執筆:薬剤師マル(在宅ファーマ編集長)
「処方箋枚数は維持しているのに、なぜか利益が減っている」——こうした声が薬局経営者から増えています。診療報酬改定による技術料の引き下げ、後発品の薬価改定、人件費の上昇など、薬局を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。本記事では、薬局の収益を「守る」策と「伸ばす」策の両面から具体的に解説します。
目次
薬局の収益が悪化する5つの原因
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 薬価改定による差益の縮小 | 毎年の薬価引き下げで薬価差益が減少 |
| 調剤報酬の実質減 | 改定のたびに技術料が見直される |
| 人件費の上昇 | 薬剤師の採用難と最低賃金上昇 |
| 処方箋枚数の減少 | 門前医療機関の患者減・競合の増加 |
| 不動在庫の増加 | デッドストックが資金を圧迫 |
【守る】コスト削減の5つの施策
① 薬剤仕入れコストの最適化
| 施策 | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| 共同購入グループへの加入 | 仕入れ値2〜5%改善 | 低 |
| 複数卸との競合見積もり | 価格交渉力の向上 | 中 |
| 後発品メーカーの見直し | AGの活用で差益改善 | 低 |
| 仕入れ頻度の最適化 | 緊急発注の削減でコスト低減 | 低 |
② 不動在庫の徹底管理
不動在庫(デッドストック)は「見えない赤字」です。
| 管理方法 | 具体策 |
|---|---|
| ABC分析の実施 | 売上高で在庫を3ランクに分類。Cランクを重点的に見直し |
| 期限管理の徹底 | 使用期限6ヶ月以内の薬品をリスト化 |
| 薬局間の融通 | 近隣薬局との在庫シェアリング |
| 返品交渉 | 卸への返品条件を事前に確認 |
| 在庫回転率の目標設定 | 月間在庫回転率8〜12回を目標 |
③ 光熱費・固定費の見直し
| 項目 | 見直し方法 | 年間削減額(目安) |
|---|---|---|
| 電力契約 | 新電力への切り替え | 5〜15万円 |
| 通信費 | 回線の統合・見直し | 3〜10万円 |
| リース契約 | 満了機器の買取検討 | 5〜20万円 |
| 消耗品 | 薬袋・ラベルのコスト比較 | 3〜8万円 |
④ 人件費の適正化
人を減らすのではなく、配置を最適化する考え方です。
| 施策 | 効果 |
|---|---|
| ピーク時パート薬剤師の活用 | 固定費→変動費化で効率改善 |
| 事務スタッフへの業務委任 | 薬剤師の時給単価が高い業務に集中 |
| 業務効率化による残業削減 | 残業代のカット(月額5〜10万円/人) |
⑤ 算定漏れの防止
取れるべき報酬を取れていないことは、実質的な「赤字」です。
| よくある算定漏れ | 1件あたりの損失 |
|---|---|
| かかりつけ薬剤師指導料(同意未取得) | 330円/件 |
| 吸入薬指導加算(指導未実施) | 300円/件 |
| 服薬情報等提供料(報告未送付) | 200〜350円/件 |
| 後発医薬品調剤体制加算(後発品比率未達) | 210〜300円/件 |
| 居宅療養管理指導の算定漏れ | 3,780〜5,170円/件 |
【伸ばす】収益を増やす5つの施策
① 在宅業務の拡大
在宅は単価が高く、最も収益インパクトの大きい施策です。
| 指標 | 外来 | 在宅 |
|---|---|---|
| 1件あたりの報酬 | 2,500〜3,500円 | 5,000〜8,000円 |
| かかりつけ効果 | 中 | 高(患者固定化) |
| 地域支援体制加算 | — | 要件達成に寄与 |
新規在宅患者の獲得先:
- ケアマネジャーへのアプローチ
- 地域包括支援センターとの関係構築
- 在宅医との連携強化
- 退院時カンファレンスへの参加
② かかりつけ薬剤師制度の活用
| 同意取得率 | 月間効果(80枚/日の薬局) |
|---|---|
| 10% → 30% | +約40万円/月 |
| 30% → 50% | +約40万円/月 |
③ 健康サポート薬局・地域連携薬局の認定取得
認定取得により加算が算定できるだけでなく、地域での信頼性が向上し処方箋の獲得にもつながります。
④ OTC・健康相談の強化
処方箋以外の収益源を増やす取り組みです。
| 施策 | 期待効果 |
|---|---|
| OTC薬の品揃え拡充 | 来局のきっかけ増加 |
| 健康測定会・相談会 | 地域認知度の向上 |
| 栄養指導・サプリメント相談 | 客単価の向上 |
| 禁煙外来との連携 | 新規患者の獲得 |
⑤ 新規処方箋の獲得
| 施策 | 効果の出やすさ |
|---|---|
| Googleビジネスプロフィールの充実 | ★★★★★ |
| 薬局のWebサイト・SNS開設 | ★★★★ |
| 近隣医療機関への営業(面分業) | ★★★★ |
| 地域イベント・出前講座の開催 | ★★★ |
| 処方箋ネット受付の導入 | ★★★★ |
収益改善の優先順位
効果×難易度のマトリクス
| 施策 | 効果 | 難易度 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 算定漏れの防止 | 中 | 低 | 最優先 |
| 仕入れコスト最適化 | 中 | 低 | 最優先 |
| 不動在庫の削減 | 中 | 低 | 早期着手 |
| 在宅業務の拡大 | 大 | 中 | 中期的に最重要 |
| かかりつけ算定率向上 | 大 | 中 | 積極推進 |
| 残業削減 | 中 | 中 | 並行実施 |
| 新規処方箋獲得 | 大 | 高 | 継続的に取り組み |
まとめ
| 分類 | 最優先施策 |
|---|---|
| 守る(コスト削減) | 算定漏れ防止 → 仕入れ最適化 → 不動在庫削減 |
| 伸ばす(収益拡大) | 在宅拡大 → かかりつけ推進 → 新規処方箋獲得 |
薬局の収益改善は「一発逆転」ではなく、小さな改善の積み重ねです。まずは「取りこぼしをなくす」コスト管理から始め、次に「稼ぐ力を伸ばす」在宅・かかりつけに取り組む。この順序で進めれば、無理なく収益体質を改善できます。
この記事は筆者の薬局経営の実務経験に基づいて作成しています。

