訪問して服薬指導まで行ったのに、あとから「この訪問は算定できない」と気づく——在宅を始めた薬局が一度は経験するつまずきです。結論からお伝えすると、居宅療養管理指導が算定できないケースはパターン化できます。大きくは「患者さんがいる場所が理由になるもの」と「手続き・要件の不備が理由になるもの」の2系統です。本記事では、よくある7つのケースを一覧で整理し、それぞれの対処法・代替手段までセットで解説します。
前提:算定の大前提を先に押さえる

個別のケースに入る前に、大前提を確認します。要介護・要支援認定を受けている患者さんは介護保険の居宅療養管理指導が優先され、認定のない患者さんは医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料で算定します。そのうえで、医師の指示にもとづくこと、薬学的管理指導計画を作成すること、回数の上限(原則月4回まで。末期の悪性腫瘍等は週2回かつ月8回まで)の範囲内であることが基本の要件です。
要件の全体像と単位数(単一建物居住者1人518単位・2〜9人379単位・10人以上342単位)は「【2026年最新】居宅療養管理指導の算定要件と単価」で詳しく解説しています。本記事は「算定できないケース」に絞って掘り下げます。
算定できない7つのケース一覧
| ケース | 算定 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| ① 老健・介護医療院に入所中 | 不可 | 入所情報を把握し、算定を止める |
| ② 特養に入所中 | 原則不可 | 例外(末期の悪性腫瘍)の該当を確認する |
| ③ ショートステイ利用中 | 不可 | 利用予定を共有してもらい、訪問日を調整する |
| ④ 入院中 | 不可 | 入院の把握フローを作り、退院後の再開に備える |
| ⑤ 医師の指示・情報提供文書がない | 不可 | 指示の確認と文書の保管を徹底する |
| ⑥ 薬学的管理指導計画が未作成 | 不可 | 訪問開始前の計画作成をルール化する |
| ⑦ 月の算定上限を超えた訪問 | 超過分は不可 | 患者ごとの回数管理を仕組み化する |
①〜④は「患者さんが居宅にいない」ことが理由、⑤〜⑦は「薬局側の手続き・管理」が理由です。前者は情報共有の体制で、後者は業務フローの整備で防げます。なお、②の特養のように例外があるケースもあるため、施設の名称だけで機械的に判断しないことも大切です。順に見ていきましょう。
場所が理由で算定できないケース(①〜④)
① 老健・介護医療院に入所中
介護老人保健施設(老健)や介護医療院に入所している期間は、施設側に薬剤管理が包括されているため算定できません。対処法は、入所の情報をすみやかに把握して算定を止めることに尽きます。退所して自宅や算定可能な住まいに戻れば再開できるため、施設・ケアマネジャーと退所見込みを共有し、服薬情報の引き継ぎを準備しておきましょう。
② 特養に入所中(末期の悪性腫瘍以外)
特別養護老人ホームの入所者は原則算定不可です。例外は末期の悪性腫瘍の入所者のみで、この場合は算定できます。対処法としては、まず患者さんが例外に該当するかを医師からの情報で確認すること。該当しない入所者への薬の管理支援を求められた場合は、算定を伴わない対応の可否や範囲を施設側とあらかじめ取り決めておくと、行き違いを防げます。
③ ショートステイ利用中
短期入所生活介護などのショートステイを利用している期間も算定できません。在宅と施設を行き来する患者さんで起こりやすいつまずきです。対処法は、ケアマネジャーからショートステイの利用予定を事前に共有してもらい、訪問日を利用期間の外に調整すること。ショートステイ前後の薬の受け渡しや管理の工夫は「ショートステイ中の薬の管理」で詳しく解説しています。
④ 入院中
入院中は病院側で薬剤管理が行われるため、算定できません。厄介なのは入院をすぐに把握できないことです。訪問して初めて入院を知り、その月の訪問計画が崩れることもあります。家族・施設・ケアマネジャーから入院の連絡をもらえる体制をつくり、退院時には処方変更の有無を確認して訪問を再開する流れを決めておきましょう。入院が長引きそうな場合は、契約やケアプラン上の扱いを早めにケアマネジャーと相談しておくと、退院後の再開がスムーズです。
手続き・要件の不備で算定できないケース(⑤〜⑦)

⑤ 医師の指示・情報提供文書がない
居宅療養管理指導は医師の指示にもとづいて行うサービスです。指示がないまま訪問しても算定できません。処方箋への記載や指示文書など、指示があった事実を確認できる記録を必ず残し、あいまいな場合は処方元に確認してから訪問します。「とりあえず訪問して、書類は後から整える」という進め方は、返戻や指導の火種になります。新規の受け入れ時だけでなく、処方元の医師が変わったタイミングでも確認が漏れやすいため注意してください。
⑥ 薬学的管理指導計画が未作成
訪問の前提となる薬学的管理指導計画を作成していない訪問は算定できません。対処法はシンプルで、訪問開始前の計画作成を業務フローに組み込み、様式をテンプレート化しておくことです。処方内容や患者さんの状態に変更があれば計画も見直す運用にしておくと、形骸化を防げます。計画は算定の根拠となる基本書類です。作成して終わりにせず、実際の訪問内容と整合しているかも定期的に見直しましょう。
⑦ 月の算定上限を超えた訪問
回数の上限は原則月4回まで、末期の悪性腫瘍等の場合で週2回かつ月8回までです。上限を超えた訪問分は算定できません。月末に臨時対応が重なり、気づかないうちに超えていたというのが典型例です。レセコンや一覧表で患者ごとの算定回数を見える化し、臨時訪問の扱い(算定するか、算定外の対応とするか)を事前にルール化しておきましょう。回数の上限と訪問間隔のルールは「居宅療養管理指導は月何回まで?算定回数の上限・間隔ルール」で詳しく解説しています。
よくある判断ミス:処方箋・配達・施設名で決めつけない
7つのケースとは別に、「本当は算定できるのに、できないと思い込んでいる」という逆方向のつまずきもよく起こります。ここでは現場で判断が分かれやすい3つの論点を整理します。
処方箋が出ていない月は算定できない?
「その月に処方箋が出ていないから算定できない」と考えてしまうケースです。しかし算定の要件は医師の指示にもとづくことであって、処方箋の有無そのものが可否を決めるわけではありません。処方箋の交付は指示の一形態であり、別途の訪問指示書によって指示が出されることもあります。したがって、医師の指示があり、実際に薬学的管理指導を行って記録を残しているのであれば、処方箋の交付を伴わない訪問(残薬の確認や服薬状況のフォローなど)も算定の対象になり得ます。
ポイントは、指示がどの形で出ているかを薬局側が把握できているかどうかです。処方箋しか指示の経路がない状態だと、処方箋が出ない月にそのまま訪問が止まってしまいます。長期処方の患者さんや、日数調整で処方月と訪問月がずれる患者さんでは、指示の形態を処方元とあらかじめ取り決めておくと迷いがなくなります。個別の事情で判断に迷う場合は、自局で決めつけず処方元の医師や保険者に確認してください。指示の形態と全体の算定フローは「居宅療養管理指導の算定要件と単価」で詳しく解説しています。
薬を届けるだけの訪問は算定できる?
こちらは逆に、算定できると思い込みやすいケースです。答えは明確で、単なる薬の配達だけでは算定できません。居宅療養管理指導は薬学的管理指導を行うサービスであり、服薬状況・残薬・副作用の確認といった指導の実態と、その記録が必要です。「ついでに届けた」訪問を算定に含めてしまうと、返戻や指導の対象になります。配達のみで終わった訪問は算定しない、という線引きを社内ルールとして明文化しておきましょう。
施設名だけで判断していないか
「施設に入っているから算定できない」と一括りにするのも危険です。前述のとおり特養でも末期の悪性腫瘍の入所者は例外として算定できますし、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、グループホームは施設の呼び名ではなく住まいの類型と単一建物居住者の区分で判断します。施設種別ごとの算定可否は「特養・老健で居宅療養管理指導は算定できる?施設種別×算定可否の早見表」の一覧が便利です。
また、「算定できない」と混同されやすい論点として他の点数との併算定があります。居宅療養管理指導そのものは算定できても、同じ月・同じ日に別の指導料が算定できないという組み合わせの制約は別問題です。こちらは「居宅療養管理指導と同時算定できないものは?併算定可否の一覧と大原則」で一覧にまとめています。
共通する対処法:訪問前チェックをルーチン化する
7つのケースを見渡すと、共通する予防策は「訪問前の確認」に集約されることがわかります。
- 受け入れ時:要介護・要支援認定の有無、住まいの類型、医師の指示・情報提供文書、計画の作成状況を確認する
- 毎月の初回訪問前:入院・ショートステイ・入所など、滞在先の変動をケアマネジャー・施設に確認する
- 訪問のたび:当月の算定回数を確認し、上限までの残り回数を把握する
こうした確認は担当者の記憶に頼らず、チェックリストとして仕組みにするのが確実です。自局の算定漏れ・誤算定のリスクは、無料の「在宅算定 まるごと判定」でまとめて点検できます。
よくある質問
処方箋が交付されていない月でも算定できますか?
算定の要件は医師の指示にもとづくことであり、処方箋の有無そのものが可否を決めるわけではありません。処方箋の交付は指示の一形態で、訪問指示書による指示もあり得ます。医師の指示があり、薬学的管理指導を実施して記録を残していれば算定の対象になり得ます。指示がどの形で出ているかを処方元と取り決めておき、判断に迷う場合は処方元・保険者に確認してください。
薬を届けるだけの訪問は算定できますか?
算定できません。居宅療養管理指導は薬学的管理指導を行うサービスです。服薬状況・残薬・副作用の確認といった指導の実態と記録が必要で、配達のみの訪問は算定の対象外です。
ショートステイ中に薬を届けた場合は算定できますか?
算定できません。短期入所生活介護などのショートステイ利用中は居宅療養管理指導の対象外です。ケアマネジャーから利用予定を事前に共有してもらい、訪問日を利用期間の外に調整してください。
月4回の上限を超えて訪問が必要になった場合はどうすればよいですか?
末期の悪性腫瘍の患者さんなど一部の場合は週2回かつ月8回まで算定できます。該当しない場合、上限を超えた訪問分は算定できないため、医師・ケアマネジャーと訪問計画を調整し、臨時対応の扱いを事前にルール化しておきましょう。
医師の指示は口頭でもよいですか?
指示があった事実と内容をあとから確認できる形で残すことが重要です。処方箋への記載や指示文書で確認し、記録を保管してください。あいまいなまま訪問すると返戻・指導の場面で不利になります。
まとめ:できないケースを知ることが、取り切る第一歩
居宅療養管理指導が算定できないのは、多くの場合「制度が複雑だから」ではなく「確認が漏れたから」です。場所の変動(入所・入院・ショートステイ)と手続きの不備(指示・計画・回数)という2系統のパターンを押さえ、訪問前チェックをルーチン化すれば、誤算定と取りこぼしの両方を防げます。算定できる訪問を確実に算定し切ることが、在宅の収益の土台になります。本記事で挙げた7つはどれも日々の運用の中でよく起こるものです。まずは自局の直近の算定を振り返り、思い当たるケースがないか点検するところから始めてみてください。
最終更新日:2026年7月16日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

