家族の在宅医療が始まると、訪問診療や薬の配達、介護サービスなど、さまざまな費用の領収書が手元にたまっていきます。「これは医療費控除の対象になるの?」という疑問は、ご家族からとてもよく聞かれるものです。本記事では、在宅医療にかかわる費用のうち医療費控除の対象になりやすいもの・なりにくいものの考え方と、領収書の残し方、申告前に国税庁の案内で確認する流れを、ご家族向けにやさしく整理します。具体的な金額の基準や計算方法は毎年の制度で決まるため、必ず国税庁の最新の案内でご確認ください。
医療費控除とは|まず全体像をつかむ
医療費控除とは、1年間(1月から12月まで)に支払った医療費が一定額を超えたとき、確定申告をすることで税金の負担が軽くなる仕組みです。ポイントは3つあります。
- 自動では戻らない:自分で確定申告をして初めて適用されます
- 家族の分もまとめられる:生計を同じくする家族の医療費は、支払った人がまとめて申告できます
- 対象になる費用が決まっている:「治療のために必要だったか」が大きな判断の軸になります
在宅医療は病院への通院と違い、医療と介護のサービスが混ざり合うため、「どれが対象か」が分かりにくいのが特徴です。次の章から、費用の種類ごとに考え方を見ていきます。
在宅医療で対象になりやすい費用
在宅医療にかかわる費用のうち、医療費控除の対象になりやすい代表例は次のようなものです。
- 訪問診療・往診の自己負担分:医師が自宅に来て診療した費用
- 薬局に支払った薬代・訪問管理の自己負担分:処方された薬の代金や、薬剤師の訪問にかかる費用
- 訪問看護の自己負担分:治療のために受けた看護サービスの費用
- 治療に必要な医療材料:医師の指示にもとづくガーゼや衛生材料などの購入費
共通するのは「治療や療養のために医療の専門職から受けたサービスの自己負担分」という点です。健康保険や介護保険が適用された後の、実際に窓口で支払った金額が対象の候補になります。
介護保険サービスと医療費控除の関係
在宅で分かりにくいのが、介護保険のサービス費用です。介護サービスは「医療系のサービスかどうか」でおおまかに扱いが分かれます。
| サービスの種類 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 訪問看護・訪問リハビリなど医療系サービス | 対象になりやすい |
| 医療系サービスとあわせて利用する訪問介護の一部 | 条件により対象になる場合がある |
| 掃除・買い物代行など生活援助中心のサービス | 対象にならないことが多い |
| 福祉用具のレンタル料 | 対象にならないことが多い |
ここは制度上の線引きが細かい部分なので、介護サービスの領収書に「医療費控除の対象額」が印字されているかをまず確認してください。多くの事業者は領収書に対象額を明記しています。印字がない場合は、ケアマネジャーさんや事業者に「医療費控除の対象になりますか」と聞くのが確実です。
交通費・おむつ代など、迷いやすい費用
ご家族からの質問が多い、判断に迷いやすい費用の考え方です。
| 費用 | 考え方 |
|---|---|
| 通院のための交通費 | 公共交通機関の分は対象になりやすい。自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外とされる |
| おむつ代 | 医師が発行する「おむつ使用証明書」があると対象にできる場合がある |
| 市販薬の購入費 | 治療のために使ったものは対象になる場合がある。健康維持のためのサプリメントは対象外 |
| 差額ベッド代・お見舞いの費用 | 本人の希望による個室代や家族の交通費は原則対象外 |
「対象になる場合がある」費用は、証明書や医師の指示の有無で結論が変わります。捨てずに領収書を残し、あとから国税庁の案内や税務署で確認する、という姿勢でいれば損をしません。
領収書と記録の残し方|1年間の準備
医療費控除の準備は、申告の時期にまとめてやろうとすると大変です。日々の小さな習慣で楽になります。
- 専用の箱や封筒を1つ用意する:医療・介護の領収書はすべてそこに入れる
- 月ごとにクリップでまとめる:あとで集計するときの負担が大きく減ります
- 健康保険の「医療費のお知らせ」を保管する:申告の際の資料として使える場合があります
- 交通費はメモを残す:日付・区間・金額を手帳やスマートフォンに記録しておく
領収書は申告後も一定期間の保管が求められます。申告が終わってもすぐに捨てず、まとめて保管しておきましょう。
申告までの流れ|国税庁の案内で確認する手順
実際に申告するときは、次の順で進めるとスムーズです。金額の基準や必要書類は年によって変わることがあるため、最新の情報は必ず国税庁の公式サイトで確認してください。
- 1年分の領収書を「病院」「薬局」「介護サービス」などに分けて集計する
- 国税庁の公式サイトで医療費控除の最新の案内を確認する
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーで、案内に沿って医療費の明細を入力する
- 判断に迷う費用は、税務署の相談窓口や電話相談で確認する
「対象かどうか分からないから申告しない」が一番もったいないパターンです。迷ったら領収書を持って相談する、と覚えておいてください。
薬剤師・薬局に相談できること
在宅を担当している薬剤師や薬局は、税金の専門家ではありませんが、次のようなお手伝いができます。
- 1年分の薬代・訪問費用の領収書の再発行や、支払い履歴の確認
- どの支払いが医療にかかわる費用なのかの整理
- 市販薬について「治療のための購入か」を判断する材料の提供
医療費の負担が大きいときには、医療費控除とは別に高額療養費という健康保険の仕組みもあります。詳しくは高額療養費と在宅患者をご覧ください。また、薬剤師の訪問サービス自体がまだの方は薬剤師の訪問を依頼するにはで流れを紹介しています。
まとめ|領収書を残し、迷ったら確認する
在宅医療の費用は、訪問診療・薬代・訪問看護など医療の専門職によるサービスの自己負担分を中心に、医療費控除の対象になるものが多くあります。介護サービスは領収書の「医療費控除対象額」の印字を確認し、おむつ代や交通費などの迷いやすい費用は証明書とメモを残しておく——この2点を押さえれば、申告時期に慌てることはありません。金額の基準や手続きの詳細は毎年の制度によるため、最終的には国税庁の最新の案内と税務署への相談で確認しながら進めてください。
よくある質問(FAQ)
薬局で支払った薬代は医療費控除の対象になりますか?
処方せんにもとづいて支払った薬代の自己負担分は、対象になりやすい費用の代表例です。薬剤師の訪問にかかる自己負担分も候補になります。領収書を必ず保管しておきましょう。
離れて暮らす親の医療費を子が払った場合はどうなりますか?
「生計を一にしている」と認められる関係であれば、支払った人がまとめて申告できる場合があります。仕送りの状況などで判断が変わるため、国税庁の案内や税務署で確認してください。
いくら以上使ったら申告できますか?
基準となる金額は所得などの条件によって変わるため、本記事では断定していません。国税庁の公式サイトにある医療費控除の案内で、最新の基準をご確認ください。判断に迷う場合は税務署の相談窓口が確実です。
介護サービスの費用はどう確認すればいいですか?
まず領収書に「医療費控除の対象額」が印字されているかを確認してください。印字がない場合は、ケアマネジャーやサービス事業者に対象かどうかを直接尋ねるのが確実です。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

