2年に一度の調剤報酬改定は、薬局経営に直結する最重要イベントです。近年の改定は「対物業務から対人業務へ」「在宅医療の推進」という方向性が明確で、在宅薬局にとってはチャンスとリスクの両面があります。
本記事では、最新の改定内容を在宅薬局の視点から整理し、経営への影響と対策を解説します。
調剤報酬改定の基本
改定のしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改定頻度 | 2年に1回(偶数年の4月) |
| 決定プロセス | 中医協(中央社会保険医療協議会)で議論→答申→告示 |
| 影響範囲 | 調剤基本料・各種加算・薬学管理料すべて |
| 改定率 | 全体の方向性を示す(プラス改定 or マイナス改定) |
近年の改定トレンド
| 年度 | 主なテーマ | 在宅への影響 |
|---|---|---|
| 2016年 | かかりつけ薬剤師制度の創設 | かかりつけ加算の新設 |
| 2018年 | 対物→対人業務の推進 | 薬歴管理の厳格化 |
| 2020年 | オンライン服薬指導の解禁 | 在宅のオンライン活用が可能に |
| 2022年 | 地域連携薬局の評価 | 連携体制加算の拡充 |
| 2024年 | 在宅・かかりつけ機能の強化 | 在宅関連加算の引き上げ |
| 2026年 | 調剤基本料の引き上げ・体制加算の再編 | 在宅薬学総合体制加算1の倍増(30点・年48回) |
2026年6月改定の主な変更
- 調剤基本料の引き上げ:調剤基本料1が45点→47点になるなど、各区分で引き上げ。
- 地域支援体制加算の廃止・再編:後発医薬品調剤体制加算と統合され「地域支援・医薬品供給対応体制加算1〜5」(27〜67点)に。
- かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止:服薬管理指導料に統合され、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点・3月に1回)、かかりつけ薬剤師訪問加算(230点・6月に1回)が新設。
- 在宅薬学総合体制加算1の倍増:15点→30点に引き上げ、実績要件は年24回→48回に。
在宅関連の主な報酬項目
居宅療養管理指導
| 区分 | 単位数 | 月の算定回数 |
|---|---|---|
| 単一建物1人 | 518単位 | 月4回まで |
| 単一建物2〜9人 | 379単位 | 月4回まで |
| 単一建物10人以上 | 342単位 | 月4回まで |
| がん末期・中心静脈栄養・注射による麻薬の投与 | 上記+週2回・月8回まで |
在宅患者訪問薬剤管理指導料
| 区分 | 点数 | 月の算定回数 |
|---|---|---|
| 在宅患者訪問薬剤管理指導料1 | 650点 | 月4回まで |
| 在宅患者訪問薬剤管理指導料2 | 320点 | 月4回まで |
| 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1 | 500点 | 月4回まで |
| 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2 | 200点 | 月4回まで |
| 麻薬管理指導加算 | 100点 | 算定のつど |
| 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算 | 250点 | 算定のつど |
各種加算一覧
| 加算名 | 点数 | 条件 |
|---|---|---|
| 在宅移行初期管理料 | 230点 | 退院後の在宅移行時 |
| 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料 | 40点 | 処方変更の提案が採用された場合 |
| 服薬情報等提供料1 | 30点 | 医師への情報提供 |
| 服薬情報等提供料2 | 20点 | 患者・家族への情報提供 |
| 夜間・休日・深夜訪問加算(緊急訪問時) | 夜間400点/休日600点/深夜1,000点 | 末期悪性腫瘍・注射による麻薬投与の患者への緊急訪問 |
改定が薬局経営に与える影響

収益シミュレーション
| シナリオ | 在宅患者数 | 改定前(2024年度水準)月間収益 | 改定後(2026年度水準)月間収益 | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模 | 10名 | 30万円 | 33万円 | +3万円 |
| 中規模 | 30名 | 90万円 | 100万円 | +10万円 |
| 大規模 | 50名 | 150万円 | 168万円 | +18万円 |
プラス要因
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在宅関連加算の引き上げ | 訪問1回あたりの単価UP |
| 多職種連携の評価充実 | サービス担当者会議参加等の評価 |
| かかりつけ機能の強化 | かかりつけ加算の要件緩和 |
マイナス要因
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調剤基本料の引き下げ圧力 | 特に大型門前薬局 |
| 後発医薬品体制加算の見直し | 数量ベースから金額ベースへの移行議論 |
| 対物業務の評価引き下げ | 単純な調剤・投薬のみでは減収 |
改定に備える3つのアクション
1. 在宅患者数を増やす
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| ケアマネへの営業 | 地域の居宅介護支援事業所への訪問 |
| 施設との契約 | 特養・老健・グループホームへの提案 |
| 退院時カンファ参加 | 病院の地域連携室との関係構築 |
2. 算定漏れを防ぐ
| よくある算定漏れ | 対策 |
|---|---|
| 麻薬管理指導加算 | チェックリストでの確認 |
| 服薬情報等提供料 | 情報提供のテンプレート化 |
| 在宅移行初期管理料 | 退院連携フローの整備 |
| 夜間・休日・深夜訪問加算 | 看取り期の緊急対応時の算定ルールを共有 |
3. 新しい加算に対応する体制づくり
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修の受講 | 新設加算の算定要件を全員が理解 |
| マニュアル更新 | 改定後の算定フローを改訂 |
| システム対応 | レセコンの更新確認 |
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 改定の方向性 | 「在宅・対人業務」を評価する流れは加速 |
| 在宅薬局への影響 | 適切に算定すればプラス改定 |
| 最重要アクション | 算定漏れ防止と在宅患者数の拡大 |
| 情報収集 | 中医協の議論を日常的にチェック |
この記事は厚生労働省の公開資料および中医協の議事録に基づいて作成しています。
参考リンク
あわせて読みたい
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
よくある質問
Q. 調剤報酬改定はいつ、どのように決まりますか?
A. 調剤報酬改定は2年に1回、偶数年の4月に行われます。中医協(中央社会保険医療協議会)での議論を経て答申・告示という流れで決定され、調剤基本料・各種加算・薬学管理料のすべてに影響します。近年は「対物業務から対人業務へ」「在宅医療の推進」という方向性が明確になっています。
Q. 調剤報酬改定は在宅薬局にとってプラスですか?マイナスですか?
A. 本記事では、在宅関連加算の引き上げ、多職種連携の評価充実、かかりつけ機能の強化がプラス要因である一方、調剤基本料の引き下げ圧力や対物業務の評価引き下げなどがマイナス要因と整理されています。在宅薬局は適切に算定すればプラス改定になるとされ、算定漏れ防止と在宅患者数の拡大が最重要アクションとされています。
Q. 在宅関連でよくある算定漏れにはどんなものがありますか?
A. 本記事では、麻薬管理指導加算、服薬情報等提供料、在宅移行初期管理料、夜間・休日・深夜訪問加算がよくある算定漏れとして挙げられています。対策としては、チェックリストでの確認、情報提供のテンプレート化、退院連携フローの整備、看取り期の判断基準の共有が紹介されています。
Q. 調剤報酬改定に備えて在宅薬局は何をすればいいですか?
A. 本記事では3つのアクションが挙げられています。ケアマネへの営業や施設への提案、退院時カンファレンス参加などで在宅患者数を増やすこと、チェックリストやテンプレート化で算定漏れを防ぐこと、研修の受講・マニュアル更新・レセコンの更新確認など新しい加算に対応できる体制をつくることです。中医協の議論を日常的にチェックすることも重要とされています。
令和8年度改定の細かい取扱いは、厚生労働省の疑義解釈で随時示されています。直近の内容は調剤報酬の疑義解釈まとめ(その9・その10)で整理しています。

