令和8年度(2026年度)の調剤報酬改定は、6月1日から実施されています。改定の中身は告示・通知で示されていますが、「この場合はどう数えるのか」「この患者は対象になるのか」といった細かい判断は、厚生労働省が後から出す疑義解釈資料(Q&A形式の事務連絡)で固まっていきます。
この記事では、直近で出された疑義解釈のうち調剤(薬局)に関係する6問を、専門用語をかみ砕いて整理します。あわせて、薬局にも関係する「掲示のデジタル化」の取扱いも取り上げます。いずれも厚生労働省の事務連絡が出典で、記事末尾に原典PDFへのリンクを載せています。
- 直近の調剤関係の疑義解釈は「その9」(令和8年6月26日)と「その10」(令和8年7月17日)の2本。最新の「その11」(7月30日)に調剤の項目はない
- 注射薬の残薬は「1日使用量から見て7日分以上」で判断。インスリンなど1本を複数回使う製剤は製剤単位で調整する
- 摘要欄に書く「投与間隔が長い薬剤のため」とは、投与間隔が6日間以上の場合を指す
- かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、その業務で残薬などの問題が解消していても算定できない
- 薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを法人がネット販売していれば、薬局で販売しているとみなされる(地域支援・医薬品供給対応体制加算2〜5は届出不可)
そもそも「疑義解釈」とは何か
疑義解釈資料は、改定の告示・通知だけでは判断がつかない点について、厚生労働省保険局医療課が「問」と「答」の形で示す事務連絡です。点数表そのものを書き換えるものではありませんが、実際の審査・指導はこの内容に沿って行われるため、算定の根拠として押さえておく必要があります。
令和8年度改定では、3月23日の「その1」を皮切りに、8月中旬時点で「その11」まで発出されています。すべてに調剤の項目があるわけではなく、医科・歯科・訪問看護・掲示事項など、回によって収録される分野が変わります。
| 回 | 発出日 | 調剤(薬局)に関する項目 |
|---|---|---|
| その9 | 令和8年6月26日 | あり(地域支援・医薬品供給対応体制加算/訪問薬剤管理医師同時指導料) |
| その10 | 令和8年7月17日 | あり(調剤時残薬調整加算/服用薬剤調整支援料/かかりつけ薬剤師フォローアップ加算)+掲示事項 |
| その11 | 令和8年7月30日 | なし(医科・歯科・ベースアップ評価料) |
つまり、いま薬局が確認すべき直近の疑義解釈は「その9」と「その10」です。以下、内容を1問ずつ見ていきます。
その10(7月17日)調剤時残薬調整加算:注射薬の「7日分以上」はどう数えるか

調剤管理料の調剤時残薬調整加算では、内服薬・屯服薬・外用薬について「7日分以上相当」の残薬という基準が示されていました。ところが注射薬には「1日◯錠」のような分かりやすい単位がなく、現場では数え方が定まっていませんでした。
これに対する答えは、「処方箋で指示されている1日使用量から見て、7日分以上の使用量に相当する残薬」です。たとえば1日1回2単位使う指示であれば、14単位以上残っていれば「7日分以上」にあたります。
さらに実務で効いてくるのが後段で、インスリン製剤のように1本(1製剤)で複数回使える注射薬は、製剤単位で残薬の調整を行うとされました。「あと3回分だけ残っている」といった端数を切り出すのではなく、本数で調整するという意味です。
その10:摘要欄の「投与間隔が長い薬剤のため」とは6日間以上のこと
調剤時残薬調整加算を算定するとき、調整した残薬日数が6日以下の場合は、残薬調整をする理由をレセプトの摘要欄に記載することになっています。その理由の選択肢のひとつが「投与間隔が長い薬剤のため」でしたが、「長い」の基準が示されていませんでした。
今回、「投与間隔が6日間以上の場合」と明示されました。週1回製剤(骨粗鬆症治療薬など)や、隔週・月1回の製剤が典型です。1回飛ばすだけで7日以上の残薬になりにくい薬剤群を想定した規定と読めます。レセプト摘要欄の記載ルールを、この基準に合わせて整えておきましょう。
その10:服用薬剤調整支援料2の「6種類以上」の数え方
服用薬剤調整支援料2は「内服薬が合計で6種類以上処方されている患者」が対象です。この「種類数」の数え方が支援料1と同じでよいのかという問いに対し、答えは「そのとおり」でした。具体的には次のとおりです。
- 屯服薬は含めない(内服薬のみで数える)
- 錠剤・カプセル剤・散剤・顆粒剤・液剤は、1銘柄ごとに1種類として計算する
同じ成分でも銘柄が違えば別に数え、剤形が違っても1銘柄なら1種類、という整理です。ポリファーマシー対策で減薬を提案する場面では、まずこの数え方で対象患者を洗い出すのが出発点になります。
その10:かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は「問題が解消していても算定不可」

4問のなかで、算定可否の判断がもっとも分かれそうだったのがこれです。かかりつけ薬剤師フォローアップ加算には、直近6か月以内に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1・2、調剤管理料の調剤時残薬調整加算または薬学的有害事象等防止加算を算定している場合の取扱いが定められており、通知には「ただし、フォローアップ加算に係る業務を行うことによって当該算定に係る問題(残薬等)が解消されている場合を除く」という一文がありました。
これを「解消していれば算定できる」と読んだ薬局は少なくないはずですが、答えは「算定不可」でした。上に挙げた加算・支援料を直近6か月以内に算定している場合は、フォローアップの業務によって残薬などの問題が解消されていても、この加算は算定できないと明確に否定されています。
すでに算定してしまっている場合は、返戻・自主返還の対象になり得ます。かかりつけ薬剤師制度の運用とあわせて、6月以内の算定履歴を確認するフローを組んでおくのが安全です。
その9(6月26日)地域支援・医薬品供給対応体制加算:ネット販売も「薬局での販売」とみなされる
令和8年度改定で再編された地域支援・医薬品供給対応体制加算には、薬局および併設する店舗販売業で「薬事未承認の研究用試薬または検査サービス」を販売・提供していないことという施設基準があります。いわゆる研究用と称する検査キットの販売を排除する規定です。
問われたのは、薬局そのものではなく「薬局が属する法人」がインターネット上で販売している場合はどうなるか。答えは、ネット上での販売・提供も当該薬局で販売・提供しているものとみなす——したがって施設基準を満たさず、加算2から5までの届出はできないというものでした。
店舗の棚だけを見て「うちは扱っていない」と判断すると足をすくわれます。自社のECサイトやモール出店を含め、法人単位で販売品目を棚卸しする必要があります。調剤基本料・体制加算の全体像もあわせて確認しておきましょう。
その9:医師との同時訪問は、在総管の算定を確認してから算定する

令和8年度改定で新設された訪問薬剤管理医師同時指導料(医師と薬剤師の同時訪問の評価)は、同時に訪問する医師が「在宅時医学総合管理料(在総管)を算定し、その患家の患者の主治医であること」を要件としています。
ここで問題になるのが、これから在総管を算定する見込みの患者について、医師の初回訪問診療に同行したケースです。初回時点では、まだ在総管は算定されていません。
答えは、初回訪問診療時に同時訪問して共同指導を行うこと自体は可能。ただし算定は、その医師が当該患者について在総管を算定したことを医療機関に確認してから行うというものでした。つまり「訪問してはいけない」ではなく「算定のタイミングを後ろにずらす」という整理です。
あわせて、同じ疑義解釈の医科の部分では、医療機関側が算定する訪問診療薬剤師同時指導料について「初回の訪問診療時(在総管の算定開始前)には算定できない」と示されています。医師側は初回分を算定できず、薬局側は在総管の算定を確認してから算定する——同時訪問の初回は、医師と薬局で算定の扱いが違う点に注意してください。
おまけ:院内掲示はデジタルサイネージでもよい(その10・掲示事項)
調剤の項目ではありませんが、保険薬局も対象になる取扱いが「その10」に入りました。健康保険法に基づく各規則・告示・通知で掲示が求められている事項について、デジタルサイネージなどの電子的表示による掲示を行ってよいとされています。ただし条件があります。
- 利用者が容易に視認でき、内容を適切に確認できるようにすること
- 表示を切り替える方式なら、数分以内に一巡して全内容を確認できる状態にすること
- 求めがあれば速やかに閲覧できるよう、掲示内容を記載した紙媒体を備え付け、紙で閲覧できる旨を表示すること
なお、医療法など健康保険法以外の法令に基づく掲示は、それぞれの法令の規定に従う必要があります。「紙の掲示物を全部やめてよい」わけではない点に注意してください。
明日から確認したい5つのこと
- 注射薬の残薬調整のルールを、1日使用量ベース+インスリン等は製剤単位に統一する
- 摘要欄の「投与間隔が長い薬剤のため」を、投与間隔6日間以上の場合に限定して運用する
- かかりつけ薬剤師フォローアップ加算について、直近6か月の算定履歴チェックを算定フローに入れる(解消済みでも算定不可)
- 研究用試薬・検査サービスの取扱いを、店舗だけでなく法人のネット販売まで含めて棚卸しする
- 医師との同時訪問は、在総管の算定確認を経てから請求する運用にする
在宅の算定ルール全体は2026年改定後の居宅療養管理指導の算定ルール、改定が薬局経営に与える影響は調剤報酬改定が在宅薬局に与える影響で整理しています。
よくある質問(FAQ)
疑義解釈は告示・通知と同じ拘束力がありますか?
疑義解釈は厚生労働省保険局医療課が発出する事務連絡で、告示・通知そのものではありません。ただし審査や個別指導は実務上この内容に沿って行われるため、算定根拠として確認しておく必要があります。
令和8年度改定の疑義解釈は今どこまで出ていますか?
令和8年3月23日の「その1」から、7月30日の「その11」まで発出されています(2026年8月時点)。このうち調剤報酬点数表関係が収録されているのは、直近では6月26日の「その9」と7月17日の「その10」です。
インスリン製剤の残薬はどう調整すればよいですか?
1製剤で複数回使用できる注射薬は、製剤単位で残薬の調整を行うこととされています。残薬が「7日分以上相当」かどうかは、処方箋で指示された1日使用量から判断します。
残薬が解消されていれば、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は算定できますか?
算定できません。直近6か月以内に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1・2、調剤時残薬調整加算または薬学的有害事象等防止加算を算定している場合は、フォローアップ業務によって問題が解消していても算定不可と示されています。
研究用試薬をグループ会社のネットショップで売っている場合はどうなりますか?
薬局が属する法人がインターネット上で薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを販売・提供している場合、その薬局で販売・提供しているものとみなされます。この場合、地域支援・医薬品供給対応体制加算2から5までの届出はできません。
最終更新日:2026年8月18日
本記事は厚生労働省の事務連絡(疑義解釈資料)の原文を確認のうえ作成しています。算定可否の最終判断は、原典および審査支払機関・地方厚生局の指示に従ってください。

