2026年9月30日に経済産業省が公表した「商業動態統計速報(2026年8月分)」で、ドラッグストアの調剤医薬品の販売額が870億円、前年同月比9.1%増になりました。同じ月のOTC医薬品は845億円で3.4%減です。調剤がOTCを上回るのは6月・7月に続いて3か月連続になります。
「ドラッグストアの調剤が伸びている」という話自体は目新しくありません。ただ、薬局を営む側から見ると、ドラッグストアの売上の中で処方箋がOTCと肩を並べる柱になった、という変化は小さくないはずです。この記事では、公表されたExcelの数字をそのまま並べ、何が言えて何が言えないのかを分けたうえで、在宅に取り組む薬局がこの数字をどう使うかを考えます。
2026年8月の数字:調剤870億円、OTC845億円
まず8月単月の数字です。単位は億円で、百万円単位の公表値を億円に丸めています。
| 項目(ドラッグストア) | 2026年8月 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 商品販売額(合計) | 8,344億円 | +3.1% |
| 調剤医薬品 | 870億円 | +9.1% |
| OTC医薬品 | 845億円 | ▲3.4% |
| 店舗数 | 20,810店 | +3.1% |
合計の伸び(3.1%)と店舗数の伸び(3.1%)はほぼ同じです。店が増えた分だけ売上も増えた、という形に近い。その中で調剤だけが9.1%と、合計の約3倍の速さで伸びています。食品(+3.5%)や化粧品(+3.1%)と比べても、調剤の伸びだけが突出しています。
月ごとに見ると、逆転は「たまに」から「ほぼ毎月」へ
単月の逆転だけなら、季節要因で説明がつくこともあります。そこで、公表されている月次の値を2025年6月から並べました。
| 年月 | 調剤医薬品 | OTC医薬品 | 多いほう |
|---|---|---|---|
| 2025年6月 | 789億円 | 849億円 | OTC |
| 2025年7月 | 834億円 | 866億円 | OTC |
| 2025年8月 | 797億円 | 875億円 | OTC |
| 2025年9月 | 823億円 | 812億円 | 調剤 |
| 2025年10月 | 864億円 | 851億円 | 調剤 |
| 2025年11月 | 821億円 | 889億円 | OTC |
| 2025年12月 | 929億円 | 932億円 | OTC |
| 2026年1月 | 842億円 | 832億円 | 調剤 |
| 2026年2月 | 841億円 | 827億円 | 調剤 |
| 2026年3月 | 940億円 | 958億円 | OTC |
| 2026年4月 | 895億円 | 843億円 | 調剤 |
| 2026年5月 | 830億円 | 876億円 | OTC |
| 2026年6月 | 881億円 | 814億円 | 調剤 |
| 2026年7月 | 918億円 | 868億円 | 調剤 |
| 2026年8月 | 870億円 | 845億円 | 調剤 |
2025年6〜8月はOTCが上でした。それが直近12か月(2025年9月〜2026年8月)では、12か月中8か月で調剤がOTCを上回っています。OTCが上に来るのは、11〜12月や3月、5月といった月です。冬の風邪薬や花粉症の薬が動く時期と重なっているように見えますが、この統計は品目の内訳を出していないので、ここは推測にとどめます。
年単位では、差は3年で1,951億円から619億円へ
月次は振れが大きいので、暦年の合計でも確かめます。
| 暦年 | 調剤医薬品 | OTC医薬品 | OTCとの差 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 7,955億円 | 9,906億円 | 1,951億円 |
| 2024年 | 8,714億円 | 10,292億円 | 1,578億円 |
| 2025年 | 9,781億円 | 10,401億円 | 619億円 |
2023年から2025年までの2年間で、調剤は約23%伸び、OTCは約5%の伸びでした。店舗数の伸びは約7%です。年度で見ると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の調剤は1兆65億円と、年度で1兆円を超えました(2023年度は8,134億円、2024年度は8,938億円)。同じ年度のOTCは1兆371億円なので、残る差は約306億円です。
このペースが続けば、暦年でも調剤がOTCを上回る年が近いと読むのが自然です。ただし、これは過去の傾向を延ばしただけの見通しで、統計が示している事実ではありません。
この統計から言えないこと
数字が強いほど、読み過ぎに注意が必要です。押さえておきたい点が2つあります。
ひとつは、外来と在宅の内訳がないこと。「調剤医薬品」は1つの数字で公表されていて、ドラッグストアが在宅の処方箋をどれだけ受けているかは、この統計からは分かりません。「ドラッグストアが在宅にも本格参入している」と読むのは、この数字の範囲を超えています。
もうひとつは、すべてのドラッグストアの合計ではないこと。商業動態統計のドラッグストアは、一定規模以上のチェーンを対象にした集計です。小規模な店舗は含まれていないため、業界全体の規模はこれより大きくなります。逆に言えば、この数字は「大手・中堅チェーンの調剤がどれだけ伸びているか」をよく表しています。
伸びの理由も、統計は語りません。新規出店、既存店での調剤併設、処方箋の集め方、2026年6月の調剤報酬改定の影響など、候補はいくつも挙げられます。どれが効いているかを、この表だけで決めることはできません。
在宅に取り組む薬局は、この数字をどう使うか
ここからは編集部の見解です。
外来の処方箋は、患者さんにとって「帰り道にある」「買い物のついでに受け取れる」店に流れやすいものです。2万店を超える店舗網で調剤が年1割前後伸び続けている数字は、その流れが続いていることを裏付けていると読めます。立地と営業時間で勝負する外来の処方箋は、規模の大きいところが有利な土俵です。
一方で在宅は、同じ患者さんの家に定期的に通い、医師・ケアマネジャー・訪問看護と情報をやり取りする仕事です。どこにでも店がある、ということだけでは差がつきにくい。中小の薬局が人と時間をかける意味がある領域だと考えます。この考え方は、ドラッグストア調剤併設の拡大と中小薬局の対抗策でも詳しく書いています。
とはいえ、「在宅に力を入れる」だけでは何も決まりません。今月すぐにできることを2つ挙げます。
1. 自局の外来と在宅の比率を、同じ月同士で比べる。去年の8月と今年の8月で、外来の処方箋枚数と、在宅(居宅療養管理指導・在宅患者訪問薬剤管理指導)の算定件数がそれぞれどう動いたか。外来が減って在宅が横ばいなら、近隣の競合の影響を受け始めている可能性があります。ドラッグストアの統計を前年同月比で読んだのと同じやり方で、自局の数字も読むのがコツです。
2. 在宅で取れるはずの点数を取れているか確かめる。在宅は件数を増やす前に、今の件数で算定漏れがないかを見るほうが早く効きます。2026年6月の改定で体制加算の区分や訪問の回数ルールが変わっているので、改定前の感覚のまま算定していないかの確認が必要です。
- 体制加算の区分と施設基準:在宅薬学総合体制加算1・2の違いと施設基準
- 介護保険側の要件:居宅療養管理指導の算定要件と単価
- 医療保険側の要件:在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件と点数
自局のケースに当てはめて点数と回数を確かめたいときは、在宅算定 まるごと判定(無料・登録不要)が使えます。
よくある質問
ドラッグストアの「調剤医薬品」の販売額とは何ですか?
経済産業省の商業動態統計で、ドラッグストアの商品販売額を商品別に分けたうちの1項目です。2026年8月は870億円(86,953百万円)で、商品販売額全体の約10%にあたります。
ドラッグストアの在宅調剤は増えていますか?
商業動態統計では、調剤医薬品の外来・在宅の内訳は公表されていません。そのため、この統計からドラッグストアの在宅調剤が増えているかどうかは判断できません。
この数字は全国すべてのドラッグストアの合計ですか?
いいえ。一定規模以上のドラッグストアチェーンを対象にした集計です。小規模な店舗を含む業界全体の規模は、これより大きくなります。
出典
経済産業省「商業動態統計速報 2026年8月分」(2026年9月30日公表)第15表「ドラッグストア商品別販売額及び店舗数」。記事中の金額は百万円単位の公表値を億円に換算し、四捨五入しています。差や伸び率のうち公表表に無いものは、公表値から編集部が計算しました。

