在宅薬歴のSOAP記録テンプレート──書き方のコツと実例集

SOAP記録テンプレートを記入する薬剤師

執筆:薬剤師マル(在宅医療歴8年)

在宅訪問後の薬歴記載に「何をどこまで書けばいいのか分からない」と悩む薬剤師は多いです。外来と違い、在宅では生活環境や介護状況、多職種との連携内容など記録すべき情報が格段に増えます。

しかし、書くべき情報が多いからこそフォーマットが重要です。SOAP形式を基本にしつつ、在宅特有の項目を加えたテンプレートを使えば、記載の漏れを防ぎながら効率的に記録できます。

目次

SOAPの基本と在宅での応用

SOAP形式は医療記録の世界標準です。在宅薬歴では、各項目に以下の内容を記載します。

SOAP意味在宅で記載する内容
**S(Subjective)**主観的情報患者・家族の訴え、生活上の困りごと、服薬に関する発言
**O(Objective)**客観的情報バイタル、残薬数、ADL変化、居住環境の変化、他職種からの情報
**A(Assessment)**評価薬学的問題点の評価、副作用の可能性、アドヒアランスの判定
**P(Plan)**計画次回確認事項、処方提案内容、多職種への情報共有予定

外来薬歴との最大の違いは、O(客観的情報)の範囲の広さです。在宅では患者の居住環境、家族の介護力、ADL(日常生活動作)の変化など、薬以外の情報も薬学的ケアに直結します。

場面別SOAPテンプレート

テンプレート1:定期訪問(安定期)

【S】「最近は調子がいい。食欲も出てきた」(本人)chr(10)   「夕方の薬だけたまに忘れる」(娘)chr(10)chr(10)【O】BP 128/76, P 72, 体温 36.4℃chr(10)   残薬:アムロジピン5mg 7錠余り(28日分中)chr(10)   一包化カレンダー確認:夕分の飲み残し週2回程度chr(10)   ADL:屋内歩行自立、入浴は介助chr(10)chr(10)【A】夕食後の服薬アドヒアランスに課題ありchr(10)   血圧コントロールはおおむね良好chr(10)   アムロジピン残薬は飲み忘れと一致chr(10)chr(10)【P】夕食後→朝食後への用法変更を医師に提案chr(10)   次回訪問時に残薬数の再確認chr(10)   ケアマネに服薬状況を共有

テンプレート2:初回訪問

【S】「入院中は看護師さんが管理してくれたがchr(10)   自分では不安」(本人)chr(10)   「仕事があるので日中は見られない」(長男)chr(10)chr(10)【O】退院時処方:8種類14錠/日chr(10)   居住環境:2階建て戸建、寝室は1階に移動済みchr(10)   保管状況:すべて薬袋のまま食卓の上に散乱chr(10)   介護認定:要介護2、週3回ヘルパー利用chr(10)   既往歴:脳梗塞後遺症、2型糖尿病、高血圧chr(10)chr(10)【A】本人の服薬自己管理能力に不安ありchr(10)   朝・昼・夕・眠前の4回服用は負担が大きいchr(10)   ヘルパー訪問時間と服薬タイミングの調整が必要chr(10)chr(10)【P】一包化を医師に提案chr(10)   お薬カレンダー設置(翌訪問時に持参)chr(10)   ヘルパーの訪問スケジュールを確認しchr(10)   朝の服薬確認を依頼できるか検討chr(10)   ケアマネに服薬支援の必要性を報告

テンプレート3:状態変化時(副作用疑い)

【S】「3日前から足がむくんで靴が履けない」(本人)chr(10)   「食事量は変わらないが体重が2kg増えた」(妻)chr(10)chr(10)【O】BP 148/92, P 88, 体温 36.2℃chr(10)   両下腿に圧痕性浮腫(+2)、体重 62kg(前回60kg)chr(10)   服薬状況:全薬剤アドヒアランス良好chr(10)   追加薬:アムロジピン5mg→10mgに増量(10日前)chr(10)chr(10)【A】アムロジピン増量後の末梢性浮腫の可能性が高いchr(10)   CCBによる浮腫はよくある副作用chr(10)   血圧は増量後も目標未達chr(10)chr(10)【P】医師に電話連絡:アムロジピン増量と浮腫のchr(10)   時系列の一致を報告chr(10)   ARBへの変更または併用を提案chr(10)   次回訪問は1週間後に前倒しchr(10)   体重・浮腫の経過観察を家族に依頼

効率的に書くためのコツ

コツ1:訪問中にメモを取る

スマートフォンや小型のメモ帳で、訪問中にキーワードだけ記録しておきます。「BP 128、残薬アムロ7錠、夕忘れ」程度のメモがあれば、帰社後のSOAP記載は格段に速くなります。

コツ2:テンプレートを電子薬歴に登録する

使用頻度の高いSOAPパターンをテンプレートとして薬歴システムに登録しておきます。「定期訪問・安定」「初回訪問」「状態変化」の3パターンがあれば、8割の訪問をカバーできます。

コツ3:A(評価)を先に考える

記載に迷ったときは、まず「今日の訪問で見つけた薬学的問題は何か?」を明確にします。Aが決まれば、SとOには「その評価の根拠となる情報」だけを書き、Pには「その問題への対応策」を書くという流れが自然にできます。

コツ4:次回の自分へのメモを残す

Pの最後に「次回確認:浮腫の経過、体重変化」のように次回訪問で確認すべきことを書いておくと、次の訪問準備が楽になります。

薬歴記載の法的な注意点

薬歴は法的な記録であり、調剤録と同様に3年間の保存義務があります。また、個別指導では「SOAPが適切に記載されているか」「患者の状態に基づいた薬学的管理がなされているか」がチェックされます。

記載のポイントは以下の3点です。

  • **事実と評価を分離する**:SとOには事実を、Aには薬剤師としての判断を書く
  • **指導内容を具体的に書く**:「服薬指導した」ではなく「飲み忘れ時の対応(次の服用からでOK)を説明した」と記載
  • **日時と対応者を明記する**:「〇月〇日 14:00 自宅訪問 薬剤師マル」

筆者の失敗談

在宅を始めた頃、訪問後の薬歴記載に毎回30分以上かかっていました。原因は「全部書こうとしていた」こと。患者さんの生活の話、天気の話、家族の近況まで書いていたのです。

先輩に「それは日記であって薬歴ではない」と指摘され、「薬学的問題に関係する情報だけ」に絞る意識を持つようになりました。それ以来、1件あたり10分以内で記載できるようになっています。

テンプレートを活用して「書く内容」を定型化し、「考える内容(A)」に時間を使う。これが効率と質を両立させるコツだと感じています。


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この記事を書いた人

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