外来では当たり前になったマイナ保険証によるオンライン資格確認。「在宅訪問ではどうするのか?」という問いに答える仕組みが、居宅同意取得型オンライン資格確認です。薬剤師が訪問先にモバイル端末を持参し、患者宅でマイナンバーカードを読み取って資格確認と情報取得の同意を得る——訪問診療で先行した仕組みが、訪問薬剤管理指導・居宅療養管理指導の現場でも使えるようになっています。
本記事では、在宅薬局の視点で仕組み・メリット・導入手順・現場の注意点を整理します。
居宅同意取得型オンライン資格確認とは

薬局の窓口に置いてある顔認証付きカードリーダーの「訪問版」と考えると分かりやすい仕組みです。訪問先で患者のマイナンバーカードをモバイル端末で読み取り、資格情報の確認と、薬剤情報・特定健診情報等の取得への同意をその場で得ます。
| 項目 | 外来(窓口) | 在宅(居宅同意取得型) |
|---|---|---|
| 確認場所 | 薬局の受付 | 患者の居宅・施設 |
| 使う機器 | 顔認証付きカードリーダー | 薬剤師が持参するモバイル端末等 |
| 本人確認 | 顔認証または暗証番号 | 目視確認等(訪問時の運用に対応) |
| 2回目以降 | 来局のたびに実施 | 再照会機能により初回同意にもとづく効率的な確認が可能 |
在宅薬局にとってのメリット
- 薬剤情報・特定健診情報が見える:初回訪問前の情報収集が大幅に楽になる。併用薬の把握漏れ・重複投薬のリスクを下げられる
- 保険情報の転記ミスがなくなる:在宅は保険者変更(後期高齢者への切替・負担割合変更)の頻度が高く、資格過誤レセプトの防止効果が大きい
- 再照会機能で2回目以降が効率化:毎回カードを預かる必要はなく、初回の同意にもとづいて資格情報を再確認できる
- 電子処方箋・電子カルテ共有への入口:オンライン資格確認は電子処方箋の在宅活用など、医療DX全体の土台になる
導入手順(4ステップ)
- 1. ポータルでの利用申請:医療機関等向けポータルサイトから居宅同意取得型(訪問診療等の機能)の利用を申請する
- 2. モバイル端末・環境の準備:マイナンバーカードを読み取れる端末と通信環境を用意。既存のオンライン資格確認環境の設定変更が必要
- 3. 業務フローの設計:初回訪問時の同意取得を訪問手順に組み込む。同意の説明は契約書類の説明とセットにすると自然
- 4. スタッフ研修と患者への案内:操作手順と「読み取れなかったときの代替手順」を必ずセットで訓練する
現場で気をつけたい3つのポイント

- カードを持っていない・見つからない患者は普通にいる:資格確認書等での確認と併用する前提でフローを作る。「マイナカードがないと訪問できない」わけではない
- 通信環境の確認:山間部・マンションの奥部屋など電波の弱い訪問先では読み取りに時間がかかることがある。オフライン時の手順を決めておく
- 同意の説明は丁寧に:「薬や健診の情報を薬剤師が見られるようになる」ことへの同意であり、認知機能が低下した患者では家族への説明が実質必須になる
在宅の医療DXは、電子処方箋(仕組みの解説)・電子カルテ情報共有と積み木のように積み上がっていきます。資格確認はその一段目です。全体像は薬局DX入門もあわせてご覧ください。
導入する・しないの判断軸
居宅同意取得型の導入は、在宅の件数と患者層によって費用対効果が変わります。次の観点で自局の状況を整理してから判断しましょう。
- 在宅件数が多い薬局:資格過誤の防止と初回情報収集の効率化の効果が大きく、導入メリットが出やすい
- 施設在宅が中心の薬局:まとめて資格確認できる場面が多く、業務効率化の恩恵を受けやすい。ただしカード保管の運用を施設と詰める必要がある
- 個人在宅で件数が少ない薬局:端末コストと使用頻度のバランスを見て、まずは従来方法との併用で様子を見る選択もあり
いずれにしても、医療DXの流れは資格確認・電子処方箋・カルテ共有へと進んでいきます。「いつか対応する」なら、補助の状況も見ながら早めに土台を固めておくほうが、後発の慌ただしい対応を避けられます。
外来のオンライン資格確認と何が違うのか
すでに窓口でオンライン資格確認を導入している薬局でも、在宅(居宅同意取得型)は「別の申請・別の環境設定」が必要になる点に注意が必要です。「窓口で使えているから在宅もそのまま使える」わけではありません。
- 利用申請が別:訪問診療等の機能を使うための申請をポータルで別途行う
- 機器が別:据え置きのカードリーダーではなく、持ち運べるモバイル端末が必要
- 確認方法が別:窓口の顔認証に対し、訪問先では目視確認等の運用に対応
つまり「窓口導入済み」はスタート地点であり、在宅で使うには一段の準備が要ります。導入を検討するなら、まず自局のシステムベンダーに「居宅同意取得型に対応しているか・追加費用はいくらか」を確認するのが最初の一歩です。
訪問当日のオペレーション例(初回訪問)
| タイミング | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 訪問前 | 端末の充電・通信確認。患者にカードの準備を電話で依頼 | 「カードがどこにあるか分からない」は事前連絡でほぼ防げる |
| あいさつ・契約説明時 | 訪問契約の説明とあわせて資格確認・情報取得の同意を説明 | 同意の説明を後回しにすると流れが不自然になる。契約説明とセットが最も自然 |
| 読み取り | モバイル端末でカードを読み取り、患者の意思確認 | 手の震え・寝たきり姿勢でかざしにくい場合は薬剤師が補助 |
| 読み取れないとき | 資格確認書等の従来方法に切り替え | 「今日はこちらの方法で確認しますね」と一言添えて不安にさせない |
| 訪問後 | 取得した薬剤情報・健診情報を薬歴に反映 | 見た情報を活かした形跡(併用薬確認等)を記録に残す |
患者・家族への説明はこの3文で
- 何をするか:「保険証の確認を、マイナンバーカードをこの端末にかざす方法で行います」
- 何がよくなるか:「同意いただくと、他の病院・薬局のお薬や健診の結果を私たちが確認でき、飲み合わせの安全確認がより確実になります」
- 選べること:「同意はいつでも取り消せますし、カードがなくても今までどおりの確認で大丈夫です」
ポイントは「監視される」ではなく「守られる」と伝わる順番で話すこと。特に高齢患者は「番号を預ける」ことへの漠然とした不安が強いため、できること・できないことを具体的に示すのが安心につながります。
よくあるつまずきと対処
- 暗証番号が分からない:居宅同意取得型は目視確認等の運用に対応しており、窓口の顔認証とは確認方法が異なる。操作手順を局内マニュアルに落としておく
- 施設入居者の扱い:カードの保管者(本人/家族/施設)を契約時に確認。施設保管の場合は訪問日にあわせた準備を施設側と取り決める
- 成年後見・家族代理のケース:同意の主体を確認し、迷うケースは無理に進めず従来方法で確認して持ち帰る
よくある質問(FAQ)
在宅訪問でもマイナ保険証は使えますか?
使えます。薬剤師が持参するモバイル端末等でマイナンバーカードを読み取る「居宅同意取得型」のオンライン資格確認により、訪問先で資格確認と診療情報等の取得同意を得ることができます。
患者がマイナンバーカードを持っていない場合はどうなりますか?
資格確認書等による確認で対応します。在宅の高齢患者ではカード未取得・暗証番号不明のケースも多いため、当面は従来方法との併用を前提に業務フローを組むのが現実的です。
導入に補助金はありますか?
導入経費への補助が年度ごとに設けられてきましたが、申請期限・要件は年度で変わります。導入を検討する際は、社会保険診療報酬支払基金・厚生労働省の最新の案内をご確認ください。
最終更新日:2026年7月7日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

