「在宅薬局って、本当に儲かるの?」——調剤専業から在宅シフトを検討する薬局経営者、独立を考える薬剤師、いずれにとっても気になるテーマです。結論から言えば、在宅薬局は調剤専業より利益率で5〜10ポイント、薬剤師1人あたりの粗利で1.5倍程度高くなるケースが多く、構造的に「儲かりやすい」業態です。ただし、儲かる薬局と赤字の薬局に二極化する傾向もあります。本記事では、収益構造・利益率の実例・成功する薬局の特徴・失敗する薬局の共通点まで、経営者目線で徹底解説します。
在宅薬局が儲かる3つの構造的理由

理由①:在宅特有の高い技術料
在宅患者訪問薬剤管理指導料は1回あたり290〜650点(単一建物診療患者数で変動:1人650点/2〜9人320点/10人以上290点)。これは外来調剤の服薬管理指導料(45点/59点)の5〜14倍に相当します。1人の患者から月2回算定すれば、月5,800〜13,000円の技術料が得られます。
理由②:処方箋単価が高い
在宅患者は高齢で多疾患併存(マルチモビディティ)の方が多く、処方薬剤数が外来患者の1.5〜2倍になる傾向があります。1処方箋あたりの粗利が外来より高くなり、訪問1件あたりの収益が積み上がります。
理由③:競合が少ない
調剤専業薬局は全国に約62,000店ありますが、本格的に在宅をやっている薬局はその2割程度(約12,000店)。地域ごとに見れば、在宅対応薬局が1〜2店しかないエリアも多く、需要に対する供給不足が続いています。
利益率の実例【調剤専業 vs 在宅型】
規模の近い薬局を比較した場合の収益構造の違いを示します。
| 項目 | 調剤専業薬局 | 在宅型薬局 | 差 |
|---|---|---|---|
| 処方箋枚数(月) | 1,500枚 | 1,000枚+在宅100件 | — |
| 売上 | 3,000万円 | 3,200万円 | +200万円 |
| 薬剤費 | 2,250万円(75%) | 2,240万円(70%) | -10万円 |
| 粗利 | 750万円(25%) | 960万円(30%) | +210万円 |
| 人件費 | 400万円 | 500万円 | +100万円 |
| その他経費 | 200万円 | 220万円 | +20万円 |
| 営業利益 | 150万円(5%) | 240万円(7.5%) | +90万円 |
同程度の売上規模で営業利益率が約5%→7.5%へ、約1.6倍に改善するイメージです。年額にすれば営業利益で年1,080万円の差になります。
儲かる在宅薬局の5つの特徴

特徴① 訪問件数100件/月以上を安定確保
在宅薬局の損益分岐点は概ね月50〜70件。100件超で安定的に運営できる体制が「儲かる」目安です。これに到達するには、訪問診療医・ケアマネ・訪問看護との連携体制が必須。
特徴② 連携先医療機関・施設が3つ以上
「1つの大型クリニック頼み」になっている薬局は、その医療機関の方針変更で経営が傾くリスクがあります。複数の医療機関・サ高住・有料老人ホームと並行して関係を持つことが安定経営の鍵。
特徴③ 薬剤師1人あたりの訪問件数が適切
薬剤師1人あたりの月間訪問件数は40〜60件が適正。それ未満だと収益化困難、それ以上だと業務品質・薬剤師の疲弊リスクが上がります。
特徴④ 施設在宅と個人宅在宅のミックス
施設在宅(サ高住・有料老人ホーム等)は1日複数件をまとめて訪問でき効率的。個人宅在宅は単価高いが移動時間がかかる。両者を6:4程度でミックスするのが理想です。
特徴⑤ 残薬整理・服薬アドヒアランス向上に注力
残薬整理に積極的に取り組む薬局は、医師からの評価が高く、新規紹介が増える好循環に入ります。「薬を売る」だけでなく「薬を最適化する」価値が、新規顧客獲得の源泉になります。
失敗する在宅薬局の共通点
- 件数が増えない:月20件以下で停滞、連携先開拓が後手
- 遠方訪問が多すぎる:1件あたりの移動時間が長く、効率悪化
- 薬剤師の疲弊・離職:負荷集中で人材定着せず、業務継続困難に
- レセプト返戻が多い:算定要件の不備・記録不十分による収益ロス
- 処方提案ができない:医師から「薬を届けるだけ」と見られ、信頼が深まらない
失敗パターンの多くは「件数が伸びる前に薬剤師が疲弊して撤退」というケースです。立ち上げ期の経営者の覚悟と、3年スパンで投資できる体力が分岐点となります。
在宅薬局の立ち上げから収益化までの3年ロードマップ
1年目:基盤づくり
- 訪問診療医・ケアマネ事業所・訪問看護への挨拶回り
- 在宅対応の届出・算定要件の整備
- 月10〜30件の訪問から開始
- 赤字を許容する覚悟(初期投資の回収期)
2年目:拡大期
- 月30〜70件へ拡大
- 連携先からの紹介が増え始める
- 専任薬剤師の配置を検討
- 損益分岐点(月50件前後)を突破
3年目:安定収益化
- 月80〜120件で安定運営
- 営業利益率が外来より高い水準に
- 2号店出店・施設在宅拡大などの次の打ち手検討
今から在宅シフトを始める3つのアクション
- 近隣の訪問診療医にアポを取る:1か所10〜20分の挨拶訪問から
- 地域ケア会議・サービス担当者会議に出席する:薬剤師の存在を多職種に認知してもらう
- 在宅対応の届出を済ませる:すでに対応可能な薬局なら、届出だけでも先行
よくある質問
Q. 既存の調剤薬局でも在宅シフトはできますか?
A. 可能です。むしろ既存薬局の方が、外来収益で在宅立ち上げ期の赤字を支えられるため、ゼロからの在宅専業薬局より始めやすい。最初は外来+在宅のミックスから入り、徐々に在宅比率を上げるのが現実的です。
Q. 在宅薬局を運営するには薬剤師は何人必要ですか?
A. 月50件規模なら薬剤師2名+事務1名から開始可能。月100件超になると薬剤師3〜4名体制が必要になります。立ち上げ期は管理薬剤師1名+兼任薬剤師1名のミニマム体制から始める薬局も多いです。
Q. 初期投資はどれくらい必要ですか?
A. 既存の薬局で在宅を始める場合、車両(リース可)・タブレット・薬剤師の教育費で50〜100万円程度。新規開設の場合は2,000〜3,000万円規模が必要です。
Q. 地方と都市部、どちらが在宅薬局の収益性が高いですか?
A. 地方の方が収益性が高い傾向があります。理由は競合が少なく、訪問単価が高めに設定でき、人件費が低いため。ただし訪問移動時間が長くなる課題があり、運用設計の工夫が必要です。
まとめ:在宅薬局は「構造的に儲かる」が「やり方次第」
在宅薬局は、技術料の高さ・処方単価の高さ・競合の少なさという3つの構造要因により、調剤専業より儲かりやすい業態です。一方で、月100件規模の安定運営に到達するまでに2〜3年を要し、立ち上げ期の苦労を乗り越えられるかが分岐点になります。
「儲かる」を狙うなら、訪問件数の積み上げと連携先の多角化、残薬整理など付加価値の提供を地道に続けることが王道です。今日から始められる小さな一歩を、ぜひ踏み出してみてください。
次に読みたい関連記事
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

