在宅患者訪問薬剤管理指導料は、医療保険(調剤報酬)で薬局薬剤師の在宅訪問を評価する基本の項目です。要介護認定のある患者さんは介護保険の居宅療養管理指導になるため、この項目を使うのは「認定を受けていない通院困難な患者さん」に限られます。
2026年6月の改定では、この項目のまわりが大きく動きました。「算定日の間隔6日以上(中6日)」の要件が廃止されて「週1回」に置き換わり、在宅患者オンライン薬剤管理指導料は服薬管理指導料へ統合、医師との同時訪問を評価する新しい項目も加わっています。本記事では点数・算定要件・回数・加算・介護保険との切り分けを、厚労省の告示と通知の原文にもとづいて1本にまとめます。
※ 介護保険側(居宅療養管理指導)は 居宅療養管理指導の算定要件と単価|完全ガイド を、両者の使い分けは 在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導の違い をご覧ください。
- 点数は単一建物診療患者の人数で3区分:1人650点/2〜9人320点/10人以上290点(2026年改定で据え置き)
- 回数は月4回まで・週1回を限度。末期の悪性腫瘍・注射による麻薬投与・中心静脈栄養法の患者は週2回かつ月8回
- 「間隔6日以上(中6日)」の要件は2026年6月改定で廃止。薬剤師1人あたり週40回の上限は継続
- 要介護・要支援認定のある患者は介護保険の居宅療養管理指導が優先=この項目は算定しない
- 加算は5種類(麻薬100点・持続注射250点・乳幼児100点・小児特定450点・中心静脈栄養150点)
調べたい条件から確認する:回数・週の上限 / 同月・同日の併算定 / 単一建物診療患者の数え方 / 算定できないケース。本ページは、これらの判断の前提となる算定要件の総合案内です。
在宅患者訪問薬剤管理指導料とは

告示の注1は、算定の条件を次のように定めています。「あらかじめ在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生局長等に届け出た保険薬局において、在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、医師の指示に基づき、保険薬剤師が薬学的管理指導計画を策定し、患家を訪問して、患者又はその家族等に対して必要な指導等を行った場合」に算定する、というものです。
ここから読み取れる要素を分解すると、算定の骨格は次の5つになります。
- 届出:在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生局長等に届け出ていること(通知の別紙様式3)
- 対象患者:在宅で療養を行っていて、通院が困難な患者であること
- 医師の指示があること
- 薬学的管理指導計画を薬剤師が策定していること
- 患家を訪問し、患者または家族等に必要な指導を行うこと
「通院が困難」は年齢や病名で決まるものではなく、その患者さんが自分で薬局に来られない状態かどうかで判断します。希望すれば誰でも算定できる項目ではない点は、介護保険の居宅療養管理指導と共通です。
また通知には「特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は算定できない」とあり、いわゆる敷地内薬局の一部は対象外です。
点数【2026年6月改定後】
点数は「単一建物診療患者」の人数で3区分に分かれます。同じ建物で自局が訪問薬剤管理指導を行っている患者さんが何人いるかで決まる区分で、個人宅か施設かではありません。
| 区分 | 単一建物診療患者の人数 | 点数 |
|---|---|---|
| 1 | 1人 | 650点 |
| 2 | 2人以上9人以下 | 320点 |
| 3 | 10人以上 | 290点 |
出典:調剤報酬点数表 区分15(令和8年厚生労働省告示)
人数の数え方には「同居家族は各1人扱い」「戸数の10%以下なら1人扱い」などの例外があります。詳しくは 単一建物診療患者の数え方|医療保険の人数区分と点数早見表 で整理しています。
情報通信機器を用いた場合は「服薬管理指導料4のロ」59点
2026年改定で在宅患者訪問薬剤管理指導料の注2にあった「在宅患者オンライン薬剤管理指導料(59点)」は廃止され、服薬管理指導料「4のロ」59点(在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なもの)に置き換わりました。点数は同じですが、算定する区分が変わったため、レセコンの設定と請求時の区分名は見直しが必要です。急変時に情報通信機器で対応した場合は「4のハ」59点です。
注意点として、告示の注7〜注9では「4のロ又はハを算定する場合においては、当該加算は算定しない」と定められており、特定薬剤管理指導加算や吸入薬指導加算は4のロ・ハには乗せられません。
加算5種類の点数と要件

在宅患者訪問薬剤管理指導料には次の5つの加算があります。いずれも「在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定されていない場合は算定できない」と通知に明記されています。
| 加算 | 点数 | 単位 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 麻薬管理指導加算(注2) | 100点 | 1回につき | 麻薬の投薬が行われている患者。服用・保管の状況、副作用の有無を確認し指導 |
| 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算(注3) | 250点 | 1回につき | 要届出(様式89)。麻薬管理指導加算とは併算定不可 |
| 乳幼児加算(注4) | 100点 | 1回につき | 6歳未満の乳幼児。患家を訪問して直接指導した場合 |
| 小児特定加算(注5) | 450点 | 1回につき | 児童福祉法の障害児(18歳未満)。乳幼児加算とは併算定不可 |
| 在宅中心静脈栄養法加算(注6) | 150点 | 1回につき | 要届出(様式89)。投与・保管の状況と配合変化の有無を確認し指導 |
出典:調剤報酬点数表 区分15 注2〜注6
麻薬関連の2つの加算は要件の違いが分かりにくいので、麻薬管理指導加算と在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算の違い で分けて解説しています。在宅中心静脈栄養法加算と無菌調剤の実務は 在宅中心静脈栄養法(HPN)の薬剤管理 をご覧ください。
算定回数のルール:月4回・週1回・特例
回数のルールは告示の注1と通知の(8)(9)に集約されています。
- 月4回まで:在宅患者訪問薬剤管理指導料1〜3と服薬管理指導料「4のロ」を合わせて患者1人につき月4回
- 週1回を限度:月2回以上算定する場合、算定回数は週1回まで(通知(8))
- 特例:末期の悪性腫瘍の患者、注射による麻薬の投与が必要な患者、中心静脈栄養法の対象患者は週2回かつ月8回
- 薬剤師1人につき週40回:在宅患者訪問薬剤管理指導料1〜3と「4のロ」を合わせた上限(通知(9))
2026年6月改定の最大の変更点は、通知から「算定する日の間隔は6日以上とする」の文言が消え、「算定回数は、週1回を限度とする」に置き換わったことです。個別改定項目の新旧対照表で確認できます。「中6日」で訪問日を組んでいた薬局は、週の区切りで数える運用に変える必要があります。
「週」の起点や月をまたぐ場合の考え方など、実務で迷う場面は 在宅患者訪問薬剤管理指導料は月何回まで?回数上限と週1回ルール でケース別に整理しました。
介護保険(居宅療養管理指導)との切り分け
要介護・要支援認定を受けている患者さんには介護保険の給付が優先されます。通知(3)は「在宅での療養を行っている患者」の定義の中で、「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」(平成20年厚生労働省告示第128号)を引用しており、要介護者に対する在宅訪問は原則として介護保険の居宅療養管理指導費で算定します。
| 比較項目 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険) | 居宅療養管理指導(介護保険) |
|---|---|---|
| 対象 | 要介護・要支援認定を受けていない通院困難な患者 | 要介護・要支援認定を受けている通院困難な患者 |
| 報酬(1人/2〜9人/10人以上) | 650点/320点/290点 | 518単位/379単位/342単位 |
| 回数 | 月4回・週1回(特例は週2回かつ月8回) | 月4回(特例は週2回かつ月8回) |
| 改定周期 | 2年(直近2026年6月) | 3年(直近2024年、次回2027年) |
判定は「介護認定の有無」の1点だけです。受付の時点で介護保険証とケアマネジャーの有無を確認する運用にしておくと、請求段階での差し戻しを防げます。切り替えの実務は 医療保険と介護保険どっちを算定する? で詳しく解説しています。
2026年6月改定で変わった点【一覧】
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 算定間隔 | 算定する日の間隔は6日以上(中6日) | 週1回を限度(間隔要件は廃止) |
| 在宅患者オンライン薬剤管理指導料 | 注2として59点 | 廃止→服薬管理指導料「4のロ」「4のハ」各59点へ |
| 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料 | 区分15の6(40点/20点) | 廃止→調剤管理料の調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算へ再編 |
| 訪問薬剤管理医師同時指導料(区分15の9) | — | 新設 150点(6月に1回。在総管を算定する主治医との同時訪問) |
| 複数名薬剤管理指導訪問料(区分15の10) | — | 新設 300点(処方医が複数名訪問の必要性を認めた患者) |
| 開局時間外の連絡先 | — | 在宅協力薬局の情報を含め、原則初回訪問時に文書(薬袋可)で交付 |
| 在宅薬学総合体制加算 | 加算1 15点/加算2 50点 | 加算1 30点/加算2 イ100点・ロ50点 |
出典:個別改定項目について(令和8年2月13日)・調剤報酬点数表・同通知
医師との同時訪問は 医師×薬剤師の同時訪問の評価、体制加算の詳細は 在宅薬学総合体制加算の完全ガイド にまとめています。
算定できないケースと併算定の注意
算定できない代表的な場面は、①入院中・介護老人保健施設入所中、②医師や薬剤師の配置が義務付けられた施設への入所中、③他の薬局が既に訪問薬剤管理指導を行っている患者、④要介護認定のある患者(介護保険優先)、⑤16kmを超える訪問(特殊な事情がある場合を除く)です。ケースごとの対処は 在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケース7つ で整理しています。
併算定については、同じ月に服薬管理指導料(4のロ・ハを除く)、外来服薬支援料1、服薬情報等提供料が算定できないのが基本ルールです。一覧は 在宅患者訪問薬剤管理指導料と同時算定できないものは?併算定可否の一覧 をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数はいくらですか?
単一建物診療患者が1人の場合650点、2人以上9人以下の場合320点、10人以上の場合290点です(2026年6月改定後・据え置き)。情報通信機器を用いた場合は服薬管理指導料「4のロ」59点を算定します。
月に何回まで算定できますか?
在宅患者訪問薬剤管理指導料1〜3と服薬管理指導料「4のロ」を合わせて患者1人につき月4回までで、月2回以上算定する場合は週1回が限度です。末期の悪性腫瘍、注射による麻薬投与、中心静脈栄養法の対象患者は週2回かつ月8回まで算定できます。
「中6日空ける」ルールはまだありますか?
2026年6月改定で「算定する日の間隔は6日以上とする」の要件は廃止され、「算定回数は週1回を限度とする」に置き換わりました。改定後の通知には間隔の要件は記載されていません。
要介護認定を受けている患者に算定できますか?
原則できません。要介護・要支援認定を受けている患者は介護保険の給付が優先されるため、介護保険の居宅療養管理指導費で算定します。
在宅患者オンライン薬剤管理指導料はどうなりましたか?
2026年6月改定で廃止され、服薬管理指導料「4のロ」(在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なもの)59点、急変時は「4のハ」59点に統合されました。4のロ・ハには特定薬剤管理指導加算などの加算は乗せられません。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料と審査支払機関の取り扱いをご確認ください。
- 調剤報酬点数表(令和8年厚生労働省告示 別表第三) — 区分15〜15の10・区分10の3
- 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第4号 別添3) — 区分15の1〜15の10の留意事項
- 令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について(令和8年2月13日 中医協) — 新旧対照表
- 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項(令和8年3月27日 保医発0327第4号・老老発0327第2号) — 要介護者への算定可否の表
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について — 告示・通知・疑義解釈の一覧

