在宅訪問を始めるとき、意外とつまずくのが同意書です。居宅療養管理指導は、利用者または家族への説明と同意が提供・算定の前提であり、同意なしの訪問は算定できないだけでなくトラブルの元になります。本記事では、同意を取るタイミング、説明すべき項目、そのまま使える説明トーク例、断られやすい場面の切り返し、書面のチェックリストまでを実務目線で整理します。
同意はなぜ必要か:算定要件としての位置づけ
居宅療養管理指導は、医師の指示にもとづき薬剤師が居宅を訪問して薬学的管理指導を行う介護保険サービスです。介護保険サービスである以上、利用者への説明と同意(契約)がサービス提供の前提になります。算定要件の全体像は「居宅療養管理指導の算定要件と単価【完全ガイド】」をご覧ください。
同意を取るタイミング:初回訪問「前」が原則
- 医師からの訪問指示(指示書・処方箋への記載等)を確認する
- 利用者・家族へ電話などで概要を伝え、訪問日を調整する
- 初回訪問時、サービス開始前に重要事項の説明と契約・同意を行う
- 同意が得られてから薬学的管理指導を開始する
「まず訪問して、同意書は後で」は避けてください。説明と同意の記録が残っていないと、返戻や指導の場面で不利になります。
説明すべき項目リスト
- 費用:単位数(単一建物1人518単位・2〜9人379単位・10人以上342単位)と自己負担割合。自己負担の概算は単位数×約10円×負担割合が目安(地域区分により異なる)
- 訪問頻度と上限:原則月4回まで(末期の悪性腫瘍等は週2回かつ月8回まで)
- サービス内容:お薬の配達だけでなく、残薬整理・飲み方の調整・体調確認まで行うこと
- いつでも中止・変更できること:やめたいときに申し出ればよいと明言する
- 個人情報の扱い:医師・ケアマネジャーと服薬情報を共有すること
初回説明の流れとトーク例(そのまま使える台本)
導入:サービスを一言で伝える
「先生から『お薬のことは薬剤師にも診てもらいましょう』というご指示をいただきまして、毎月ご自宅にお薬をお届けしながら、飲み方やお身体の調子を一緒に確認させていただくサービスです」——医師の指示から入ると、営業ではなく医療の一環として受け止めてもらいやすくなります。
費用:先に、具体的に、負担感とセットで
「費用は介護保険が使えますので、ご負担は1回あたり〇〇円ほどです(自己負担割合により異なります)。飲み残しのお薬を整理するだけで、ご負担以上にお薬代の無駄が減る方も多いです」——金額の話を後回しにすると不信感につながります。自局で自己負担額の早見メモを作っておき、その場で即答できるようにするのがコツです。
締め:断る自由を保証する
「もし合わないなと思われたら、いつでもやめられます。まずは一度、お薬の整理からやらせていただけませんか」——中止の自由を先に伝えると、かえって同意のハードルが下がります。この一言があるかないかで初回の反応は大きく変わります。
断られやすい場面と切り返しトーク例
「お金がかかるなら結構です」
費用を曖昧にせず、先に自己負担の目安額を具体的に伝えます。そのうえで「飲み残しのお薬を整理するだけで、ご負担以上のお薬代の無駄が減る方も多いです」と、費用と価値をセットで説明します。
「薬局までは自分で行けるから不要」
「取りに来られるかどうか」ではなく「ご自宅での飲み方まで確認できること」が価値だと伝えます。お薬カレンダーへのセットや残薬の確認など、店頭ではできない支援を具体例で示すと納得されやすくなります。
「家に他人を入れるのは気が引ける」
無理に押さず、「玄関先でのお渡しと確認から始めることもできます」とハードルの低い入り口を用意します。信頼関係ができてから室内での服薬環境の確認に進む、と段階を示すのが有効です。
「家族に聞いてみないと決められない」
その場で決断を迫らず、「ご家族にそのままお渡しいただける説明の紙をご用意しますね」と家族向けの説明資料を託すのが定石です。可能なら「ご家族のご都合のよい日に、お電話で私から直接ご説明することもできます」と選択肢を添えます。キーパーソンが誰かをケアマネジャーに確認しておくと、二度手間を防げます。
「今のままで特に困っていない」
正面から説得せず、「今日お薬箱を一度だけ拝見して、飲み残しがないかだけ確認させてください」と1回限りの小さな行動を提案します。実際に残薬が見つかれば、それ自体が最も説得力のある説明になります。見つからなければ「今は必要ありません」と正直に引くことが、後日の信頼につながります。
同意書・書面の記載項目チェックリスト
| 区分 | 記載しておきたい項目 | 抜けやすいポイント |
|---|---|---|
| サービス内容 | 訪問による薬学的管理指導の内容・訪問予定頻度 | 「配達」としか書かず、指導・管理の内容が不明確 |
| 費用 | 単位数・自己負担割合・交通費等の実費の扱い | 実費(交通費・駐車場代等)の扱いの記載漏れ |
| 同意 | 説明を受けて同意した旨・同意日・利用者または家族(代諾者)の署名 | 代諾者の場合に続柄・氏名の記載が抜ける |
| 個人情報 | 医師・ケアマネジャー等と共有する情報の範囲 | 共有先を「関係機関」とだけ書き、具体性がない |
| 変更・中止 | 中止・変更の申し出方法と連絡先 | 連絡先(電話番号・担当者)の記載漏れ |
| 説明の記録 | 説明日・説明者・説明に用いた資料 | 「いつ・誰が・何を」説明したかが薬歴側にも残っていない |
様式は保険者・地域で細部が異なるため、指定権者の様式例や地域の薬剤師会の雛形をベースにするのが確実です。署名をもらって終わりではなく、説明の事実(日時・説明者・相手)を薬歴・訪問記録側にも残すところまでがワンセットです。
同意取得後の運用:変更時・再同意・記録の残し方
- 内容に変更が出たとき:訪問頻度・費用・担当者など契約内容に関わる変更は、都度説明して再同意を取り、変更日を記録する
- 状態が変わったとき:本人の判断能力が低下してきた場合は、家族(代諾者)への説明に切り替え、誰に説明したかを明記する
- 書面の保管:同意書は薬局側の控えを整理して保管し、監査・指導時にすぐ出せる状態にしておく
ケアマネ経由の依頼時の流れ
ケアマネジャーや施設からの依頼で始まる場合も、同意を取る相手はあくまで利用者本人・家族です。ケアマネにはケアプランへの位置づけと家族への口添えを依頼し、初回訪問で薬局が直接説明・同意取得を行う流れにします。ケアマネとの関係づくりは「ケアマネとの連携術」も参考にしてください。なお、同意が取れても単一建物の数え方など算定要件の細部でつまずく例は多いため、開始前に「在宅算定 まるごと判定(無料)」で自局の算定体制を点検しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
同意は口頭でもよいですか?
説明と同意の事実を後から証明できるよう、書面(または電子)で残すのが実務上の鉄則です。記録がないと返戻・指導の場面で不利になります。
本人が認知症で判断が難しい場合はどうしますか?
家族など適切な代諾者に説明し、同意を得ます。誰にいつ説明し、誰の同意を得たかを書面に明記してください。
同意書は毎月取り直す必要がありますか?
一般に開始時の契約・同意を基本とし、費用や訪問頻度など内容に変更があれば都度説明・再同意という運用です。細部は保険者・指定権者の指示に従ってください。
断られた場合はもう提案しないほうがよいですか?
無理な再提案は逆効果ですが、状態の変化(退院直後・処方の複雑化・残薬の増加など)はきっかけになります。ケアマネジャーと共有しておき、タイミングが来たら改めて選択肢として案内するのが現実的です。
最終更新日:2026年7月2日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

