「訪問看護は来てもらっているけれど、訪問薬剤師って何をしてくれるの?」——在宅で家族を介護していると、こんな疑問を持つ方は少なくありません。訪問看護師は体調の管理やケアの専門家、訪問薬剤師は薬の管理と飲み方の専門家で、役割が異なります。この記事では、それぞれが何をしてくれるのか、どんなときにどちらへ相談すればよいのか、費用や頼み方まで、ご家族向けにやさしく解説します。
訪問看護とは|からだのケア全般を支える専門職
訪問看護は、看護師が自宅に来て、療養に必要なケアを行うサービスです。主治医の指示にもとづいて、次のような支援をしてくれます。
- 体温・血圧・脈拍などの測定と、体調の変化のチェック
- 床ずれ(皮膚の傷)の手当てや、点滴・カテーテルなど医療的な処置
- 入浴のお手伝いや清拭(からだを拭くこと)などの清潔ケア
- ご家族への介護のしかたのアドバイスや、こころのケア
「からだ全体の状態を看る」のが訪問看護師の役割です。薬を飲めているかの確認もしてくれますが、薬の中身の調整や整理は薬剤師の専門分野になります。
訪問薬剤師とは|薬の専門家が自宅に来てくれるサービス
訪問薬剤師は、薬局の薬剤師が自宅に薬を届け、正しく飲めるように支えてくれるサービスです。単なる「配達」ではなく、次のような専門的な支援が受けられます。
- 薬の飲み方・使い方の説明(貼り薬・吸入薬・目薬なども)
- 飲み残した薬(残薬)の整理と、無駄をなくす調整
- 飲み忘れを防ぐ工夫(薬を1回分ずつまとめる「一包化」や、お薬カレンダーの設置)
- 副作用が出ていないかのチェックと、気になる変化をお医者さんへ報告
- 飲み込む力が弱くなったときに、飲みやすい形の薬への変更をお医者さんに提案
「処方された薬を、その人の生活の中でちゃんと使える形にする」のが訪問薬剤師の役割です。詳しい頼み方は薬剤師の訪問を依頼するにはでも解説しています。
違いをひと目で比較
| 比べるポイント | 訪問看護師 | 訪問薬剤師 |
|---|---|---|
| 専門分野 | からだのケア・医療的な処置 | 薬の管理・飲み方の支援 |
| 主にしてくれること | 体調チェック、処置、清潔ケア、介護の相談 | 薬のお届け、残薬整理、飲み忘れ対策、副作用チェック |
| 誰の指示で動くか | 主治医の指示書にもとづく | 主治医の指示・処方せんにもとづく |
| 所属 | 訪問看護ステーションなど | 調剤薬局 |
| こんなときに頼れる | 体調が不安定、処置が必要、介護のやり方に不安 | 薬が余る・飲み間違える、薬の種類が多い、飲み込みにくい |
大切なのは、どちらが上ということではなく、役割が違うのでどちらも頼れるということです。実際の在宅医療では、看護師と薬剤師が連絡を取り合いながら同じ患者さんを支えるのが一般的です。
こんなときはどちらに相談?ケース別の目安
| お困りごと | まず相談する相手 | 理由 |
|---|---|---|
| 熱がある・傷の手当てが必要 | 訪問看護師(または主治医) | 体調の判断と処置は看護の専門分野 |
| 飲み残しの薬が山になっている | 訪問薬剤師 | 残薬の整理と処方の調整は薬剤師の得意分野 |
| 薬の種類が多くて管理しきれない | 訪問薬剤師 | 一包化やお薬カレンダーで仕組みから改善できる |
| 薬を飲んだ後に体調がおかしい気がする | どちらでもOK(緊急時は主治医・救急) | 看護師・薬剤師のどちらからでも医師につながる |
| 錠剤が飲み込みにくくなってきた | 訪問薬剤師 | 飲みやすい形への変更を医師に提案できる |
| 介護のやり方・からだの動かし方に不安 | 訪問看護師 | 介護技術の指導は看護の専門分野 |
迷ったときは、担当のケアマネジャー(介護の計画を立ててくれる人)に相談すれば、適切な相手につないでもらえます。
費用はどうかかる?
訪問看護も訪問薬剤師も、医療保険や介護保険が使えるサービスです。全額を自分で払うのではなく、決められた割合の自己負担で利用できます。訪問薬剤師の場合、かかるのは「薬代」と「訪問による指導への料金」で、どちらも保険が適用されます。どの保険が使われるか、月に何回まで来てもらえるかは、要介護認定の有無や病気の種類によって変わります。具体的な金額は状況によって異なるため、利用を始める前に薬局やケアマネジャーに見積もりの目安を聞いておくと安心です。医療費が高額になりそうなときの支えとなる制度もあります。詳しくは高額療養費と在宅患者の費用の説明ガイドをご覧ください。
頼み方の流れ|どちらも「主治医への相談」から
訪問看護も訪問薬剤師も、主治医の指示があって始まるサービスです。流れはよく似ています。
- 相談する:主治医・ケアマネジャー・いつもの薬局のいずれかに「自宅に来てもらえないか」と相談する
- 指示が出る:主治医が必要と判断すると、訪問の指示が出る
- 契約・説明を受ける:サービス内容と費用の説明を受けて、同意書にサインする
- 訪問が始まる:訪問の曜日・回数を決めて、定期的に来てもらう
「こんなことで頼んでいいのかな」とためらう必要はありません。薬が余っている、管理がつらい、というだけで十分に相談する理由になります。
併用するとこう変わる|よくある実例
たとえば、ひとり暮らしのお母さまを遠方から見守っているケースを考えてみます。訪問看護師が週に決まった曜日に体調をチェックし、訪問薬剤師が薬をお薬カレンダーにセットして飲み忘れを確認する。看護師は「今週は食欲が落ちている」と気づけば薬剤師と主治医に伝え、薬剤師は「この薬が飲みにくそう」と気づけば医師に変更を提案する——このように、それぞれの専門家が別の角度から見守り、情報をつないでくれるのが併用の大きな安心です。ご家族がすべてを背負う必要はなくなります。
よくある誤解
- 「薬剤師さんは配達だけ」→ 誤解です。残薬の整理、飲み方の工夫、副作用のチェックまで行う専門職です
- 「看護師さんが来ているから薬剤師は不要」→ 役割が違います。薬の種類が多い方ほど、薬の専門家が入る価値があります
- 「頼むと高額になりそう」→ どちらも保険が使えるサービスです。事前に目安を確認できます
- 「寝たきりでないと頼めない」→ 通院や薬の管理が難しくなっていれば、相談する価値があります
よくある質問(FAQ)
訪問看護と訪問薬剤師は同時に利用できますか?
できます。役割が違うため、併用することでからだのケアと薬の管理の両方に専門家の目が入ります。実際の在宅医療では、看護師と薬剤師が情報を共有しながら同じ方を支えるのが一般的です。
まだ介護認定を受けていなくても頼めますか?
頼める場合があります。介護保険の認定がない方でも、主治医が必要と判断すれば医療保険で訪問サービスを利用できることがあります。まずは主治医またはいつもの薬局に相談してみてください。
どこの薬局でも自宅に来てくれますか?
訪問に対応している薬局と、外来のみの薬局があります。いつも使っている薬局にまず確認し、対応していない場合は、主治医やケアマネジャーに訪問対応の薬局を紹介してもらえます。
家族が同席しないといけませんか?
毎回の同席は必要ありません。ご本人だけの訪問でも、薬剤師や看護師が状況を記録し、必要に応じて電話などでご家族に共有してくれます。最初の契約時だけはご家族が同席すると、要望を直接伝えられて安心です。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

