湿布や解熱鎮痛薬、アレルギー薬など、市販薬と同じような成分の処方薬——いわゆる「OTC類似薬」の患者負担をめぐる制度が、大きく動いています。当初議論されていた保険適用からの除外は見送りとなり、代わりに薬剤費の一部を「特別の料金」として患者に追加負担してもらう新しい仕組みが創設される方向で法改正が進んでいます。
薬局・在宅の現場には「患者さんへの説明」という形で確実に影響が来ます。本記事では、決まったこと・まだ決まっていないことを切り分けて、今から準備できることを整理します。
経緯の整理——「保険外し」から「特別の料金」へ
- 発端:医療費適正化とセルフメディケーション推進の観点から、OTC類似薬を保険給付から外す案が政府内で議論された
- 慎重論:日本医師会などから「受診控えや重症化を招く」「低所得者・慢性疾患患者への影響が大きい」との指摘が相次いだ
- 決着の方向:2025年12月の与党間合意で保険適用除外は見送り。代わりに対象薬剤の薬剤費の一部を患者が追加負担する「特別の料金」方式を創設する方針に(社会保障審議会医療保険部会の資料)
新しい仕組みの中身(現時点の方針)
| 項目 | 内容(報道・審議会資料ベース) |
|---|---|
| 対象 | 市販薬に対応する成分がある医療用医薬品のうち77成分・約1,100品目程度が想定 |
| 負担の仕組み | 対象薬剤の薬剤費の4分の1程度を「特別の料金」として通常の自己負担に上乗せ |
| 開始時期 | 2027年3月頃の開始が想定(法改正の成立が前提) |
| 配慮される患者 | 子ども、がん・難病など慢性疾患で医療上必要な患者、低所得者、入院患者などは対象外とする方向で検討 |
注意:制度の詳細は法改正・告示を経て確定します。対象成分のリストや運用ルールは今後変わり得るため、最終的には厚生労働省の公表資料でご確認ください。
薬局の現場にはどんな影響があるか
- 窓口での説明業務が増える:「なぜこの薬だけ高くなるのか」への説明を求められるのは、医師よりも薬局の窓口。制度の趣旨を1分で説明できる準備が必要
- レセコン・会計の対応:対象品目の判定と「特別の料金」の計算・表示への対応が必要になる見込み。ベンダーの対応方針を早めに確認
- 処方の変化:対象薬剤の処方が減り、OTCへの置き換えや処方内容の見直しが進む可能性。薬局の収益構造のうち薬剤料比率が高い薬局ほど影響を受けやすい
- OTC相談の機会が増える:「市販薬で済むなら市販薬で」という患者行動が広がれば、OTC販売・相談対応が薬局の新しい接点になる。健康サポート薬局の体制が追い風に
在宅患者への影響は限定的、ただし説明は必要
在宅で管理している患者さんの多くは高齢で慢性疾患を抱えており、配慮対象(医師が医療上必要と判断する患者等)に該当するケースが多いと考えられます。ただし「ニュースで見たけど自分の薬は大丈夫か」という不安の声は確実に出ます。訪問時に落ち着いて答えられるよう、制度の骨子を押さえておきましょう。ケアマネジャーや施設職員からの問い合わせにも同じ説明が使えます。
今から準備しておく3つのこと
- 1. 制度ウォッチの担当を決める:法改正の審議状況と対象品目リストの公表を追う担当を決め、社内共有の場をつくる
- 2. 説明ツールの準備:施行が近づいたら、窓口・訪問先で使える1枚ものの説明資料を用意する(対象・負担額の目安・配慮対象)
- 3. OTC相談体制の点検:置き換え需要を受け止められるよう、OTCの品揃えと相談対応のフローを見直す
薬局経営への中期インパクト
この制度が薬局経営に与える影響は、単なる「窓口説明の手間」にとどまりません。中期では次の3つの変化を見ておくべきです。
- 対象領域の処方減:湿布・アレルギー薬などは処方量が多く、対象になれば薬剤料と関連する調剤の件数が目に見えて減る可能性がある。薬剤料依存度が高い薬局ほど影響が大きい
- OTC売上という新しい柱:処方からOTCへの置き換えが進めば、相談販売のできる薬局には売上の分散効果がある。「処方箋がなくても行く薬局」への転換は健康サポート薬局の思想そのもの
- かかりつけ機能の価値上昇:「この症状は受診すべきか、市販薬でよいか」の判断需要が増える。トリアージできる薬剤師の価値は制度が進むほど上がる
制度の行方を「負担増のニュース」としてではなく、薬局の相談機能が試される転換点として捉えるのが、この変化への正しい構えだと考えています。
対象になりやすい薬の領域(報道ベースの例示)
正式な対象リストは制度確定後に公表されますが、報道や審議会資料では「市販薬に同種の成分があるもの」として次のような領域が例示されています。
| 領域 | 例示されている薬の種類 | 在宅現場での位置づけ |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛 | 解熱鎮痛薬の内服・湿布などの外用鎮痛薬 | 湿布は在宅高齢者への処方が非常に多く、説明が必要になる代表格 |
| アレルギー | 第2世代抗ヒスタミン薬など | 花粉症シーズンの定期処方に影響しうる |
| かぜ・鎮咳去痰 | 総合感冒薬に相当する成分など | 急性期処方。OTC置き換えの受け皿になりやすい |
| その他 | ビタミン剤・保湿剤など従来から給付見直し議論のある領域 | 過去の見直し(例:保湿剤の適正化)の延長線 |
※上記はあくまで報道・資料からの例示です。個別の品目が対象になるかは確定情報を待つ必要があります。
窓口・訪問先で想定される質問と答え方
| 患者・家族からの質問 | 答え方の例 |
|---|---|
| 「湿布は保険がきかなくなるの?」 | 「保険は続きます。一部のお薬で自己負担が少し増える仕組みが検討されていますが、まだ確定していません。決まったら必ずご案内します」 |
| 「私の薬も高くなる?」 | 「持病で継続して必要なお薬は負担を増やさない配慮が検討されています。○○さんのお薬が対象かどうかは、決まり次第お伝えします」 |
| 「市販薬に変えたほうが安い?」 | 「症状やお薬によります。自己判断で切り替えると治療に影響が出ることがあるので、変える前に必ずご相談ください」 |
ポイントは「確定していないことを断定しない」「不安を煽らない」「決まったら薬局から案内すると約束する」の3つです。制度改正は薬局への信頼を高めるコミュニケーション機会にもなります。
よくある質問(FAQ)
OTC類似薬は保険がきかなくなるのですか?
いいえ。保険適用から除外する案は見送られ、保険は維持したまま対象薬剤の薬剤費の一部を「特別の料金」として追加負担する仕組みが創設される方向です。制度の詳細は法改正を経て確定します。
いつから始まりますか?
2027年3月頃の開始が想定されていますが、法改正の成立が前提であり、時期・内容は変わる可能性があります。最新情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
在宅の高齢患者も追加負担の対象になりますか?
子どもや慢性疾患で医療上必要と医師が判断する患者、低所得者などには配慮する方向で検討されています。在宅患者は該当するケースが多いと考えられますが、個々の扱いは制度確定後の基準によります。
最終更新日:2026年7月7日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

