【更新情報:2026年6月調剤報酬改定】
かかりつけ薬剤師指導料(76点)・かかりつけ薬剤師包括管理料(291点)は、2026年6月の改定で廃止され、服薬管理指導料に統合されました。代替として「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算 50点(3月に1回)」「かかりつけ薬剤師訪問加算 230点(6月に1回)」が新設されています。本文中の点数解説・収益試算は2026年5月までの旧制度にもとづく記載です。
「かかりつけ薬剤師」という言葉は、2016年の調剤報酬改定で正式に制度化されました。患者さんが特定の薬剤師を「かかりつけ」として指名し、その薬剤師が一元的・継続的に薬学管理を行う仕組みです。
制度から約10年が経ちましたが、実際にかかりつけ薬剤師指導料(〜2026年5月の旧制度)を算定してきた薬局はまだ全体の一部にとどまっていました。「制度は知っているけれど、患者さんにどう伝えればいいかわからない」という声も多く聞きます。
この記事では、算定要件の整理から患者への説明方法、在宅との相性、収益シミュレーションまでを実践的に解説します。なお、要件・点数は改定で変わるため、実際の算定にあたっては必ず最新の告示・原典をご確認ください。
- かかりつけ薬剤師は「同意にもとづく指名制」。薬剤師側の経験・研修などの要件がある
- 患者への説明は「制度の説明」ではなく「あなたにとってのメリット」から始めるのがコツ
- 多剤服用・通院困難が多い在宅患者は、かかりつけ機能が最も活きる対象
- 信頼関係のある患者から段階的に広げる。同意書とトーク手順の標準化が定着の鍵
かかりつけ薬剤師制度の全体像
かかりつけ薬剤師制度は、「患者が薬剤師個人を指名する」点が最大の特徴です。薬局単位の「かかりつけ薬局」ではなく、薬剤師個人と患者の継続的な関係を評価する仕組みで、指名した患者に対しては、処方薬の一元管理、来局時の継続的な指導、必要なときの相談対応などを担います。
患者側のメリットは、複数の医療機関の薬をまとめてチェックしてもらえる安心感と、「困ったときに相談できる相手が決まっている」ことです。薬局側にとっては、対人業務の評価を収益に変える入口であると同時に、患者との関係を深めて薬局を選び続けてもらう仕組みでもあります。
かかりつけ薬剤師の算定要件
薬剤師側の要件
かかりつけ薬剤師指導料(〜2026年5月の旧制度)の算定には、担当薬剤師が以下の要件を満たす必要がありました(詳細な要件は最新の告示・通知で必ず確認してください)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 薬局勤務経験 | 保険薬剤師として3年以上の経験 |
| 同一薬局の勤務 | 同一薬局に1年以上在籍 |
| 週勤務時間 | 当該薬局に週32時間以上勤務 |
| 研修認定 | 薬剤師認定制度認証機構の認定薬剤師 |
| 医療関係者との連携 | 地域の多職種と連携した実績 |
| 地域活動 | 地域住民への啓発活動への参加 |
要件の中で特にハードルが高いのが「認定薬剤師」です。認定取得には研修単位の取得が必要ですが、日本薬剤師研修センターのe-ラーニングを活用すれば、働きながらでも取得可能です。「要件を満たす薬剤師が誰か」を薬局内で棚卸しし、足りない要件を計画的に埋めていくのが第一歩です。
患者側の同意
かかりつけ薬剤師を算定するには、患者本人の書面による同意が必要です。同意書には「どの薬剤師を指名するか」「指導の内容」「自己負担が増える場合があること」を明記します。同意は形式的な署名集めではなく、患者が内容を理解して選ぶプロセスそのものが制度の趣旨です。
患者への説明のコツ——同意が取れるトークの組み立て
かかりつけ薬剤師の制度を患者さんに説明するとき、最も避けるべきは「制度の説明」から始めることです。
NGな説明
「かかりつけ薬剤師制度というものがありまして、同意書に署名いただくと、私が担当として薬の管理を一元的に行います。なお、自己負担が若干増える場合があります。」
これでは患者さんの反応は「高くなるなら要りません」です。
効果的な説明
「佐藤さんは何か所かの病院からお薬をもらっていますよね。もし私を『かかりつけの薬剤師』に選んでいただければ、すべてのお薬を私が把握して、飲み合わせの問題がないか、まとめてチェックします。何かあればすぐに私に電話してもらえる体制にもなります。いかがでしょうか?」
ポイントは「あなたにとってのメリット」を先に伝え、制度や費用の話は後にすることです。
説明の型(4ステップ)
- ステップ1:相手の状況を言葉にする——「複数の病院からお薬をもらっていますよね」
- ステップ2:メリットを具体的に伝える——「全部まとめて私がチェックします」「いつでも相談できます」
- ステップ3:費用に正直に触れる——「その分、少しだけ負担が増えることがあります」
- ステップ4:選択を委ねる——「いかがでしょうか。無理にとは言いません」
費用の話を隠さないことも重要です。後から「聞いていない」となれば信頼を失います。メリットを実感してもらったうえで、費用も含めて患者自身に選んでもらう——この順番が、結果的に同意率を高めます。
かかりつけ薬剤師と在宅の相性
かかりつけ薬剤師は在宅業務との相性が非常に良いです。
| かかりつけの機能 | 在宅での活かし方 |
|---|---|
| 一元的管理 | 複数診療科の薬を在宅で一括管理 |
| 継続的管理 | 定期訪問で変化を追跡 |
| 24時間対応 | 在宅患者の緊急時に電話対応 |
| 服薬フォロー | 訪問間の電話確認、LINE連絡 |
| 処方医への情報提供 | トレーシングレポートによる連携 |
在宅患者は多剤服用でかつ通院困難なケースが多く、かかりつけ薬剤師の機能が最も発揮される対象です。定期訪問という接点がすでにあるため、外来患者よりも「継続的な関係」を築きやすく、同意の打診も自然な流れでできます。在宅の算定制度との関係は「居宅療養管理指導の算定要件まとめ」もあわせてご覧ください。
収益シミュレーション(〜2026年5月までの旧制度)
旧制度におけるかかりつけ薬剤師指導料の点数は以下の通りでした(いずれも2026年6月改定で廃止。現行の代替は、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点・かかりつけ薬剤師訪問加算230点です)。
| 算定項目 | 点数 |
|---|---|
| かかりつけ薬剤師指導料(旧) | 76点(1回あたり・2026年6月改定で廃止) |
| かかりつけ薬剤師包括管理料(旧) | 291点(月1回・2026年6月改定で廃止) |
旧制度では、通常の服薬管理指導料(約50点)と比較して1回あたり約26点(約260円)の上乗せがありました。
旧制度の試算では、仮にかかりつけ患者が30人いて月1回の来局がある場合、月間の上乗せ収入は約7,800円、包括管理料なら月1回291点×30人で月間8,730点(約87,300円)の技術料収入でした。2026年6月以降は、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点・3月に1回)とかかりつけ薬剤師訪問加算(230点・6月に1回)が収益面での代替となります。在宅患者を中心にかかりつけ指名を増やしていくことで安定した収益基盤を築ける構図は、現行制度でも変わりません。
数字以上に重要なのは、かかりつけ患者は「薬局を移らない患者」だということです。処方箋の応需が景気や門前医療機関の動向に左右される中で、指名にもとづく患者基盤は、薬局経営の安定装置として機能します。
導入のステップ
ステップ1:対象患者の選定
かかりつけ薬剤師の指名を依頼する対象として優先順位が高いのは以下の患者さんです。
- 複数の医療機関から処方を受けている方
- 在宅医療を受けている方
- 慢性疾患で長期通院している方
- 薬の飲み合わせに注意が必要な方
ステップ2:同意書の準備とトークの標準化
薬局内で統一の同意書フォーマットを用意し、説明手順をマニュアル化します。スタッフ間で説明の質にばらつきが出ないようにすることが重要です。前述の「4ステップの型」を薬局のトークスクリプトに落とし込み、ロールプレイで練習しておくと、誰が説明しても一定の質を保てます。
ステップ3:段階的な拡大
最初から全員に声をかけるのではなく、まず信頼関係ができている患者さん5〜10人から始めて、実績を積みながら範囲を広げていきます。断られても関係が壊れるわけではありません。「必要になったらいつでも言ってください」と扉を開けておけば、後から指名につながるケースも多くあります。
つまずきやすいポイントと対策
| つまずき | 対策 |
|---|---|
| 「高くなるなら要らない」と断られる | 費用の前にメリットを具体的に伝える順番を徹底する |
| 同意は取れたが継続的な関わりがない | 来局時の声かけ・フォロー連絡を業務フローに組み込む |
| 特定の薬剤師に負担が集中する | 要件を満たす薬剤師を増やし、指名を分散する |
| 24時間対応への不安で薬剤師が及び腰 | 実際の夜間コール頻度を共有し、当番体制を整える |
筆者の実感
かかりつけ薬剤師の指名をいただいたとき、正直なところ「責任が重くなった」と感じました。24時間対応ということは、夜中に電話がかかってくる可能性もあるわけです。
しかし実際に運用してみると、夜間に電話が鳴ることは月に1〜2回程度。むしろ「マルさんに相談できるから安心」と言ってもらえることの方が多く、患者さんとの信頼関係が格段に深まりました。
在宅を行っている薬剤師にとって、かかりつけ薬剤師の制度はすでに実践していることの「見える化」にすぎません。制度をうまく活用して、患者さんに選ばれる薬剤師を目指してほしいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. かかりつけ薬剤師とかかりつけ薬局は何が違うのですか?
かかりつけ薬剤師は「薬剤師個人」を患者が指名する仕組みで、書面同意にもとづいて一元的・継続的な薬学管理を行います。かかりつけ薬局は薬局という「場」の機能を指す言葉です。かかりつけ薬剤師制度では、担当する薬剤師個人の経験・研修などの要件が定められています。
Q2. 患者にとってのメリットは何ですか?
複数の医療機関の薬をまとめて一人の薬剤師がチェックするため、飲み合わせや重複のリスクを管理してもらえること、そして困ったときに相談できる相手が決まっている安心感です。多剤服用の方や複数の診療科にかかっている方ほどメリットが大きくなります。
Q3. 同意を断られたら関係が悪くなりませんか?
断られても通常の服薬指導・薬学管理は変わらず続くため、関係が壊れることはありません。「必要になったらいつでも言ってください」と伝えて扉を開けておけば、体調や処方の変化を機に後から指名につながるケースも多くあります。無理な勧誘をしないことがかえって信頼につながります。
Q4. 算定要件や点数は今も同じですか?
同じではありません。かかりつけ薬剤師指導料(76点)とかかりつけ薬剤師包括管理料(291点)は、2026年6月の調剤報酬改定で廃止され、服薬管理指導料に統合されました。代替として、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点(3月に1回)とかかりつけ薬剤師訪問加算230点(6月に1回)が新設されています。実際の算定にあたっては、必ず最新の告示・通知・疑義解釈などの原典で要件と点数を確認してください。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。
あわせて読みたい関連記事
参考リンク
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)

