「痛みが強くなったので今日来てほしい」「発熱で薬が飲めない」——計画に無い訪問を医師の求めで行ったとき、在宅患者訪問薬剤管理指導料とは別枠で算定できるのが在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料です。500点と200点の2区分があり、どちらを使うかで返戻の有無が分かれます。
本記事は告示と通知の原文をもとに、区分の使い分け・回数上限・情報通信機器の扱い・夜間休日深夜の加算・薬歴に書くべき事項を整理します。
- 1(500点)=計画的な訪問薬剤管理指導の対象疾患の急変に伴う訪問/2(200点)=それ以外の疾患の変化に伴う訪問
- 医師(在宅療養を担う保険医または連携する他の保険医)の求めがあり、訪問結果を文書で情報提供することが要件
- 回数は1・2・服薬管理指導料「4のハ」を合わせて月4回。末期の悪性腫瘍・注射による麻薬投与の患者は原則月8回
- 1について末期がん・麻薬注射の患者に開局時間外に訪問した場合、夜間400点・休日600点・深夜1,000点を加算
点数と区分の使い分け

| 区分 | 点数 | どんなとき |
|---|---|---|
| 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1 | 500点 | 計画的な訪問薬剤管理指導に係る疾患の急変に伴うもの(通知(3):計画的訪問の対象疾患の変化等) |
| 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2 | 200点 | 1以外(通知(4):計画的訪問の対象となっていない疾患の変化等) |
| 服薬管理指導料「4のハ」 | 59点 | 情報通信機器を用いて対応した場合。このとき緊急訪問薬剤管理指導料は算定しない(通知(5)) |
出典:調剤報酬点数表 区分15の2・区分10の3
判断の軸は「薬学的管理指導計画で対象にしている疾患の変化か」です。がん疼痛の管理で計画的に訪問している患者の疼痛増強なら1(500点)、同じ患者の急な皮膚炎で外用薬が追加されたなら2(200点)です。
2026年改定で旧「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料」は廃止され、情報通信機器での対応は服薬管理指導料「4のハ」(59点)に統合されました。
算定要件:医師の求め・計画外・文書での報告
通知(1)は算定の条件を次のように整理しています。「訪問薬剤管理指導を実施している保険薬局の保険薬剤師が、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものの状態の変化等に伴い、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関の保険医又は当該保険医療機関と連携する他の保険医療機関の保険医の求めにより、当該患者に係る計画的な訪問薬剤管理指導とは別に、予め定めた訪問の計画以外で患家を訪問して必要な薬学的管理指導を行い、当該保険医に対して訪問結果について必要な情報提供を文書で行った場合」。
- 訪問薬剤管理指導を実施している患者であること(初回訪問からいきなり緊急訪問料は使えない)
- 保険医の求めがあること(患者・家族からの依頼だけでは不可)
- 予め定めた訪問の計画以外の訪問であること
- 訪問結果を保険医に文書で情報提供すること
- 連携する他の保険医の求めで訪問した場合は、その医師に加えて在宅療養を担う保険医にも文書で報告し、当該医師の氏名と医療機関名を計画書等に記載(通知(6))
在宅基幹薬局に代わって在宅協力薬局が緊急訪問した場合も、通知(7)により算定できます。
回数上限:月4回、末期がん・麻薬注射は原則月8回

| 対象 | 上限 | 補足 |
|---|---|---|
| 通常の在宅患者 | 月4回 | 1・2・服薬管理指導料「4のハ」の合計 |
| 末期の悪性腫瘍の患者/注射による麻薬の投与が必要な患者 | 原則月8回 | 特に医療上の必要がある場合で、保険医の処方箋に基づくときは月8回を超えて算定可(理由を摘要欄に記載) |
在宅患者訪問薬剤管理指導料(計画的訪問)の月4回とは別枠です。計画的訪問4回+緊急訪問2回の月は、それぞれの枠で算定します。計画的訪問の回数ルールは 在宅患者訪問薬剤管理指導料は月何回まで? をご覧ください。
月8回を超えて算定する場合は、通知(2)により「保険医からの指示内容、訪問が必要になった患者の容態等について、必要な薬学的分析を実施し、薬剤服用歴等に記載した上で、当該訪問が必要であった理由を調剤報酬明細書の摘要欄に簡潔に記載」します。
夜間・休日・深夜訪問加算(1のみ)
告示の注9は、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1について、末期の悪性腫瘍の患者または注射による麻薬の投与が必要な患者に対し、保険医の求めにより開局時間以外の夜間・休日・深夜に緊急訪問した場合の加算を定めています。
| 加算 | 点数 | 時間帯 |
|---|---|---|
| イ 夜間訪問加算 | 400点 | 午前8時前と午後6時以降(深夜を除く) |
| ロ 休日訪問加算 | 600点 | 日曜・祝日、1月2日・3日、12月29日〜31日 |
| ハ 深夜訪問加算 | 1,000点 | 午後10時〜午前6時 |
対象は区分1(500点)の場合のみ。区分2(200点)には加算されない
緩和ケアの在宅患者を担当する薬局では、この加算の有無で1回の訪問の評価が2〜3倍変わります。輪番や在宅協力薬局との連携体制を整えておく価値は大きいと言えます。
そのほかの加算と薬歴の記載事項
在宅患者訪問薬剤管理指導料と同じく、麻薬管理指導加算(100点)、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算(250点、要届出、麻薬管理指導加算と排他)、乳幼児加算(100点)、小児特定加算(450点、乳幼児加算と排他)、在宅中心静脈栄養法加算(150点、要届出)を上乗せできます。麻薬加算の要件は 麻薬管理指導加算と持続注射療法加算の違い にまとめています。
通知(8)は薬歴に少なくとも次の事項を記載するよう求めています。
- 訪問の実施日、訪問した保険薬剤師の氏名
- 保険医から計画以外の要請があった日付と要請の内容、その要請に基づき訪問を実施した旨
- 訪問で実施した薬学的管理指導の内容(服薬状況、副作用、相互作用等の確認を含む)
- 保険医に提供した訪問結果に関する情報の要点
在宅患者緊急時等共同指導料(700点)との関係
急変時に医師・訪問看護師・ケアマネジャー等と共同でカンファレンスに参加し指導した場合は、在宅患者緊急時等共同指導料(700点、月2回)の対象です。告示の注8により、緊急時等共同指導料を算定する場合は在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料は別に算定できません。また通知により、緊急時等共同指導料を算定する患者には在宅患者訪問薬剤管理指導料も別に算定できないとされています。
介護保険の居宅療養管理指導費を算定した日には、在宅患者緊急時等共同指導料は算定できません(給付調整通知)。
よくある質問(FAQ)
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の500点と200点はどう使い分けますか?
計画的な訪問薬剤管理指導の対象疾患の急変に伴う訪問は1(500点)、対象となっていない疾患の変化に伴う訪問は2(200点)です。
患者や家族から頼まれて緊急訪問した場合も算定できますか?
要件は「保険医の求め」です。在宅療養を担う保険医または連携する他の保険医の求めがない訪問は算定できません。
月に何回まで算定できますか?
1・2・服薬管理指導料「4のハ」を合わせて月4回までです。末期の悪性腫瘍の患者または注射による麻薬の投与が必要な患者は原則月8回まで、医療上の必要があり保険医の処方箋に基づく場合は8回を超えて算定できます。
夜間や休日に緊急訪問した場合の加算はありますか?
区分1(500点)について、末期の悪性腫瘍または注射による麻薬投与の患者に開局時間外に訪問した場合、夜間400点・休日600点・深夜1,000点を加算します。
電話やオンラインで対応した場合はどうなりますか?
情報通信機器を用いて薬学的管理指導を行った場合は服薬管理指導料「4のハ」59点を算定し、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料は算定できません。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料と審査支払機関の取り扱いをご確認ください。
- 調剤報酬点数表(令和8年厚生労働省告示 別表第三) — 区分15〜15の10・区分10の3
- 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第4号 別添3) — 区分15の1〜15の10の留意事項
- 令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について(令和8年2月13日 中医協) — 新旧対照表
- 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項(令和8年3月27日 保医発0327第4号・老老発0327第2号) — 要介護者への算定可否の表
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について — 告示・通知・疑義解釈の一覧

