「薬局を開業したいけど、いくらかかるの?」——独立を考える薬剤師にとって最初の壁がコストです。本記事では、薬局の開業に必要な初期費用からランニングコスト、損益分岐点の計算方法まで、リアルな数字で解説します。
初期費用の内訳

総額の目安
| 規模 | 初期費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小規模(10坪) | 2,000〜3,000万円 | 個人薬局、門前1軒 |
| 中規模(20坪) | 3,000〜5,000万円 | 複数科の門前 |
| 大規模(30坪以上) | 5,000〜8,000万円 | 面分業、在宅対応フル装備 |
項目別の詳細
| 項目 | 金額 | 補足 |
|---|---|---|
| 物件取得(保証金・礼金) | 200〜500万円 | 医療モール内はやや割高 |
| 内装工事 | 500〜1,200万円 | 調剤室・待合室・投薬カウンター |
| 調剤機器 | 300〜800万円 | 分包機、散剤秤量器、軟膏練り機等 |
| レセプトコンピュータ | 200〜400万円 | 電子薬歴一体型が主流 |
| 初回医薬品仕入れ | 500〜1,500万円 | 門前科目や処方傾向による |
| 什器・備品 | 100〜200万円 | 薬品棚、待合椅子、デスク |
| 開業届・許認可費用 | 30〜50万円 | 薬局開設許可、保健所申請 |
| 広告・宣伝費 | 50〜100万円 | 看板、チラシ、Webサイト |
| 運転資金(3ヶ月分) | 300〜600万円 | 売上入金まで約2ヶ月かかるため |
| 合計 | 2,180〜5,350万円 |
ランニングコスト(月額)
| 項目 | 月額 | 補足 |
|---|---|---|
| 家賃 | 20〜50万円 | 立地による |
| 人件費(薬剤師2名+事務1名) | 120〜180万円 | 最大のコスト |
| 医薬品仕入れ | 売上の70〜80% | 薬価差益を考慮 |
| リース料(機器) | 5〜15万円 | 分包機等のリース |
| 水道光熱費 | 3〜5万円 | |
| 通信費 | 2〜3万円 | レセプトオンライン、電話 |
| システム利用料 | 3〜8万円 | 電子薬歴、在庫管理 |
| 消耗品 | 2〜5万円 | 分包紙、薬袋、プリンタ用紙 |
| 保険料 | 3〜5万円 | 賠償責任保険、火災保険 |
| 顧問料(税理士等) | 3〜5万円 | |
| 合計(薬剤料除く) | 160〜280万円 |
損益分岐点の計算
計算式
損益分岐点 = 固定費 ÷ 粗利率
シミュレーション例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月間固定費 | 200万円 |
| 粗利率(技術料÷売上) | 25% |
| 損益分岐点(月商) | 800万円 |
| 必要処方箋枚数(単価6,000円の場合) | 約1,333枚/月 |
| 1日あたり(25日営業) | 約53枚/日 |
規模別の損益分岐
| 規模 | 固定費/月 | 損益分岐月商 | 必要枚数/日 |
|---|---|---|---|
| 1人薬剤師 | 120万円 | 480万円 | 32枚 |
| 2人薬剤師 | 200万円 | 800万円 | 53枚 |
| 3人薬剤師 | 280万円 | 1,120万円 | 75枚 |
資金調達の方法
| 方法 | 金額 | 金利 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 〜7,200万円 | 1.5〜3% | 開業時に最も利用される |
| 銀行融資 | 〜5,000万円 | 2〜4% | 実績がないと審査が厳しい |
| 医療機器リース | 機器全額 | リース料率2〜5% | 初期費用を抑えられる |
| 自己資金 | — | — | 総額の30%が理想 |
資金計画の例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総投資額 | 3,500万円 |
| 自己資金(30%) | 1,050万円 |
| 日本政策金融公庫 | 2,000万円 |
| 機器リース | 450万円 |
在宅対応にかかる追加コスト
| 項目 | 金額 | 補足 |
|---|---|---|
| 訪問用車両 | 100〜200万円 | 中古軽自動車でも可 |
| 車両維持費 | 月3〜5万円 | ガソリン、保険、駐車場 |
| 訪問用かばん・医療材料 | 5〜10万円 | 初期購入 |
| 無菌調剤設備 | 100〜300万円 | クリーンベンチ、安全キャビネット |
| 24時間対応の携帯 | 月1万円 | 転送電話の設定 |
開業までのタイムライン
| 時期 | やること |
|---|---|
| 12ヶ月前 | 開業計画の策定、立地調査開始 |
| 9ヶ月前 | 物件確定、資金調達の申込み |
| 6ヶ月前 | 内装設計、機器の選定・発注 |
| 4ヶ月前 | 薬局開設許可の申請 |
| 3ヶ月前 | 内装工事開始、スタッフ採用 |
| 2ヶ月前 | 医薬品の初回発注、保健所の検査 |
| 1ヶ月前 | 開設許可取得、近隣医療機関への挨拶 |
| 開業当日 | 営業開始 |
初期費用を抑える5つの視点
内訳表の各項目は、工夫しだいで圧縮の余地があります。ポイントは「削る場所」と「削ってはいけない場所」を分けることです。
- 居抜き物件を探す:前が薬局・クリニックだった物件なら、内装工事費を大きく圧縮できる。調剤室の給排水・電源が残っているかが見極めポイント
- 機器は購入とリースを使い分ける:高額機器はリースで初期費用を平準化し、更新頻度の低い什器は購入に。資金計画の柔軟性が上がる
- 内装は動線に優先投資する:意匠より「調剤動線と患者動線が交差しない設計」が長期の生産性を決める。装飾は開業後でも足せる
- 初回仕入れは最小限から始める:門前の処方傾向が固まる前の大量仕入れは不動在庫のもと。最小包装・少量で始めて実績に合わせて拡充する
- 相見積もりを取る:内装・機器・レセコンはいずれも複数社比較が前提。仕様を揃えた見積もり依頼で条件交渉の材料を作る
逆に、運転資金だけは削ってはいけません。開業直後は処方箋枚数が読めないうえ、売上の入金までタイムラグがあります。初期費用を圧縮できた分は運転資金に回すのが安全です。
見落としがちな費用と資金繰りの罠
| 見落としポイント | 内容と対策 |
|---|---|
| 入金タイムラグ | 保険請求分の入金までは約2ヶ月。開業直後の売上が立っても現金は先に出ていく。運転資金を厚めに確保する |
| 原状回復義務 | 賃貸借契約の退去時条件を契約前に確認。調剤室の造作は撤去費が想定より膨らみやすい |
| システムの更新・保守費 | レセコン・電子薬歴は導入して終わりではない。保守料と将来の更新費を月次コストに織り込む |
| 採用の遅れ | 薬剤師採用が開業に間に合わないと、開局時間の短縮や応需制限に直結。採用は物件確定と同時に動く |
| 薬価改定をまたぐ在庫 | 改定直前の大量仕入れは評価損のリスク。開業時期が改定期に近い場合は仕入れ計画を調整する |
数字の細部よりも、「現金がいつ入り、いつ出ていくか」の時間差を資金計画に反映できているかが、開業初年度を乗り切る分かれ目になります。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 2,000〜8,000万円(規模による) |
| 月間固定費 | 160〜280万円(薬剤料除く) |
| 損益分岐 | 月商800万円(2人薬局の場合) |
| 資金調達 | 自己資金30%+公庫融資が王道 |
| 在宅対応 | 追加200〜500万円。将来の収益源として投資価値あり |
この記事は公開されている薬局経営データおよび金融機関情報に基づいて作成しています。
よくある質問(FAQ)
薬局の開業には総額いくらかかりますか?
規模により幅がありますが、本文の内訳のとおり初期費用はおおむね2,000〜5,000万円が目安です(小規模〜中規模の場合)。物件条件と機器構成、初回仕入れの規模で大きく変わります。
自己資金はどのくらい用意すべきですか?
総投資額の30%程度が理想とされます。残りは日本政策金融公庫の融資や機器リースを組み合わせるのが一般的な資金計画です。
開業準備はいつから始めるべきですか?
本文のタイムラインのとおり、開業の12ヶ月前には計画策定と立地調査を始めるのが目安です。特に物件確定と資金調達、薬局開設許可の申請は後ろ倒しにできないため、逆算して動きます。
在宅対応の設備は開業時から揃えるべきですか?
訪問用車両など基本的な部分から段階的に整えるのが現実的です。無菌調剤設備のような大きな投資は、在宅の受注状況と地域の需要を見てから判断しても遅くありません。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
参考リンク
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出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)

