薬局の経営を考えるときは、まず売上と利益を分けます。保険調剤の売上には薬剤料と技術料等が含まれ、薬価差益は薬剤料から仕入原価を引いた差額です。在宅の薬学管理料も技術料の一部なので、同じ金額を二重に足さないように整理します。
本記事では、薬局の売上構造を分解し、利益を最大化するためのバランス設計を解説します。
- 売上は薬剤料・技術料等に分解し、薬価差益や営業利益とは区別する。
- 公的な調剤医療費の構成と、自局の原価・経費を使った利益の計算方法を整理する。
- 在宅の追加売上に加え、薬剤原価・移動・人員の追加費用を確認して収益性を判断する。
薬局の営業利益=売上−薬剤などの仕入原価−人件費−その他経費です。薬価差益と技術料を売上に重ねて足すと二重計上になるため、まず売上の内訳と、そこから差し引く費用を分けて確認します。
薬局が儲かる仕組み:売上から原価・経費を引く
全国値の参考として、令和6年度の電算処理分の調剤医療費は、薬剤料72.1%、技術料27.7%、特定保険医療材料料0.2%です。薬価差益を売上の独立した項目として加えると二重計上になります。OTC・物販や介護保険分を含む自局の決算とは対象範囲が違うため、区別して見ます。厚生労働省:令和6年度 調剤医療費(電算処理分)の動向、表2-2(冊子2ページ)。


| 分類 | 売上・利益での位置づけ | 確認する点 |
|---|---|---|
| 薬剤料 | 保険調剤の売上の一部 | 薬剤の仕入原価を差し引く前の金額 |
| 技術料等 | 調剤基本料・薬剤調製料・薬学管理料等 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料もここに含まれる |
| 介護保険の居宅療養管理指導費 | 介護保険によるサービスの売上 | 医療保険の同種指導料との重複算定を避ける |
| OTC・物販 | 保険調剤以外の売上 | 仕入原価・販売経費を分けて把握する |
| 薬価差益 | 薬剤料と薬剤仕入原価の差 | 別の売上として加えない |
処方箋調剤の収益構造
1枚あたりの収益内訳
| 項目 | 金額・計算の確認方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 調剤基本料 | 通常区分は20〜47点、特別Aは5点、Bは3点 | 下表の施設基準と届出で判定 |
| 薬剤調製料・調剤管理料 | 剤形・処方内容等に応じて現行点数表で確認 | 一律の1枚単価ではない |
| 薬学管理料・加算 | 実施内容・要件・併算定制限に応じて確認 | 技術料に含まれ、全額が利益になるわけではない |
| 薬剤料 | 処方薬の薬価と数量に応じて計算 | 仕入原価を差し引く前の売上 |
| 全国の技術料(参考) | 1枚当たり2,594円(令和6年度・電算処理分) | 公的集計値。自局の単価や利益とは区別 |
※ かつての「調剤料」は、2022年度改定で「薬剤調製料」と「調剤管理料」に再編されています。
調剤基本料の区分(2026年6月改定施行後)
| 区分 | 点数 | 主な判定条件(概要) |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 47点 | 調剤基本料2・3、特別調剤基本料A等の対象外(例外・特例は施設基準を確認) |
| 調剤基本料2 | 30点 | 処方箋受付回数・集中率・立地による。月1,800回超かつ集中率85%超など |
| 調剤基本料3イ | 25点 | 同一グループ月3万5千回超〜40万回以下、かつ当該薬局の集中率85%超など |
| 調剤基本料3ロ | 20点 | 同一グループ月40万回超、かつ当該薬局の集中率85%超など |
| 調剤基本料3ハ | 37点 | 同一グループ月40万回超、かつ当該薬局の集中率85%以下 |
| 特別調剤基本料A | 5点 | 医療機関との不動産の賃貸借等の特別な関係と、処方箋集中率等の要件による |
| 特別調剤基本料B | 3点 | 調剤基本料の届出を行っていない薬局 |
在宅医療の収益構造

在宅1件あたりの収益
| 項目 | 金額・計算方法 | 条件 |
|---|---|---|
| 医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料 | 650点=6,500円/算定 | 単一建物診療患者1人。要件・回数制限を満たす場合 |
| 介護保険の居宅療養管理指導費 | 518単位=5,180円/算定 | 薬局薬剤師・単一建物居住者1人。医療保険の同種指導料とは別に判定 |
| 薬剤料 | 処方内容・数量で変動 | 売上であり、薬剤原価は別に差し引く |
| 各種加算 | 要件・届出・併算定制限で判定 | 患者全員に一律に付くものではない |
| 営業利益 | 売上−薬剤原価−人件費−その他経費 | 移動・報告書作成等の費用も含める |
外来vs在宅の収益比較
次表は計算方法を説明するための仮定です。実測した平均単価や所要時間ではなく、在宅の収益性が常に外来を上回ることを示すものではありません。分子は利益ではなく売上です。
| 項目 | 外来の仮定例 | 在宅の仮定例 |
|---|---|---|
| 技術料相当の売上 | 1,200円/受付 | 8,000円/訪問 |
| 所要時間 | 15分 | 60分(移動・記録を含む) |
| 時間当たり売上 | 1,200÷15×60=4,800円 | 8,000÷60×60=8,000円 |
| 利益の比較 | 薬剤原価・人件費・経費を別に確認 | 人件費・移動費等を別に確認 |
在宅患者数別の月間収益
薬剤料等を含めた1名当たり月売上を3〜5万円と仮定した乗算例です。訪問回数・処方内容で売上は変わり、薬局全体に占める割合は自局の総売上を分母にして計算します。この売上から薬剤原価・追加人件費・移動費等を差し引いて利益を確認します。
| 在宅患者数 | 1名当たり月3〜5万円と置く売上例 | 計算・注意点 |
|---|---|---|
| 5名 | 15〜25万円 | 5×3〜5万円 |
| 15名 | 45〜75万円 | 15×3〜5万円 |
| 30名 | 90〜150万円 | 30×3〜5万円 |
| 50名 | 150〜250万円 | 50×3〜5万円 |
薬価差益の仕組み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 薬価(販売価格)と仕入価格の差 |
| 自局の差益率 | (薬剤料−薬剤仕入原価)÷薬剤料×100% |
| 差益を増やす方法 | 後発品の使用促進、仕入れ交渉、共同購入 |
| 注意点 | 薬価改定ごとに差益は縮小傾向 |
後発品比率と薬価差益の関係
| 確認項目 | 見方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 後発医薬品の数量割合 | 現行加算が定める基準・集計期間・除外薬剤で確認 | 数量割合だけから薬価差益率は決まらない |
| 薬価差益 | 薬価に基づく薬剤料と実際の仕入原価を照合 | 銘柄・数量・仕入条件で変わる |
| 調剤報酬上の評価 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算の各区分を確認 | 体制・実績要件と届出が必要。旧後発品単独加算は廃止 |
利益を最大化するバランス設計
自局で確認する売上・原価・経費のバランス
| 確認項目 | 計算・評価 | アクション |
|---|---|---|
| 外来・在宅の売上 | 同じ対象期間・範囲で集計 | 保険種別や同じ技術料を二重に加えない |
| 薬剤の仕入原価 | 売上薬剤料との対応を確認 | 適切な仕入れと在庫・廃棄の管理 |
| 人件費・移動費 | 訪問・記録・連携に使う時間を含める | 人員と訪問ルートの見直し |
| 営業利益 | 売上−売上原価−販売費及び一般管理費 | 比率だけでなく利益額と資金繰りも確認 |
月商別の経営指標を置くときの仮定例
次表の枚数・患者数・人員・利益率は、既存のモデル条件を並べた参考例で、全国平均や推奨配置を示すものではありません。売上だけで利益率は決まらないため、自局の薬剤原価、人件費、家賃等を入れて検証してください。
| 月商 | 処方箋枚数 | 在宅患者 | 薬剤師数 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 800枚 | 10名 | 2名 | 5〜8% |
| 800万円 | 1,200枚 | 20名 | 3名 | 8〜12% |
| 1,200万円 | 1,800枚 | 30名 | 4名 | 10〜15% |
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 売上と利益 | 薬剤料・技術料等の売上と、原価・経費控除後の利益を区別 |
| 在宅の収益性 | 患者構成、移動時間、追加人員を含めて試算 |
| 比率の計算 | 同じ期間・対象範囲で、分母と分子を揃える |
| 経営の安定 | 利益額、資金繰り、業務負担を継続して確認 |
全国値は厚生労働省の調剤医療費の動向、点数・単位は告示・通知を参照しています。患者数別・時間当たり・月商別の数値は本文に示した仮定例であり、全国調査や自局の実績値とは区別してください。
参考リンク
よくある質問(FAQ)
Q. 薬局の売上は何で構成されていますか?
A. 保険調剤の売上は薬剤料・技術料・特定保険医療材料料等で構成され、別に介護保険の居宅療養管理指導費やOTC・物販の売上があります。薬価差益は薬剤料と仕入原価の差なので、独立した売上として加えると二重計上になります。
Q. 外来と在宅では収益性はどのくらい違いますか?
A. 本文では外来1,200円・15分、在宅8,000円・60分という仮定から、時間当たり売上を4,800円と8,000円と計算しています。実測平均や利益の比較ではなく、移動・記録・人件費等を含めると結果は変わります。
Q. 在宅患者数はどのくらいで収益の柱になりますか?
A. 人数だけでは決まりません。1名当たり月売上を3〜5万円と仮定すれば30名で90〜150万円ですが、訪問回数・処方内容・原価・追加人員で変わります。全体に占める割合は自局の総売上を分母に計算します。
Q. 薬価差益を増やすにはどうすればよいですか?
A. 実際の薬剤料と仕入原価を照合し、適切な仕入れ・在庫・廃棄の管理を行います。後発品の数量割合だけで差益率は決まりません。2026年の地域支援・医薬品供給対応体制加算は、各区分の体制・実績要件と届出を別途確認します。
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出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)
この記事の根拠資料

