執筆:薬剤師マル(在宅医療歴8年)
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、薬局経営の基盤となる法律です。2019年の大幅改正に続き、2025年にもいくつかの重要な見直しが行われています。
この記事では、薬局の実務に影響する改正ポイントを整理し、経営者・管理薬剤師が取るべき対応策を解説します。
改正の全体像
近年の薬機法改正は「薬局の機能分化」と「デジタル化への対応」を軸に進んでいます。2019年改正で導入された地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定制度は定着期に入り、次なるステップとして「薬局DX」と「患者中心の医薬品提供体制」がテーマになっています。
| テーマ | 主な改正内容 |
|---|---|
| **薬局の機能強化** | 認定薬局の実績評価要件の追加 |
| **デジタル対応** | 電子処方箋の普及促進、オンライン対応の恒久化 |
| **安全管理** | 医薬品の追跡可能性(トレーサビリティ)の強化 |
| **後発品促進** | バイオシミラー使用促進の枠組み整備 |
| **OTC拡充** | スイッチOTCの範囲拡大に伴う薬局の役割強化 |
薬局経営に影響する主要ポイント
ポイント1:認定薬局の実績要件
地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、認定後の実績が評価されるようになります。認定を取っただけで機能していない「看板倒れ」の薬局が問題視されていたためです。
| 認定区分 | 主な実績指標 |
|---|---|
| **地域連携薬局** | 在宅実施件数、夜間・休日対応実績、多職種連携会議への参加回数 |
| **専門医療機関連携薬局** | がん専門薬剤師の相談実績、専門的な服薬指導の実施件数 |
これは在宅に力を入れている薬局にとっては追い風です。実績があれば認定の更新がスムーズになり、実績がなければ認定を維持できなくなるため、「本気で在宅をやっている薬局」が正当に評価される仕組みに近づいています。
ポイント2:電子処方箋の普及促進
電子処方箋の導入は2023年1月に始まりましたが、2025年時点でも対応薬局は全体の30%程度にとどまっています。今後は保険薬局の指定更新時に「電子処方箋対応」が事実上の要件になる見込みです。
対応に必要なのは以下の3点です。
- HPKIカード(電子署名用)の取得
- レセコン・電子薬歴の電子処方箋対応アップデート
- マイナ保険証のオンライン資格確認導入(これは既に義務化済み)
導入費用は30〜80万円程度ですが、厚生労働省の補助金を活用すれば実質負担は半額以下に抑えられます。
ポイント3:医薬品トレーサビリティの強化
偽造医薬品の流通防止を目的に、医薬品のロット番号追跡が厳格化されます。卸売業者から薬局に納品される際のバーコード管理だけでなく、薬局から患者への払い出し段階でもロット情報の記録が求められるようになります。
在宅で使用する注射剤や特殊製剤(抗がん剤、免疫抑制剤等)については、調剤記録にロット番号を残す運用が標準になります。
ポイント4:オンライン服薬指導の恒久化
コロナ禍の特例措置として認められたオンライン服薬指導が恒久制度として確定しました。初回でもオンライン対応が可能になり、在宅患者への臨時対応の選択肢が広がっています。
ただし在宅においては「訪問でないと確認できない情報」が多いため、オンラインは補完的な位置づけです。定期訪問はリアルで行い、緊急時や軽微な確認はオンラインで対応するハイブリッド型が現実的です。
ポイント5:後発医薬品使用促進の変化
後発品の数量シェアは80%を超え、今後はバイオシミラー(バイオ後続品)の使用促進が政策の重点になります。バイオシミラーは従来の後発品と異なり、患者への丁寧な説明が必要なため、薬剤師の情報提供スキルが問われます。
薬局が取るべきアクション
短期(3ヶ月以内)
- 電子処方箋の導入状況を確認し、未対応なら補助金活用の検討を開始
- 管理薬剤師に法改正内容の共有・研修を実施
- 在宅業務の実績データ(訪問件数、介入件数等)の集計体制を整備
中期(6ヶ月〜1年)
- 認定薬局の更新に向けた実績要件の達成計画を策定
- トレーサビリティ対応のためのバーコード管理システムの導入検討
- バイオシミラーに関する勉強会の開催
長期(1〜3年)
- 薬局DXの推進(クラウド薬歴、在庫管理AI、患者コミュニケーションのデジタル化)
- 専門医療機関連携薬局の認定取得に向けた専門薬剤師の育成
筆者の見解
薬機法の改正は毎回「規制強化」のイメージで語られがちですが、在宅に真剣に取り組んでいる薬局にとっては、むしろ「やっていることが正当に評価される方向」に進んでいると感じます。
特に認定薬局の実績評価は、形だけの認定を排除する効果があり、地道に在宅業務を積み上げてきた薬局にとっては歓迎すべき変化です。法改正を「面倒な手続き」と捉えるのではなく、「自分たちの取り組みを形にするチャンス」と捉える視点が大切です。

