在宅患者訪問薬剤管理指導料は、患者さんの住まいが個人宅か施設かではなく、「単一建物診療患者」の人数で650点・320点・290点に分かれます。この人数の数え方を間違えると、1人あたり330点以上の差がそのまま返戻や過少請求になります。
本記事は医療保険側の「単一建物診療患者」の定義と例外を、通知の原文にもとづいて整理します。介護保険側の「単一建物居住者」は 居宅療養管理指導の「単一建物居住者」の数え方 をご覧ください。
- 単一建物診療患者=その患者が居住する建築物に居住する者のうち、自局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する人数
- 1人なら650点、2〜9人なら320点、10人以上なら290点
- 同居する同一世帯の患者が2人以上いても、患者ごとに「1人」として算定
- 建物の戸数の10%以下、または20戸未満で算定患者が2人以下なら、それぞれ「1人」として算定
- ユニット数3以下の認知症グループホームはユニットごとに数えてよい
定義:通知(2)の原文

「ここでいう『単一建物診療患者の人数』とは、当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険薬局が訪問薬剤管理指導料を算定する者の人数をいう。なお、ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所については、それぞれのユニットにおいて、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する人数を、単一建物診療患者の人数とみなすことができる。」
数えるのは「建物の入居者数」でも「他の薬局が訪問している人数」でもなく、自局がその建物で在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者の人数です。同じ建物に他薬局の訪問患者が何人いても、自局の区分には影響しません。
点数早見表
| 単一建物診療患者の人数 | 区分 | 点数 | 主な場面 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料1 | 650点 | 個人宅、同居家族、10%ルール・20戸ルールに該当する集合住宅 |
| 2〜9人 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料2 | 320点 | 小規模の有料老人ホーム・サ高住など |
| 10人以上 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料3 | 290点 | 大規模施設 |
出典:調剤報酬点数表 区分15
2〜9人と10人以上の差は30点ですが、1人と2〜9人の差は330点です。「1人」として算定できる例外に該当するかどうかが、収益面で最も効きます。
「1人」として算定できる3つの例外

通知(12)は次の3つの場合に、建物内に複数の患者がいても「単一建物診療患者が1人の場合」を算定するとしています。
① 同居する同一世帯の患者が2人以上いる
「1つの患家に在宅患者訪問薬剤管理指導料の対象となる同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合は、患者ごとに『単一建物診療患者が1人の場合』を算定する」。夫婦ともに訪問対象という個人宅は、2人それぞれ650点です。
② 算定患者数が建物の戸数の10%以下
「単一の建築物において、当該保険薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が、当該建築物の戸数の10%以下の場合」。100戸のマンションで自局の訪問患者が10人までなら、それぞれ650点で算定します。
③ 建物の戸数が20戸未満で、算定患者が2人以下
「当該建築物の戸数が20戸未満であって、当該保険薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が2人以下の場合」。12戸のアパートで訪問患者が2人なら、各650点です。3人になった時点で「2〜9人」の320点に切り替わります。
| 建物 | 自局の算定患者数 | 判定 | 1人あたりの点数 |
|---|---|---|---|
| 個人宅(夫婦2人とも対象) | 2人 | 例外① | 650点×2 |
| 100戸のマンション | 10人 | 例外②(10%以下) | 650点 |
| 100戸のマンション | 11人 | 例外に該当せず | 290点(10人以上) |
| 12戸のアパート | 2人 | 例外③ | 650点 |
| 12戸のアパート | 3人 | 例外に該当せず | 320点 |
| 有料老人ホーム(50室) | 8人 | 例外に該当せず(16%) | 320点 |
| グループホーム 2ユニット(各9人) | 各ユニット5人 | ユニット単位で数える | 320点 |
グループホームは「ユニット単位」
ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)は、ユニットごとに算定人数を数えて区分を決めることができます。2ユニットの事業所で各ユニットに算定患者が1人ずつなら、それぞれ「1人」の650点です。
ただし、グループホームの入居者の多くは要介護認定を受けているため、実際には介護保険の居宅療養管理指導費で算定する場面が大半です。医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料を使うのは、認定を受けていない入居者に限られます。施設種別ごとの可否は 在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケース で整理しています。
介護保険の「単一建物居住者」との違い
| 比較 | 医療保険:単一建物診療患者 | 介護保険:単一建物居住者 |
|---|---|---|
| 数える対象 | 自局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する人数 | 自局が居宅療養管理指導費を算定する人数 |
| 区分 | 1人/2〜9人/10人以上 | 1人/2〜9人/10人以上 |
| 報酬 | 650点/320点/290点 | 518単位/379単位/342単位 |
| 同居家族・10%・20戸未満の例外 | あり(通知(12)) | あり(介護報酬の通知) |
構造はほぼ平行ですが、数える母数が「医療保険で算定している人」と「介護保険で算定している人」で別です。同じ施設に医療保険の患者と介護保険の患者が混在する場合、それぞれの制度で別々に人数を数えます。
よくある質問(FAQ)
単一建物診療患者とは何ですか?
その患者が居住する建築物に居住する者のうち、自局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の人数を指します。他の薬局が訪問している患者や、訪問していない入居者は含めません。
夫婦2人とも訪問する個人宅はどの区分ですか?
同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合は、患者ごとに「単一建物診療患者が1人の場合」650点を算定します。
マンションで複数の患者を訪問する場合は必ず320点になりますか?
なりません。算定患者数が建物の戸数の10%以下の場合、または戸数が20戸未満で算定患者が2人以下の場合は、それぞれ「1人」として650点を算定できます。
グループホームはどう数えますか?
ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所は、ユニットごとに算定患者数を数えて区分を決めることができます。ただし要介護認定のある入居者は介護保険の居宅療養管理指導費で算定します。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料と審査支払機関の取り扱いをご確認ください。
- 調剤報酬点数表(令和8年厚生労働省告示 別表第三) — 区分15〜15の10・区分10の3
- 調剤報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第4号 別添3) — 区分15の1〜15の10の留意事項
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について — 告示・通知・疑義解釈の一覧

