退院直後や在宅移行の初回は、残薬の整理・処方の調整・服薬方法の組み立てに最も手間がかかります。この「計画的な訪問を始める前の一手間」を評価するのが在宅移行初期管理料(230点)です。
要件が細かく、「初回訪問と同じ日に算定してしまった」「単一建物2人以上の患者に算定した」といった返戻が起きやすい項目でもあります。本記事は告示と通知の原文をもとに、対象患者・タイミング・併算定の制限・薬歴の記載を整理します。
- 点数は230点。在宅患者訪問薬剤管理指導料1(単一建物1人)または居宅療養管理指導費(単一建物居住者1人)の初回算定月に1回
- 対象は「自己による服薬管理が困難」な患者(認知症・精神障害・18歳未満の障害児・6歳未満・末期がん・麻薬注射)で、かつ医師の指示がある患者
- 計画的な訪問を始める前の別の日に患家を訪問して、残薬整理・処方調整・多職種との情報共有を行うことが条件
- 同日の外来服薬支援料1、文書提供に対する服薬情報等提供料、かかりつけ薬剤師訪問加算を算定している場合は不可。在宅協力薬局が実施した場合も不可
- 医療保険・介護保険どちらの患者でも算定できる(居宅療養管理指導費の患者も対象)
在宅移行初期管理料とは

通知(1)は「在宅での療養に移行する予定の服薬管理に係る支援が必要な患者に対して、計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前に、保険薬剤師が患家を訪問して、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等の多職種と連携しながら、退院時の処方内容を踏まえた薬剤の調整、残薬の整理、適切な服薬方法の提案等の必要な薬学的管理及び指導を行うことを評価するもの」と説明しています。
ポイントは3つです。①在宅療養へ移行する予定の患者であること、②計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前に行うこと、③多職種と連携しながら残薬整理・処方調整・服薬方法の提案を行うことです。
対象患者:2つの条件を両方満たす
通知(2)は「以下のア及びイを満たす患者のうち、薬学的管理の観点から保険薬剤師が患家を訪問して特に重点的な服薬支援の行う必要性があると判断したもの」を対象としています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ア 患者の状態 | 認知症患者、精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者/児童福祉法の障害児である18歳未満の患者/6歳未満の乳幼児/末期のがん患者/注射による麻薬の投与が必要な患者 |
| イ 医師の指示 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物診療患者が1人の場合に限る)、居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合で単一建物居住者が1人の場合に限る)に係る医師の指示のある患者 |
条件イの「単一建物1人」に注意してください。有料老人ホームなどで同じ建物に複数の患者がいる場合(320点・290点の区分)は対象外です。単一建物の数え方は 「単一建物診療患者」の数え方 に準じます(通知(3))。
介護保険の居宅療養管理指導費の患者も対象に含まれるため、要介護認定のある患者の在宅移行でも算定できます。医療保険・介護保険の切り分けは 医療保険と介護保険どっちを算定する? をご覧ください。
算定できるタイミング:初回算定月に1回、計画的訪問の前の別日

告示の注1は「在宅患者訪問薬剤管理指導料の1その他厚生労働大臣が定める費用を算定した初回算定日の属する月に1回に限り算定する」と定め、通知(7)は「初めて算定する月又はその前月に在宅移行に係る初期管理を実施した場合に、当該初回算定月に1回に限り算定する」としています。
- 初期管理の実施は初回算定月またはその前月
- 算定は初回算定月に1回(実施が前月でも、請求は初回算定月)
- 通知(6):計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前であって別の日に患家を訪問して業務を実施した場合に算定する=初回の計画的訪問と同じ日には算定できない
- 通知(9):訪問を実施した日付を調剤報酬明細書の摘要欄に記載する
| スケジュール例 | 算定 |
|---|---|
| 8/28 退院 → 8/29 初期管理の訪問 → 9/3 初回の計画的訪問(在宅患者訪問薬剤管理指導料1) | 9月分レセプトで在宅移行初期管理料230点(摘要欄に8/29と記載) |
| 9/1 初期管理の訪問 → 9/1 同日に初回の計画的訪問 | 算定不可(別の日であることが条件) |
| 9/2 初期管理の訪問 → 9/5 初回訪問(単一建物2〜9人の施設) | 算定不可(単一建物1人の場合に限る) |
実施すべき業務(通知(4))
- 患者・家族等から服薬状況、居住環境、家族関係等の薬学的管理に必要な情報を収集する
- 患家における残薬の確認及び整理、服薬管理方法の検討及び調整を行う
- ポリファーマシーへの対応や服用回数を減らす観点も踏まえ、必要に応じて医師等と使用する薬剤の内容を調整する
- 在宅療養に必要な情報を、在宅療養を担う保険医療機関等の多職種と共有する
- 退院直後の患者は、入院していた医療機関と連携し、入院中の処方内容や退院時の指導内容に関する情報提供文書を活用した服薬支援を行うことが望ましい
通知(5)により、実施内容を薬歴に記載し、必要に応じて薬学的管理指導計画書を作成・見直します。また、在宅療養を担う医師と居宅介護支援事業者のケアマネジャーに文書で情報提供します。
併算定できない項目・算定できない薬局
| 制限 | 根拠 |
|---|---|
| 在宅移行初期管理料を算定した日に外来服薬支援料1は算定できない | 告示 注1ただし書・通知(6) |
| 医師・ケアマネジャーへの文書での情報提供について服薬情報等提供料は別途算定できない | 通知(5) |
| かかりつけ薬剤師訪問加算を算定している場合は算定できない | 通知(11) |
| 在宅協力薬局が実施した場合は算定できない | 通知(8) |
| 特別調剤基本料Bの薬局は算定できない | 通知(12) |
| 訪問薬剤管理医師同時指導料・複数名薬剤管理指導訪問料と同日は算定しない | 区分15の9 注2・15の10 注2 |
交通費は患家の負担(実費)です(告示 注2・通知(10))。
退院時共同指導料(600点)との使い分け
退院前に病院で共同指導し文書で情報提供するのが退院時共同指導料(600点、入院中1回)、退院後に患家を訪問して残薬整理と処方調整を行うのが在宅移行初期管理料(230点)です。時点も場所も違うため、同じ患者に両方を算定する設計になっています。
退院前カンファレンスに呼ばれたら退院時共同指導料、退院日が決まったら初期管理の訪問日と初回の計画的訪問日を別々に設定する——この2段構えを型にしておくと、取りこぼしを防げます。
よくある質問(FAQ)
在宅移行初期管理料は何点ですか?
230点です。在宅患者訪問薬剤管理指導料1(単一建物診療患者1人)または居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費(単一建物居住者1人)の初回算定月に1回に限り算定します。
初回の訪問と同じ日に算定できますか?
できません。通知は「計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前であって別の日に患家を訪問して業務を実施した場合に算定する」としています。
要介護認定のある患者にも算定できますか?
できます。対象には居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合で単一建物居住者1人)に係る医師の指示のある患者も含まれます。
施設に入居する患者には算定できますか?
単一建物診療患者(居住者)が1人の場合に限られるため、同じ建物で複数の患者を担当している施設では算定できません。
退院時共同指導料と両方算定できますか?
退院時共同指導料は入院中の共同指導、在宅移行初期管理料は退院後の患家訪問を評価する別の項目です。それぞれの要件を満たせば同じ患者に両方を算定できます。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料と審査支払機関の取り扱いをご確認ください。
- 調剤報酬点数表(令和8年厚生労働省告示 別表第三) — 区分15〜15の10・区分10の3
- 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第4号 別添3) — 区分15の1〜15の10の留意事項
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について — 告示・通知・疑義解釈の一覧

