の枠組み(通知(4))なら可 |
| ⑤ 薬局と患家の距離が16kmを超える | × | 告示 注7 | 患家の半径16km圏内に届出薬局が無い等の特殊な事情があれば可 |
| ⑥ 自局が特別調剤基本料Bを算定している | × | 通知(14) | — |
| ⑦ 通院が困難でない/医師の指示がない/届出がない | × | 告示 注1 | 要件を整えてから。届出は別紙様式3 |
| (参考)月4回・週1回の上限を超えた | × | 告示 注1・通知(8) | 特例患者(週2回月8回)か、緊急訪問(別枠)に該当しないか確認 |
① 入院中・介護老人保健施設で療養中
通知(3)は「『在宅での療養を行っている患者』とは、保険医療機関又は介護老人保健施設で療養を行っている患者以外の患者をいう」と定義しています。入院期間中と老健入所中は、そもそも対象患者ではありません。
退院が決まっている患者さんには、入院中に病院側と共同で指導し文書で情報提供する退院時共同指導料(600点、入院中1回。厚生労働大臣が定める疾病等の患者は2回)があります。退院直後に訪問を始める場合は、初回算定月に 在宅移行初期管理料(230点) も検討します。
② 医師・薬剤師の配置が義務付けられた施設に入所中

通知(3)のただし書は「患者が医師若しくは薬剤師の配置が義務付けられている病院、診療所、施設等に入院若しくは入所している場合」は算定できないとしています。例外は「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」(平成20年厚生労働省告示第128号)や「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」に規定する場合です。
施設ごとの可否は介護保険側の整理が参考になります。施設種別ごとの算定可否 と 施設種別×算定可否 早見表 をあわせてご覧ください。
③ 要介護・要支援認定がある(介護保険優先)
要介護・要支援認定を受けている患者さんには介護保険の給付が優先されるため、在宅訪問は介護保険の居宅療養管理指導費(518単位/379単位/342単位)で算定します。「高齢だから」「がんだから」ではなく、認定の有無だけで決まります。
月の途中で認定が下りた場合の切り替えは保険者により運用が異なることがあるため、迷ったら保険者・審査支払機関に確認してください。判定の手順は 医療保険と介護保険どっちを算定する? で整理しています。
④ 他の薬局が既に訪問薬剤管理指導を行っている
通知(3)は「現に他の保険医療機関若しくは保険薬局の保険薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている場合には、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できない」としています。1人の患者に対して訪問薬剤管理指導料を算定できる薬局は1つです。
例外は通知(4)の在宅基幹薬局と在宅協力薬局の枠組みです。訪問を主に行う薬局(在宅基幹薬局)が、連携する薬局(在宅協力薬局)と薬学的管理指導計画の内容を共有し、緊急その他やむを得ない事由がある場合に協力薬局が代わりに訪問する形であれば、算定の道があります。
⑤ 薬局から患家まで16kmを超える
告示の注7は「保険薬局の所在地と患家の所在地との距離が16キロメートルを超えた場合にあっては、特殊の事情があった場合を除き算定できない」と定めています。判定は患家を中心とする半径16kmの圏内に自局があるかで行います。
「特殊の事情」とは、患家から半径16km圏内に訪問薬剤管理指導の届出をしている薬局が存在しないなど、当該薬局からの訪問を必要とする事情です。患家の希望だけで16kmを超えて訪問した場合は保険給付として認められず、患者負担になります。
⑥ 特別調剤基本料Bの薬局
通知(14)は「在宅患者訪問薬剤管理指導料は、特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は算定できない」としています。在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅移行初期管理料、訪問薬剤管理医師同時指導料にも同様の規定があります。
⑦ 通院が困難でない・医師の指示がない・届出がない
告示の注1が求める「届出」「通院が困難」「医師の指示」「薬学的管理指導計画」「患家を訪問して指導」のいずれかが欠けると算定できません。
- 通院が困難:希望すれば誰でも対象になる項目ではない。自分で来局できる患者は対象外
- 医師の指示:指示の内容と日付を薬歴に残す(通知(10)の記載事項)
- 届出:在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を別紙様式3で地方厚生局長等へ届け出る(通知(15))
- 2026年改定の新要件:開局時間外の連絡先を、在宅協力薬局の情報を含め、原則初回訪問時に文書(薬袋可)で交付する(通知(13))
「算定できない」を減らす運用の型
- 受付時に介護保険証・ケアマネジャーの有無を確認する(③)
- 初回訪問前に他薬局の訪問の有無を患者・家族・医師に確認する(④)
- 訪問先の住所から距離を確認し、16km超なら届出薬局の有無を調べる(⑤)
- 入退院・施設入所の予定を医師・ケアマネジャーと共有し、入院月は算定しない運用にする(①②)
- 訪問予定表を週1回・月4回で組む(回数超過の防止)
複数の条件が重なって迷うときは、記事下の「在宅算定 まるごと判定ツール」で自局のケースを確認できます。
よくある質問(FAQ)
入院中の患者に在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できますか?
できません。通知は「在宅での療養を行っている患者」を保険医療機関または介護老人保健施設で療養を行っている患者以外と定義しています。退院前の共同指導は退院時共同指導料(600点)の対象です。
要介護認定を受けている患者に算定できますか?
原則できません。介護保険の給付が優先されるため、居宅療養管理指導費で算定します。
他の薬局も訪問している患者に算定できますか?
「現に他の保険医療機関若しくは保険薬局の保険薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている場合」は算定できません。在宅基幹薬局と在宅協力薬局の枠組みに該当する場合を除きます。
16kmを超える患者宅への訪問はどうなりますか?
特殊の事情があった場合を除き算定できません。特殊の事情とは、患家の半径16km圏内に訪問薬剤管理指導の届出をしている薬局が無い等、当該薬局からの訪問を必要とする事情です。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料と審査支払機関の取り扱いをご確認ください。
- 調剤報酬点数表(令和8年厚生労働省告示 別表第三) — 区分15〜15の10・区分10の3
- 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第4号 別添3) — 区分15の1〜15の10の留意事項
- 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項(令和8年3月27日 保医発0327第4号・老老発0327第2号) — 要介護者への算定可否の表
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について — 告示・通知・疑義解釈の一覧

