薬局が在宅訪問を始めるには|届出・体制・営業・最初の1件までの手順

薬局が在宅訪問を始めるには|在宅ファーマ

「在宅を始めたいが、何から手をつければいいか分からない」——本記事では、外来中心の薬局が在宅訪問(居宅療養管理指導・訪問薬剤管理指導)を立ち上げる手順を、届出→体制→営業→最初の1件の順に整理します。各ステップを「実際に何をするか」のレベルまで分解しているので、上から順に潰していけば立ち上げの全体像がつかめます。

目次

STEP1:届出・指定の確認

最初にやることは「新しい申請」ではなく現状確認です。保険薬局であれば、すでに在宅を始められる状態になっているケースが少なくありません。

項目内容
医療保険側在宅患者訪問薬剤管理指導の届出(地方厚生局)
介護保険側保険薬局は原則「みなし指定」で居宅療養管理指導の指定を受けた扱い(要確認)
生活保護生活保護法の指定介護機関の確認
掲示・届出事項薬局内掲示、薬局機能情報提供制度への反映

※届出要件・様式は地域・年度で異なります。必ず所轄の厚生局・自治体の最新案内で確認してください。すでに届出済みで気づいていない薬局も多いので、まず現状確認からです。

現状確認の実務手順

  1. 厚生局の届出状況を照会する:地方厚生局が公表している届出受理状況の一覧で自局の届出状況を確認。不明なら開設時の書類綴りを確認するか、厚生局へ直接照会します
  2. 介護保険側の指定状態を確認する:みなし指定を辞退していないか、指定内容に変更が必要ないかを自治体の介護保険担当課で確認します
  3. 掲示物と運営規程を点検する:居宅療養管理指導の運営規程・重要事項説明書・薬局内掲示を整備し、薬局機能情報提供制度の登録内容も「在宅対応可」に更新します
  4. 不足があれば様式を取り寄せて提出する:様式・添付書類は年度で変わるため、必ず所轄の最新案内から入手します

STEP2:体制と物品の準備

  • 訪問手段:社用車・自転車・公共交通。駐車許可証の申請も忘れずに
  • 持参物セット:訪問バッグ(中身の定番はこちら)、服薬カレンダー、名刺・パンフレット
  • 記録様式:訪問記録・報告書のテンプレート(医師向け・ケアマネ向け)
  • 緊急時対応:臨時処方・急変時の連絡フローを1枚に
  • 算定の整理:介護・医療の使い分け、人数区分、回数上限(算定要件まとめ

開始前に決めておく運用ルール

物品より重要なのが運用ルールです。次の3点は最初の1件が来る前に決めておくと、立ち上げ後の混乱がほぼなくなります。

  • 訪問枠の固定:外来の谷間の時間帯に「この曜日・この時間は訪問」とあらかじめシフトへ組み込む。外来が忙しいから行けない、を構造的に防ぐ
  • 記録の型:訪問記録はSOAP形式のテンプレートを先に作り、報告書は医師向け・ケアマネ向けの2種類をひな形化しておく
  • 保険の使い分けの型:患者ごとに医療保険と介護保険のどちらで算定するかの判断フローを紙1枚にまとめる(使い分けの基準はこちら)。要件・点数は最新の告示・原典で確認する運用をセットにする

無菌調剤や麻薬への対応は、最初から揃える必要はありません。依頼が具体化した段階で整備を検討すれば十分です。

STEP3:依頼が来る導線を作る(営業)

在宅の依頼は待っていても来ません。導線は実質3つです。

  • ケアマネジャー:最重要。近隣の居宅介護支援事業所へ挨拶し、「薬で困っている利用者はいませんか」と具体的に聞く
  • 訪問診療医・病院の地域連携室:退院時カンファレンスからの依頼は質が高い
  • 既存の外来患者:来局が途切れがちな高齢患者・家族に「訪問もできます」と案内する。実は一番早い

ケアマネ営業の実務:最初の挨拶で何を言うか

居宅介護支援事業所への挨拶は、「在宅始めました。よろしくお願いします」だけでは記憶に残りません。事例ベースで「うちが解決できる困りごと」を先に言うのがコツです。

トーク例:「残薬が袋いっぱいに溜まっている方、飲み忘れ・飲み間違いが心配な独居の方、施設に入るほどではないけれど薬の管理が不安な方はいらっしゃいませんか。薬剤師がご自宅に伺って、カレンダーへのセットから残薬の整理、先生への報告までまとめて対応できます」——このように利用者像を具体的に挙げると、ケアマネの頭の中で担当利用者と結びつきます。

パンフレットも「できること」の羅列より、「こんな患者さんいませんか?」の事例ベース(残薬の山・服薬拒否・独居で管理不安)のほうが刺さります。営業全体の設計は在宅の依頼を増やす営業完全ガイドを参照してください。

医師・地域連携室への働きかけ

訪問診療を行う診療所には、処方箋のやり取りがある先から順に「訪問対応を始めたので、在宅の患者さんで薬の管理に課題がある方がいればお声がけください」と伝えます。病院の地域連携室には、対応可能エリア・無菌や麻薬の対応可否・連絡先を1枚にまとめた資料を渡しておくと、退院調整の場面で思い出してもらえます。診療所開拓の具体的な進め方は医師から依頼を得る営業ステップにまとめています。

STEP4:最初の1件を確実に回す

  • 初回訪問前:処方医からの訪問指示、患者・家族の同意、ケアプランの位置づけを確認
  • 初回訪問:服薬状況・残薬・保管場所の総点検から。いきなり完璧を目指さない
  • 訪問後:医師・ケアマネへ初回報告を必ず出す。この報告の質が次の依頼を生む
  • 月次:算定チェック(人数区分・回数)をルーティン化(算定漏れの5大原因

初回訪問当日の流れ

  1. 訪問前の電話:訪問日時の再確認と「保険証・お薬手帳・今ある薬を全部出しておいてください」の依頼
  2. 到着後の説明:自己紹介と訪問の目的、費用の仕組みを口頭でも説明し、同意関係の書面を整える
  3. 薬の総点検:残薬の全量確認、保管場所(冷所・引き出し・枕元)、飲み方の実態、他院・OTCの併用を確認
  4. 管理方法の提案:服薬カレンダー・一包化など、その場で決めきれないものは持ち帰りで構わない
  5. 当日中〜翌営業日に報告:医師には残薬状況と処方提案の種、ケアマネには生活面の気づきを報告する

初回報告は「行きました」の連絡ではなく、残薬の実態や生活の気づきなど相手が知らなかった情報を1つ入れることが重要です。この1通が「この薬局に頼むと情報が返ってくる」という信頼になり、2件目以降の依頼につながります。

立ち上げ期によくある失敗

  • 1人の薬剤師に全部乗せる:属人化すると休めなくなる。記録・配達の分業を最初から設計
  • 外来ピーク時間と訪問が衝突:訪問枠は外来の谷間に固定する
  • 算定を後回しにする:初月から取りこぼすと癖になる。開始前に算定の型を決めておく
  • 報告書を出さない・遅い:訪問の質が高くても報告がなければ次の依頼は来ない。報告までを1件と数える
  • 採算を見ずに件数だけ増やす:移動時間を含めた1件あたりの採算を早い段階で把握する(1件あたりのコスト分解

よくある質問(FAQ)

在宅を始めるのに特別な資格は必要ですか?

薬剤師資格があれば可能です。医療保険側の在宅患者訪問薬剤管理指導は届出が必要で、介護保険側は保険薬局のみなし指定が基本です(詳細は所轄の厚生局・自治体で確認してください)。

最初の依頼はどこから来ることが多いですか?

ケアマネジャー経由が最多です。次いで訪問診療医・病院の退院調整、既存外来患者の在宅移行です。

外来と兼務で在宅はできますか?

可能です。多くの薬局は外来の谷間(午後の早い時間帯)に訪問枠を固定して両立しています。件数が増えたら専任化を検討します。

無菌調剤や麻薬対応も最初から必要ですか?

最初から必須ではありません。まずは服薬管理中心の患者から始め、ターミナルケアなどの依頼が具体化した段階で麻薬小売業者の免許や無菌調剤の体制(共同利用を含む)を検討すれば十分です。

監修・編集:在宅ファーマ編集部(薬剤師・実務7年目)
最終更新日:2026年7月2日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

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出典・参考(一次情報)

本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。

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この記事を書いた人

薬剤師マルのアバター 薬剤師マル 在宅ファーマ編集長

薬剤師(実務7年目)。公認スポーツファーマシスト/サプリメントアドバイザー。調剤薬局・在宅医療の現場経験をもとに、在宅薬剤師と薬局経営者へ向けて、算定・実務・経営のリアルな情報を発信しています。記事は厚生労働省の告示・通知や公的データ・業界資料を確認のうえ作成し、最新の改定情報の反映に努めています。

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