かかりつけ薬剤師制度の活用法──算定要件・患者同意・収益効果を解説

かかりつけ薬剤師と患者の信頼関係

執筆:薬剤師マル(在宅医療歴8年)

「かかりつけ薬剤師」という言葉は、2016年の調剤報酬改定で正式に制度化されました。患者さんが特定の薬剤師を「かかりつけ」として指名し、その薬剤師が一元的・継続的に薬学管理を行う仕組みです。

制度から約10年が経ちましたが、実際にかかりつけ薬剤師指導料を算定している薬局はまだ全体の一部にとどまります。「制度は知っているけれど、患者さんにどう伝えればいいかわからない」という声も多く聞きます。

この記事では、算定要件の整理から患者への説明方法、在宅との相性、収益シミュレーションまでを実践的に解説します。

目次

かかりつけ薬剤師の算定要件

薬剤師側の要件

かかりつけ薬剤師指導料を算定するには、担当薬剤師が以下の要件を満たす必要があります。

要件内容
**薬局勤務経験**保険薬剤師として3年以上の経験
**同一薬局の勤務**同一薬局に1年以上在籍
**週勤務時間**当該薬局に週32時間以上勤務
**研修認定**薬剤師認定制度認証機構の認定薬剤師
**医療関係者との連携**地域の多職種と連携した実績
**地域活動**地域住民への啓発活動への参加

要件の中で特にハードルが高いのが「認定薬剤師」です。認定取得には研修単位の取得が必要ですが、日本薬剤師研修センターのe-ラーニングを活用すれば、働きながらでも取得可能です。

患者側の同意

かかりつけ薬剤師を算定するには、患者本人の書面による同意が必要です。同意書には「どの薬剤師を指名するか」「指導の内容」「自己負担が増える場合があること」を明記します。

患者への説明のコツ

かかりつけ薬剤師の制度を患者さんに説明するとき、最も避けるべきは「制度の説明」から始めることです。

NGな説明

「かかりつけ薬剤師制度というものがありまして、同意書に署名いただくと、私が担当として薬の管理を一元的に行います。なお、自己負担が若干増える場合があります。」

これでは患者さんの反応は「高くなるなら要りません」です。

効果的な説明

「佐藤さんは何か所かの病院からお薬をもらっていますよね。もし私を『かかりつけの薬剤師』に選んでいただければ、すべてのお薬を私が把握して、飲み合わせの問題がないか、まとめてチェックします。何かあればすぐに私に電話してもらえる体制にもなります。いかがでしょうか?」

ポイントは「あなたにとってのメリット」を先に伝え、制度や費用の話は後にすることです。

かかりつけ薬剤師と在宅の相性

かかりつけ薬剤師は在宅業務との相性が非常に良いです。

かかりつけの機能在宅での活かし方
**一元的管理**複数診療科の薬を在宅で一括管理
**継続的管理**定期訪問で変化を追跡
**24時間対応**在宅患者の緊急時に電話対応
**服薬フォロー**訪問間の電話確認、LINE連絡
**処方医への情報提供**トレーシングレポートによる連携

在宅患者は多剤服用でかつ通院困難なケースが多く、かかりつけ薬剤師の機能が最も発揮される対象です。

収益シミュレーション

かかりつけ薬剤師指導料の点数は以下の通りです。

算定項目点数
**かかりつけ薬剤師指導料**76点(1回あたり)
**かかりつけ薬剤師包括管理料**291点(月1回)

通常の服薬管理指導料(約50点)と比較すると、1回あたり約26点(約260円)の上乗せがあります。

仮にかかりつけ患者が30人いて、月1回の来局がある場合、月間の上乗せ収入は約7,800円と小さく見えますが、包括管理料の場合は月1回291点で、30人なら月間87,300点(約87万円)の技術料収入になります。在宅患者を中心にかかりつけ指名を増やしていくことで、安定した収益基盤が構築できます。

導入のステップ

ステップ1:対象患者の選定

かかりつけ薬剤師の指名を依頼する対象として優先順位が高いのは以下の患者さんです。

  • 複数の医療機関から処方を受けている方
  • 在宅医療を受けている方
  • 慢性疾患で長期通院している方
  • 薬の飲み合わせに注意が必要な方

ステップ2:同意書の準備

薬局内で統一の同意書フォーマットを用意し、説明手順をマニュアル化します。スタッフ間で説明の質にばらつきが出ないようにすることが重要です。

ステップ3:段階的な拡大

最初から全員に声をかけるのではなく、まず信頼関係ができている患者さん5〜10人から始めて、実績を積みながら範囲を広げていきます。

筆者の実感

かかりつけ薬剤師の指名をいただいたとき、正直なところ「責任が重くなった」と感じました。24時間対応ということは、夜中に電話がかかってくる可能性もあるわけです。

しかし実際に運用してみると、夜間に電話が鳴ることは月に1〜2回程度。むしろ「マルさんに相談できるから安心」と言ってもらえることの方が多く、患者さんとの信頼関係が格段に深まりました。

在宅を行っている薬剤師にとって、かかりつけ薬剤師の制度はすでに実践していることの「見える化」にすぎません。制度をうまく活用して、患者さんに選ばれる薬剤師を目指してほしいと思います。


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この記事を書いた人

薬剤師マルのアバター 薬剤師マル 在宅ファーマ編集長
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