在宅訪問の時間管理術──1日の生産性を最大化するルート設計とスケジューリング

在宅訪問のルート計画を立てる薬剤師

執筆:薬剤師マル(在宅医療歴8年)

在宅訪問の最大の課題は「移動時間」です。1件の訪問にかかる実質時間は、移動15〜30分+対応20〜40分+記録10分で、合計45分〜1時間20分。1日に5件訪問すれば、それだけで4〜6時間が消えます。

だからこそ、時間管理とルート設計が重要になります。効率化できれば訪問件数を増やせるだけでなく、一人ひとりの患者さんに向き合う時間も確保できます。

目次

時間管理の基本フレームワーク

在宅訪問のスケジューリングは、以下の3つの要素を最適化することで成立します。

要素内容改善余地
**移動時間**薬局↔患者宅、患者宅↔患者宅の移動ルート最適化で30%短縮可能
**滞在時間**バイタル確認、服薬指導、残薬確認準備の徹底で10分短縮可能
**事務時間**薬歴記載、報告書作成、電話連絡テンプレート活用で半減可能

ルート設計の実践テクニック

エリア型スケジューリング

曜日ごとに訪問エリアを固定する方法です。月曜は薬局の北側エリア、火曜は南側エリア、という形で分けると、1日の総移動距離を大幅に短縮できます。

たとえば筆者の薬局では、訪問先を半径5km以内の3エリアに分割し、週のうち3日をエリア別訪問日、残り2日を緊急・臨時訪問の予備日としています。

時計回りルート

同一エリア内の訪問順は「時計回り」で設定すると、同じ道を行き来する無駄が減ります。Googleマップの経由地設定機能を使えば、最短ルートの自動算出も可能です。

時間帯の工夫

患者さんの生活リズムに合わせた訪問時間帯の工夫も重要です。

時間帯向いている訪問
9:00〜10:00起床が早い高齢者、朝の服薬確認が必要な方
10:00〜12:00定期訪問のゴールデンタイム(患者の活動性が高い)
13:00〜14:00施設訪問(昼食後の服薬確認と合わせて)
14:00〜16:00仕事をしている家族との面談が必要なケースは夕方に設定
16:00〜17:00帰社準備も兼ねた近隣訪問

滞在時間の最適化

事前準備チェックリスト

訪問前に以下を確認してから出発すると、現場での「あれがない」を防げます。

  • 前回の薬歴確認(問題点と次回確認事項)
  • 今回持参する薬の最終確認
  • 必要な情報提供書やパンフレットの準備
  • バイタル測定機器のバッテリー確認
  • 患者固有の注意事項(ペットの有無、靴を脱ぐか等)

訪問時の時間配分目安

1回の訪問を30分以内に収めるための時間配分です。

フェーズ時間内容
挨拶・体調確認3分「お変わりありませんか?」から入る
バイタル測定3分血圧・脈・体温(必要に応じて)
残薬確認5分カレンダーやシートの確認
服薬指導10分新薬の説明、注意事項の確認
生活状況確認5分食事・睡眠・排泄の変化
まとめ・次回連絡4分次回訪問日の確認、持参薬の伝達

これはあくまで目安で、初回訪問や状態変化時は45分〜1時間かかることもあります。大切なのは「今日の訪問で何を確認すべきか」を事前に決めておくことです。

事務時間の短縮テクニック

移動中の音声メモ

車内で音声メモアプリを使い、訪問直後にキーポイントを録音します。「佐藤さん、血圧128、残薬アムロ5T、夕忘れ傾向、ケアマネに共有必要」程度の30秒メモが、帰社後の薬歴記載を大幅に速くします。

隙間時間の活用

2件の訪問の間に10分の空きがある場合、車内で前の患者さんの薬歴を書くか、次の患者さんのカルテを確認します。この「細切れ時間」の活用だけで、帰社後のデスクワークが1時間以上短縮できます。

報告書の定型化

ケアマネへの報告書やトレーシングレポートは、テンプレートを用意しておけば5分で作成できます。一から書くと20分かかるのが、穴埋め式なら5分です。

緊急対応とスケジュールの柔軟性

在宅では24時間対応が求められる場面もあります。計画通りにいかない日も多いからこそ、スケジュールに「バッファ」を持たせることが重要です。

具体的には、1日の訪問件数を「最大キャパの80%」に設定します。5件が限界なら4件を予定に入れ、1件分の枠を予備として空けておく。この余裕が緊急の処方変更対応やショートカンファレンスに対応できる余地を生みます。

筆者の工夫

私が特に効果を感じているのは「金曜午後のブロック化」です。金曜午後は訪問を入れず、1週間分のトレーシングレポート作成、翌週のスケジュール確認、薬の事前準備に充てています。

この仕組みを始めてから、月曜朝の「何から手をつけよう」という焦りがなくなり、週全体の生産性が上がりました。在宅訪問は体力的にも精神的にもハードなので、こうした「リセットの時間」を意識的に確保することが、長く続けるコツだと感じています。


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この記事を書いた人

薬剤師マルのアバター 薬剤師マル 在宅ファーマ編集長
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