薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、薬局経営の基盤となる法律です。2019年の大幅改正に続き、2025年にもいくつかの重要な見直しが行われています。
この記事では、薬局の実務に影響する改正ポイントを整理し、経営者・管理薬剤師が取るべき対応策を解説します。なお、改正項目ごとに施行時期は段階的に設定されるため、自局に関係する項目の施行状況は、厚生労働省・e-Gov法令検索の原典で必ず確認してください。
改正の全体像
近年の薬機法改正は「薬局の機能分化」と「デジタル化への対応」を軸に進んでいます。2019年改正で導入された地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定制度は定着期に入り、次なるステップとして「薬局DX」と「患者中心の医薬品提供体制」がテーマになっています。
| テーマ | 主な改正内容 |
|---|---|
| 薬局の機能強化 | 認定薬局の実績評価要件の追加 |
| デジタル対応 | 電子処方箋の普及促進、オンライン対応の恒久化 |
| 安全管理 | 医薬品の追跡可能性(トレーサビリティ)の強化 |
| 後発品促進 | バイオシミラー使用促進の枠組み整備 |
| OTC拡充 | スイッチOTCの範囲拡大に伴う薬局の役割強化 |
薬局経営に影響する主要ポイント
ポイント1:認定薬局の実績要件
地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、認定後の実績が評価されるようになります。認定を取っただけで機能していない「看板倒れ」の薬局が問題視されていたためです。
| 認定区分 | 主な実績指標 |
|---|---|
| 地域連携薬局 | 在宅実施件数、夜間・休日対応実績、多職種連携会議への参加回数 |
| 専門医療機関連携薬局 | がん専門薬剤師の相談実績、専門的な服薬指導の実施件数 |
これは在宅に力を入れている薬局にとっては追い風です。実績があれば認定の更新がスムーズになり、実績がなければ認定を維持できなくなるため、「本気で在宅をやっている薬局」が正当に評価される仕組みに近づいています。地域連携薬局の要件強化の動きは地域連携薬局の認定要件厳格化への備えでも詳しく解説しています。
ポイント2:電子処方箋の普及促進
電子処方箋の導入は2023年1月に始まりましたが、2025年時点でも対応薬局は全体の30%程度にとどまっています。今後は保険薬局の指定更新時に「電子処方箋対応」が事実上の要件になる見込みです。
対応に必要なのは以下の3点です。
- HPKIカード(電子署名用)の取得
- レセコン・電子薬歴の電子処方箋対応アップデート
- マイナ保険証のオンライン資格確認導入(これは既に義務化済み)
導入費用は30〜80万円程度ですが、厚生労働省の補助金を活用すれば実質負担は半額以下に抑えられます。補助金の条件・申請期限は年度により変わるため、最新情報は厚生労働省の案内で確認してください。
ポイント3:医薬品トレーサビリティの強化
偽造医薬品の流通防止を目的に、医薬品のロット番号追跡が厳格化されます。卸売業者から薬局に納品される際のバーコード管理だけでなく、薬局から患者への払い出し段階でもロット情報の記録が求められるようになります。
在宅で使用する注射剤や特殊製剤(抗がん剤、免疫抑制剤等)については、調剤記録にロット番号を残す運用が標準になります。
ポイント4:オンライン服薬指導の恒久化
コロナ禍の特例措置として認められたオンライン服薬指導が恒久制度として確定しました。初回でもオンライン対応が可能になり、在宅患者への臨時対応の選択肢が広がっています。
ただし在宅においては「訪問でないと確認できない情報」が多いため、オンラインは補完的な位置づけです。定期訪問はリアルで行い、緊急時や軽微な確認はオンラインで対応するハイブリッド型が現実的です。実務の流れはオンライン服薬指導のやり方で解説しています。
ポイント5:後発医薬品使用促進の変化
後発品の数量シェアは80%を超え、今後はバイオシミラー(バイオ後続品)の使用促進が政策の重点になります。バイオシミラーは従来の後発品と異なり、患者への丁寧な説明が必要なため、薬剤師の情報提供スキルが問われます。
在宅薬局にとっての意味:規制強化ではなく評価の適正化
5つのポイントを在宅薬局の視点で見直すと、共通する方向性が見えてきます。「体制を整えて実績を積んでいる薬局が、制度上も正当に評価される」という流れです。
- 認定薬局の実績評価:在宅実施件数・夜間休日対応など、在宅薬局が日常的に積んでいる実績がそのまま評価対象になる
- デジタル対応(電子処方箋・オンライン):訪問と組み合わせることで、在宅業務の効率と対応力を高める道具になる
- トレーサビリティ:注射剤・特殊製剤を扱う在宅薬局ほど、記録運用の整備が信頼につながる
つまり、改正対応は「守り」の作業ではなく、在宅で積み上げてきた取り組みを制度上の評価に変換する「攻め」の機会と捉えられます。
薬局が取るべきアクション
短期(3ヶ月以内)
- 電子処方箋の導入状況を確認し、未対応なら補助金活用の検討を開始
- 管理薬剤師に法改正内容の共有・研修を実施
- 在宅業務の実績データ(訪問件数、介入件数等)の集計体制を整備
中期(6ヶ月〜1年)
- 認定薬局の更新に向けた実績要件の達成計画を策定
- トレーサビリティ対応のためのバーコード管理システムの導入検討
- バイオシミラーに関する勉強会の開催
長期(1〜3年)
- 薬局DXの推進(クラウド薬歴、在庫管理AI、患者コミュニケーションのデジタル化)
- 専門医療機関連携薬局の認定取得に向けた専門薬剤師の育成
対応状況セルフチェックリスト
- □ 自局に関係する改正項目と施行時期を、原典(厚労省・e-Gov)で確認した
- □ 電子処方箋の導入状況と補助金の適用可否を確認した
- □ 在宅・夜間休日対応などの実績を数字で集計できる体制がある
- □ 認定薬局の更新要件と自局の現状のギャップを把握している
- □ 法改正の内容をスタッフ全員に共有する場を設けた
チェックが付かない項目が、自局の「最初に着手すべき改正対応」です。全部を一度にやる必要はなく、施行時期が近いものから順に進めれば十分間に合います。
筆者の見解
薬機法の改正は毎回「規制強化」のイメージで語られがちですが、在宅に真剣に取り組んでいる薬局にとっては、むしろ「やっていることが正当に評価される方向」に進んでいると感じます。
特に認定薬局の実績評価は、形だけの認定を排除する効果があり、地道に在宅業務を積み上げてきた薬局にとっては歓迎すべき変化です。法改正を「面倒な手続き」と捉えるのではなく、「自分たちの取り組みを形にするチャンス」と捉える視点が大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 2025年薬機法改正はいつから施行されますか?
A. 改正項目ごとに施行時期が段階的に設定されます。自局に関係する項目の施行状況は、厚生労働省の公表資料とe-Gov法令検索の原典で必ず確認してください。本記事は公開時点の情報を整理したものです。
Q. 小規模薬局でも対応は必要ですか?
A. 必要です。トレーサビリティやデジタル対応は薬局の規模を問わず関係します。一度にすべて対応する必要はないため、電子処方箋などの体制整備から優先順位をつけて進めましょう。
Q. 電子処方箋への対応は義務ですか?
A. 位置づけは政策動向により変わるため、最新の通知を原典で確認してください。少なくとも「事実上の標準」になる流れは明確であり、補助金が使えるうちに体制を整えるのが経営判断としては合理的です。
Q. 認定薬局を目指していない薬局には関係ありませんか?
A. 関係します。トレーサビリティ、オンライン服薬指導、電子処方箋は認定の有無にかかわらず全薬局に影響します。認定薬局の実績評価は、将来的に地域での薬局の選ばれ方にも影響するため、動向の把握はしておくべきです。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)

