在宅の算定で点数を大きく左右する「単一建物診療患者数」。1人なのか、2〜9人なのか、10人以上なのかで区分が変わるため、数え方を誤ると返戻や算定漏れに直結します。本記事では、医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導料)側の「単一建物診療患者数」を軸に、区分ごとの考え方・数え方の原則・間違えやすいケースを場面別のケーススタディで整理します。
単一建物診療患者数とは

同じ建物に住む患者のうち、その薬局が訪問薬剤管理指導を行う人数を指します。「その建物に住んでいる全員」ではなく、「自局が担当している人数」で数えるのがポイントです。似た用語との関係を先に整理しておきましょう。
| 用語 | 保険制度 | 対応する報酬 |
|---|---|---|
| 単一建物診療患者数 | 医療保険 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料(本記事の主題) |
| 単一建物居住者(の人数) | 介護保険 | 居宅療養管理指導費(別記事で解説) |
数え方の発想は両者で共通する部分が多いものの、報酬体系も根拠通知も別物です。レセコンの設定画面でも別項目になっていることが多いため、「どちらの保険の患者か」を先に確定させてから人数を数えるのが実務の順番です。
区分ごとの単位数【2026年度】
| 単一建物診療患者数 | 介護保険(居宅療養管理指導) | 医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導料) |
|---|---|---|
| 1人 | 518単位 | 650点 |
| 2〜9人 | 379単位 | 320点 |
| 10人以上(上記以外) | 342単位 | 290点 |
算定回数の上限は原則月4回(末期の悪性腫瘍・中心静脈栄養・注射による麻薬投与の患者は週2回かつ月8回まで)です。基本の算定要件は「居宅療養管理指導の算定要件と単価【完全ガイド】」をご覧ください。
数え方の原則
- 建物単位で数える:マンション・アパートは「1棟」の中で自局が担当する患者数
- 自局基準で数える:他薬局が同じ建物の別患者を担当していても、自局の担当人数だけで判定する
- 訪問日ではなく月単位の考え方が絡む場面がある:判断に迷うケースは審査支払機関への確認が確実
間違えやすいケース
戸建てに夫婦2人が住んでいる場合
同一世帯の夫婦をどちらも担当する場合、それぞれを「単一建物診療患者1人」として扱えるとされる取り扱いがあります(同居家族の特例)。ただし適用条件の細部は疑義解釈で確認してください。
同じマンションの別世帯を2人担当する場合
同一建物内で2人を担当するため、原則として「2〜9人」の区分(介護保険なら379単位)になります。世帯が別でも建物が同じなら合算して数えるのが原則です。
有料老人ホーム・グループホームの場合
施設系の建物では、担当人数が10人以上になれば「10人以上」の区分になります。認知症グループホームのユニットの扱いなど、施設種別によって解釈が分かれやすい部分は、必ず最新の疑義解釈・所轄の確認を挟んでください。施設種別ごとの算定可否は「施設種別×算定可否の早見表」で整理しています。
ケーススタディ:この場合は何人と数える?

数え方の原則を、現場で実際に迷いやすい場面に当てはめて確認します。
| 場面 | 数え方 | 区分の目安 |
|---|---|---|
| 戸建てに1人暮らしの患者を担当 | その建物で自局が担当するのは1人 | 「1人」区分 |
| 同じマンションの別世帯を自局が2人担当 | 世帯が別でも建物単位で合算して2人 | 「2〜9人」区分 |
| 同じマンションに他薬局の患者が複数、自局の担当は1人 | 他薬局分は数えず、自局分の1人のみ | 「1人」区分 |
| サービス付き高齢者向け住宅で自局が十数人を担当 | 建物単位で自局の担当人数を合算 | 「10人以上」区分 |
| 同一世帯の夫婦2人をどちらも担当 | 同居家族の特例により、それぞれを1人として扱える取り扱いあり | 「1人」区分(適用条件は疑義解釈で確認) |
| 月の途中で担当患者が入院・逝去し人数が変わった | 判定タイミングの取り扱いは迷いやすい | 審査支払機関・所轄への確認が確実 |
共通する判断手順は「(1)建物を特定する →(2)その建物で自局が担当する患者を数える →(3)特例(同居家族など)の該当を確認する」の3ステップです。この順番を崩さなければ、大半のケースは機械的に判定できます。
実務での防衛策
- 患者マスタに「建物名」を必ず登録し、同一建物の担当人数を月初に確認する
- 新規で施設・マンションの患者を受けたら、既存患者と同じ建物かをチェックする運用にする
- レセコンの区分設定を訪問のたびに見直す(人数が増減した月は特に注意)
- 施設案件は契約前に「自局の担当人数がどの区分になりそうか」を試算してから受ける
- 月末のレセプト点検に「同一建物名の患者の区分が揃っているか」を確認する工程を入れる
医療保険と介護保険の使い分けにも注意
単一建物の区分と同じくらい間違えやすいのが、医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導料)と介護保険(居宅療養管理指導)のどちらで算定するかです。原則として、要介護・要支援の認定を受けている患者は介護保険が優先されます。区分を正しく数えても保険の選択を誤れば返戻になるため、初回契約時に介護認定の有無を必ず確認しましょう。どちらの保険で算定するかの判断フローは「在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導の違い」で詳しく整理しています。
よくある返戻・査定パターン
- 同一建物の患者を「1人」区分で算定してしまった(担当人数の把握漏れ)
- 介護認定のある患者を医療保険で算定してしまった
- 月4回の上限を超えて算定してしまった(特例対象でない患者)
- 施設への訪問で、施設種別上そもそも算定対象外だった(特養の原則など)
いずれも「数え方そのもの」より「担当人数・認定情報の把握漏れ」が原因になっていることがほとんどです。患者マスタの建物名登録と月初の担当人数確認をルーチン化すれば、この種の返戻は大部分を未然に防げます。
区分を間違えて請求してしまったら
点検で誤りに気づいた場合は、放置せず早めに対応するのが原則です。一般的には、返戻されたレセプトは正しい区分に直して再請求し、すでに支払われた分の誤りは審査支払機関に相談のうえ取り下げ・再請求などの手続きを取ります。「気づいたのに直さない」状態が最もリスクが高いため、月次のレセプト点検に同一建物チェックを組み込み、誤りを早期に拾える仕組みにしておきましょう。具体的な手続きの細部は、審査支払機関・所轄の指示に従ってください。
よくある質問(FAQ)
単一建物診療患者数は誰の人数を数えますか?
その建物に住む患者のうち、自分の薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する患者の人数です。他薬局の担当患者は含めません。
夫婦2人を担当する場合はどの区分になりますか?
同一世帯の場合、それぞれを「1人」として扱える取り扱いがあります。適用条件は最新の疑義解釈資料でご確認ください。
月の途中で担当人数が変わったらどうなりますか?
区分の判定タイミングは判断に迷いやすいポイントです。取り扱いの細部は審査支払機関・所轄の厚生局等への確認をおすすめします。
介護保険の「単一建物居住者」とは何が違いますか?
「単一建物診療患者数」は医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導料)、「単一建物居住者」は介護保険(居宅療養管理指導)の用語です。数え方の発想は共通する部分が多いものの、報酬体系が別のため、算定する保険に合わせてそれぞれの通知・疑義解釈で確認してください。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

