ショートステイ(短期入所生活介護など、施設に数日〜数週間泊まる介護サービス)を患者さんが利用する月は、薬の管理に「切れ目」が生まれます。押さえるべき原則は1つ、ショートステイ利用中は薬剤師の居宅療養管理指導を算定できないこと。だからこそ、入所前に薬を整えて持たせる・施設に情報を渡す・退所後すぐ確認に入る、という切れ目の設計が薬局と施設・介護職の腕の見せどころになります。本記事では算定の原則と、受け渡し・情報提供の実務を整理します。
原則:ショートステイ利用中は居宅療養管理指導を算定できない
居宅療養管理指導は、名前のとおり居宅で行うサービスです。ショートステイ利用中の患者さんは施設で生活しているため、その期間は算定できません。入院中も同様です。場面ごとの可否を整理すると次のようになります。
| 患者さんの状態 | 居宅療養管理指導の算定 |
|---|---|
| 自宅で生活している期間 | 算定可(原則月4回まで。末期の悪性腫瘍等は週2回かつ月8回まで) |
| ショートステイ利用中 | 算定不可 |
| 入院中 | 算定不可 |
| 特別養護老人ホームに入所 | 原則算定不可(末期の悪性腫瘍のみ例外) |
| 老健・介護医療院に入所 | 算定不可 |
施設類型ごとの詳細は「居宅療養管理指導が算定できないケース」で解説しています。ここで大事なのは、算定できない期間=何もしなくてよい期間ではないということ。ショートステイ中も患者さんの服薬は続きます。算定外の期間の薬を誰がどう安全につなぐか、が本題です。
なぜショートステイ前後は服薬トラブルが起きやすいのか
ショートステイは、患者さんにとって生活環境と「薬を管理する人」が同時に入れ替わるイベントです。自宅では本人・家族・薬剤師が回していた服薬の仕組みが、入所した瞬間に施設職員へバトンタッチされます。このバトンの受け渡しが曖昧だと、次のようなトラブルが起こりがちです。
- 持参した薬の中身や飲み方が施設に正しく伝わらず、配薬を職員が判断できない
- 自宅の残薬と新しい薬が混ざったまま持ち込まれ、古い薬・中止された薬を飲んでしまう
- 施設で飲めなかった分が退所後にそのまま残り、自宅の服薬リズムが崩れる
- 入所を薬局が知らず訪問が空振りになる、退所を知らず薬が切れる
どれも悪意や怠慢ではなく、情報が引き継がれなかったことだけが原因です。裏を返せば、入所前・入所中・退所後の3つの場面で「薬と情報をセットで渡す」型を作れば、ほぼ防げるということでもあります。以下、場面ごとに見ていきます。
入所前の実務:薬を「施設が扱いやすい形」にして渡す

切れ目対策の主戦場は入所前です。「月に数日のことだから」と軽く見ると、訪問計画も請求も狂います。在宅期間中の訪問(原則月4回までの枠内)を入所日程に合わせて前倒しし、次の準備を済ませておきます。
- 日数分+臨時分を明確に:入所日数分の薬を日付・用法ごとに仕分けし、頓服など臨時分の有無と使い方をはっきりさせる
- 一包化・服用時点ごとのセット:朝・昼・夕・眠前が一目で区別でき、施設職員が配薬しやすい形に整える
- 残薬の回収と整理:飲み残しを確認し、施設に持たせる薬と自宅に残す薬を区別する(古い薬の混入を防ぐ)
- 訪問日程の調整:入所日程をケアマネジャーから早めに聞き、入所前に訪問できるよう計画する
残薬の確認・整理の具体的な手順は「在宅患者の残薬整理術」にまとめています。あわせて、お薬手帳を薬と一緒に持たせること、ご家族にも「施設に渡すもの一式」を説明しておくことも忘れずに。当日の荷物に薬が入り忘れる事故は意外なほど多く、前日までに一式をまとめて見える場所に置いてもらうだけで防げます。
施設への情報提供:介護職が知りたいのは「迷う場面の答え」
薬と一緒に渡す情報こそが連携の中身です。施設の職員は、初めて受け入れる利用者さんの薬について「この人の普段」を知りません。薬の一覧だけでなく、介護職が現場で判断に迷う場面の答えを文書で添えると、施設側の負担と事故リスクが大きく下がります。
- 薬の一覧と服用方法(何を・いつ・どのように飲むか)
- 飲み忘れたときの対応(気づいた時点で飲んでよいか、その回は飛ばすか)
- 粉砕やとろみの可否など、服薬介助での注意点
- 体調変化のうち連絡してほしいサインと、薬局・処方医の連絡先
施設側・介護職の方は、受け入れ時にこのリストが揃っているかを確認し、足りなければ遠慮なく薬局へ求めてください。「聞いていない」をなくすことが、利用者さんの安全と職員の安心の両方につながります。
薬局側のコツは、口頭で済ませず必ず文書にすること、そして初回の施設には文書を送るだけでなく電話を一本添えることです。「わからないことがあればいつでも薬局へ」と伝えておくと、施設からの問い合わせのハードルが下がり、次回以降の受け入れが格段にスムーズになります。
退所後の実務:切れ目なく在宅へ戻す

退所後は服薬リズムが崩れやすいタイミングです。次の流れで早めに立て直します。
- 退所日をケアマネジャーと事前に共有し、退所後早めの訪問を計画する
- 施設での服薬状況(飲めなかった分・体調の変化)を確認する
- 残薬を整理し、必要に応じて処方医へ報告・提案する
- 次回のショートステイ予定を確認し、翌月の訪問計画に織り込む
訪問後に医師へ報告し、ケアマネジャーにも情報提供するのは通常どおりです。ショート中の服薬状況は処方見直しの貴重な材料になるため、施設から聞き取った内容もあわせて報告に載せましょう。「施設では全量飲めていたのに自宅では飲み残す」といった差が見えると、自宅の服薬支援をどう強化するかという次の提案につながります。
連携のコツ:ケアマネジャーを「日程情報のハブ」にする
ショートステイ連携でつまずく最大の原因は、入退所の日程が薬局に届かないことです。気づいたら入所していて訪問が空振りになった、退所日を知らずに薬が切れた——どちらも日程共有だけで防げるトラブルです。ケアマネジャーに「ショートの予定が入ったら一報ください」と依頼し、毎月の予定を共有してもらう関係を作りましょう。関係づくりの具体策は「ケアマネとの連携術」で解説しています。
運用としては、月末に翌月のショートステイ予定をまとめて教えてもらい、それを見ながら翌月の訪問計画を組むのが簡単で確実です。定期利用の患者さんなら「毎月第何週はショート」というパターンで覚えられるため、一度型ができれば手間はほとんどかかりません。
まとめ:算定不可の期間こそ、連携の価値が出る
ショートステイ利用中は居宅療養管理指導を算定できません。しかし、入所前の準備・施設への情報提供・退所後の立て直しがきちんと回っている薬局は、施設からもケアマネジャーからも確実に信頼されます。算定外の仕事こそ次の依頼を生む投資と捉えて、切れ目の設計を仕組み化してください。そもそもどの保険で算定するかの判定(医療保険か介護保険か)に迷う場合は、関連記事もあわせてご覧ください。
最終更新日:2026年7月4日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
施設種別ごとの判断は施設種別×居宅療養管理指導の算定可否 早見表で、グループホーム・サ高住・小規模多機能まで含めて整理しています。
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