在宅緩和ケアの依頼を受けると避けて通れないのが医療用麻薬の取り扱いです。外来調剤とは違う配送・保管・残薬・廃棄のルール、そして算定の特例——本記事では在宅×麻薬の実務を、訪問前後の流れとチェックリストで整理します。※麻薬の取り扱いは麻薬及び向精神薬取締法と自治体の運用に従います。個別の手順は必ず所轄(都道府県薬務課等)の案内で確認してください。
在宅×麻薬でまず押さえる算定の特例

- 注射による麻薬投与の患者は「週2回かつ月8回」まで:通常の月4回上限の特例対象(がん末期・中心静脈栄養と同枠)
- 医療用麻薬持続注射療法加算(介護保険・居宅療養管理指導):250単位。医療保険では在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算250点:PCAポンプ等による持続注射の管理を行った場合(要件は原典確認)
- 訪問頻度が上がる分、回数上限の数え方を誤ると取りこぼし・過誤の両方が起きやすい
緩和ケア期は訪問回数・単位数とも大きくなるため、算定の型を最初に固めておくことが重要です。要件・点数は必ず最新の告示・通知・原典で確認してください。
全体像|訪問前・訪問中・訪問後の流れ
麻薬の管理は「配送」「保管」「残薬・廃棄」の個別ルールを覚えるより、訪問の流れに沿って何をするかで整理すると抜けが出ません。まず全体像を押さえてから、各場面のチェックリストに進んでください。
| 場面 | やること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 訪問前(薬局) | 持ち出す薬剤の確認、施錠できるポーチ等への収納 | 持ち出した品名・数量 |
| 移動中 | 薬剤師が直接携行する。車内に放置しない | — |
| 訪問中(患家) | 本人または家族へ確実に受け渡す。残数と保管状況を確認する | 受領の記録、残数、保管場所の状況 |
| 訪問後(帰局) | 残数・使用状況を医師・訪問看護へ共有。次回訪問を調整 | 報告した内容と相手 |
※麻薬帳簿への記載や届出など法令上の記録要件は上表とは別に存在します。必ず最新の通知・原典と所轄薬務課の案内で確認してください。
配送・持参のルール|訪問前チェックリスト
- □ 麻薬は薬剤師が直接届ける(第三者への託送・置き配は不可)
- □ 車内に放置しない(訪問バッグ内でも施錠できるポーチ等で管理)
- □ 受け渡しは本人または家族へ確実に行う
- □ 受領の記録を残す
複数件の訪問をまとめて回る日ほど、持ち出しと受け渡しの照合が崩れやすくなります。出発前と帰局後に数を突き合わせる運用にしておくと、万一の紛失にも早く気づけます。
患家での保管指導|訪問中チェックリスト

- □ 「他の薬と分けて、子どもの手の届かない決まった場所に」が基本。施錠は必須ではないが紛失リスクに応じて施錠できる箱を提案
- □ 貼付剤(フェンタニル等)は使用済みでも成分が残るため、貼り替え時の折りたたみ廃棄と保管を家族に指導
- □ 訪問のたびに残数を確認し、記録する(服薬状況と紛失の早期発見を兼ねる)
- □ 保管場所・管理する人に変化がないかを毎回確認する
保管指導は初回に一度伝えて終わりではありません。介護者の交代や入退院のタイミングで管理は崩れやすいため、訪問のたびに「場所」と「管理者」を確認する運用にしておくと安全です。
残薬・不要になった麻薬の取り扱い|手順チェックリスト
患者の死亡や処方変更で不要になった麻薬は、家族が一般ごみに捨ててはいけません。薬局が回収し、麻薬のルールに沿って廃棄・記録します。流れを手順にすると次のとおりです。
- 初回訪問時に伝える:「使わなくなった麻薬は必ず薬局に返してください」と本人・家族に説明しておく
- 不要になったら薬局が回収する:処方変更・患者死亡の際、家族に廃棄させない
- 麻薬のルールに沿って廃棄・記録する:薬局側で廃棄と記録を行う
- 届出の要否を確認する:調剤済麻薬の廃棄は事後の届出が必要になる場合がある。手順・様式は所轄薬務課の案内に従う
この流れは初回の説明がすべてと言っても過言ではありません。伝えていなければ、家族が善意で処分してしまうトラブルは防げないためです。
記録テンプレの型|訪問記録に毎回残す項目
麻薬を扱う患者の訪問記録は、毎回同じ項目で残すのが型です。様式は薬局ごとで構いませんが、項目を固定しておくと担当が代わっても抜けが出ず、担当薬剤師が交代するときは記録そのものが引き継ぎ資料になります。
- 訪問日時・対応した薬剤師
- 受け渡した薬剤と受領者(本人/家族)
- 残数の確認結果
- レスキューの使用状況(本人・家族からの聞き取り内容として記録)
- 保管状況(場所・管理する人に変化がないか)
- 医師・訪問看護へ報告した内容
※上記は訪問記録の実務上の型であり、麻薬帳簿など法令で定められた記録・届出はこれとは別に必要です。記載事項・様式は必ず最新の通知・原典でご確認ください。
家族への説明文例|初回訪問で伝えること
保管・廃棄のトラブルの多くは、初回に伝えていなかったことが原因です。ここまでの内容を、初回訪問でそのまま使える言葉に直しておきます。
保管について:「この薬は他のお薬と分けて、お子さんの手が届かない決まった場所に置いてください。置き場所は私も毎回確認させていただきます。」
貼り薬について:「はがした後のシールにも薬の成分が残っています。貼り替えたら内側を合わせて折りたたんで取っておいてください。捨て方はこちらでご案内します。」
返却について:「使わなくなったり、余ったりしたときは、ご家庭で捨てずに必ず薬局へお返しください。私が回収に伺います。」
言い回しは各薬局の運用に合わせて調整し、説明した事実は訪問記録に残しておきます。取り扱いの細部は自治体の運用で異なるため、迷ったら所轄薬務課の案内が優先です。
多職種連携のポイント
- 疼痛評価の共有:訪問看護のペインスケールと薬剤師の服薬状況を突き合わせ、レスキュー使用回数を医師に報告する
- 増量・スイッチの提案:レスキュー頻度から定期量の調整を提案できるのは、服薬実態を見ている薬剤師の強み
- 夜間・休日の連絡フロー:疼痛コントロール不良時に誰へ連絡するかを患者・家族に明示しておく
在宅緩和ケアは負荷も大きい一方、薬剤師の専門性が最も評価される場面です。配送・保管・記録の型が固まっていれば、訪問先では疼痛評価の共有や処方提案といった専門性の発揮に集中できます。1例目を丁寧に回すと、医師・訪問看護からの信頼と次の依頼につながります。
よくある質問(FAQ)
麻薬を扱う在宅患者は訪問回数を増やせますか?
注射による麻薬投与を受けている患者は、通常の月4回ではなく週2回かつ月8回まで算定できる特例の対象です(がん末期・中心静脈栄養と同じ枠。要件は原典でご確認ください)。
患者宅で麻薬は金庫に保管してもらう必要がありますか?
患家に施錠保管までは求められないのが一般的ですが、他の薬と区別し決まった場所で管理するよう指導します。紛失・誤用リスクが高い場合は施錠できる箱の使用を提案します。
亡くなった患者の残った麻薬はどうすればいいですか?
家族が廃棄せず、薬局に返却してもらいます。薬局は麻薬のルールに沿って廃棄・記録を行います(届出の要否・手順は所轄の薬務課にご確認ください)。
使用済みの貼付剤はそのまま捨ててもいいですか?
貼付剤は使用済みでも成分が残るため、貼り替え時に折りたたんで管理するよう家族に指導します。廃棄の方法は自己判断させず、薬局・所轄の案内に従ってもらってください。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
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出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)

