退院時カンファレンス(退院前カンファレンスとも呼ばれます)は、入院中の患者が自宅へ戻る前に、病院と在宅チームが治療方針・ケア体制をすり合わせる会議です。薬局薬剤師が参加すると、退院処方から在宅への「薬の切れ目」を防げます。本記事では、参加依頼の受け方から事前準備、当日の発言のポイント、カンファレンス後のアクションまで、初参加でも動ける実務の型を解説します。
退院時カンファレンスとは|薬局薬剤師が呼ばれる理由
退院時カンファレンスには、病院側から主治医・病棟看護師・病院薬剤師・退院支援担当が、在宅側から在宅医・訪問看護師・ケアマネジャー・薬局薬剤師などが参加します。目的は、入院中の治療を在宅の生活へ安全に引き継ぐことです。薬に関しては、次の問題を防ぐために薬剤師の参加が求められます。
- 入院中に処方が大きく変わったのに、在宅側が旧処方の感覚のまま引き継いでしまう
- 麻薬・注射薬・無菌調剤など、受け入れ準備に時間がかかる薬の手配が間に合わない
- 一包化や服薬支援の設計が決まらないまま退院し、初日から飲み間違いが起きる
移行期全体の実務は病院から在宅への移行期を支える薬局の実務ガイドで体系的に解説しています。本記事はその中のカンファレンス当日に焦点を絞ります。
参加依頼はどこから来るか・参加までの流れ
依頼の入口は主に3つです。病院の退院支援部門(地域連携室など)からの直接連絡、ケアマネジャー経由の打診、在宅医からの声かけです。流れは次のようになります。
- 依頼を受けたら、日時・場所(病院かオンラインか)・参加者・患者の基本情報を確認する
- 病院側に退院処方の予定・現在の使用薬の情報提供を依頼する(お薬手帳・薬剤管理サマリーなど)
- 自局の受け入れ体制(無菌調剤・麻薬の免許・訪問可能エリアと曜日)を事前に整理して臨む
依頼が来る薬局になるには、日頃から地域連携室・ケアマネジャーに「在宅対応できる薬局」と認知されていることが前提です。認知づくりは在宅の依頼を増やす薬局の営業完全ガイドを参考にしてください。
事前準備チェックリスト
カンファレンスの価値は準備で決まります。当日までに次を確認しておきましょう。
- 入院前の処方内容と、入院中の変更点(開始・中止・増減)の把握
- 退院処方の予定(特に麻薬・注射薬・特殊な製剤・医療材料の有無)
- 自局の在庫で対応できるか、取り寄せに要する日数
- 嚥下機能・認知機能など、剤形や服薬支援の設計に関わる情報
- 誰が薬を管理するのか(本人・家族・ヘルパー・訪問看護)の見立て
- 初回訪問に入れそうな日程の候補
すべてが事前にわかるとは限りません。わからない項目は「当日確認する質問リスト」に変えておけば、それ自体が準備になります。
当日の立ち回りと発言のポイント
カンファレンスは時間が限られ、発言の機会は多くありません。薬剤師が必ず伝えるべきこと・確認すべきことを絞って臨みます。発言の型は「確認+提案+約束」です。
- 確認の発言例:「退院処方で麻薬の注射剤が続く予定はありますか。ある場合、当薬局で無菌調剤まで対応可能です」
- 提案の発言例:「嚥下が難しいとのことなので、退院処方の段階で剤形を貼付剤や口腔内崩壊錠に揃えられないかご検討いただけますか」
- 約束の発言例:「退院日の翌日に初回訪問に入り、残薬と服薬状況を確認して訪問看護師さんに共有します」
大切なのは、薬局が「調剤して届ける係」ではなく「在宅での薬物治療の設計者」として振る舞うことです。多職種会議での発言の組み立てはサービス担当者会議での薬剤師の発言例も応用できます。
必ず確認すべき情報一覧
| 確認項目 | 確認する内容 | 漏れると起きること |
|---|---|---|
| 退院処方の内容 | 入院中の変更点、退院時に何日分持ち帰るか | 旧処方との重複・飲み間違い |
| 麻薬・注射薬・特殊製剤 | 継続の有無、投与経路、必要な医療材料 | 手配が間に合わず治療が途切れる |
| 服薬管理の担い手 | 本人・家族・ヘルパー・訪問看護の役割分担 | 「誰も見ていない」空白が生まれる |
| 嚥下・認知機能 | 剤形調整・一包化・服薬カレンダーの要否 | 退院初日からの飲み忘れ・誤薬 |
| 初回訪問のタイミング | 退院日と処方発行の流れ、訪問指示の有無 | 訪問開始が遅れ、混乱期に薬剤師が不在 |
| 連絡経路 | 問い合わせ先(病棟・在宅医・連携室)と共有手段 | 疑義や変更時に確認が滞る |
カンファレンス後のアクション
会議は出て終わりではなく、決まったことを初回訪問までに形にする作業が本番です。
- 記録と共有:決定事項・宿題・連絡経路を記録し、薬局内で担当者間に共有する
- 薬剤の手配:取り寄せ・無菌調剤・医療材料の準備を退院日から逆算して進める
- 服薬支援の設計:一包化・服薬カレンダー・お薬ボックスなど、管理の仕組みを決めて準備する
- 初回訪問の実施と報告:退院直後の混乱期に訪問し、状況を在宅医・訪問看護師・ケアマネジャーへ報告する
特に退院直後は、病院で説明された飲み方と患家の実態がずれやすい時期です。初回訪問での気づきを文書で医師へ返すと、次の処方に薬剤師の視点が反映されます。文書での返し方はトレーシングレポートの書き方をご覧ください。
算定の考え方
退院時カンファレンスへの参加は、要件を満たすと退院時共同指導に関する評価の対象になり得ます。医療保険・介護保険のどちらの枠組みか、文書での情報提供や共同指導の形式など、算定には細かい要件があります。本記事では数値には踏み込みません。算定要件・点数は必ず最新の告示・疑義解釈の原典で確認し、参加前に「算定対象になる参加形式か」を病院側と揃えておくとスムーズです。オンラインでの参加が認められるケースもあるため、遠方の病院のカンファレンスでも諦めずに確認しましょう。
まとめ|カンファレンスは「薬の切れ目」を防ぐ最前線
退院時カンファレンスで薬剤師が果たす役割は、退院処方を在宅の生活で実行可能な形に翻訳することです。事前に処方変更と受け入れ体制を整理し、当日は確認・提案・約束の型で簡潔に発言し、会議後は退院日から逆算して手配と初回訪問につなげる。この一連の動きができる薬局は、病院からもケアマネジャーからも「次も呼びたい薬局」になります。
よくある質問(FAQ)
退院時カンファレンスには誰でも参加できますか?
病院側の招集に基づいて参加するのが基本です。退院支援部門・ケアマネジャー・在宅医からの依頼が入口になるため、日頃からこれらの関係者に在宅対応可能な薬局として認知されていることが重要です。担当予定の患者であれば、こちらから参加を申し出る方法もあります。
初参加です。何を話せばよいかわかりません
「確認・提案・約束」の3点に絞れば十分です。退院処方の変更点と特殊な薬の有無を確認し、剤形や服薬支援の設計を提案し、初回訪問の時期と報告先を約束します。事前に質問リストを作って臨めば、その場で迷いません。
オンラインでの参加でもよいのでしょうか?
オンライン参加が認められる場合があります。移動時間なく参加できるため、遠方の病院では特に有効です。ただし算定を予定する場合は、オンライン参加が要件上認められる形式かを最新の原典と病院側への確認で揃えておいてください。
カンファレンスの後、最初にやるべきことは何ですか?
退院日から逆算した薬剤・医療材料の手配です。麻薬や注射薬、無菌調剤が必要な処方は準備に時間がかかるため、決定事項を記録・共有したら、まず在庫と取り寄せの確認から着手してください。
最終更新日:2026年7月14日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

