結論から言うと、管理薬剤師の副業は、薬剤師の中でもっとも法律上の制約が強い働き方です。薬機法上、管理薬剤師は原則として、その薬局以外の場所で薬事に関する実務に従事できないとされており、他の薬局や店舗で薬剤師として働く「掛け持ち型」の副業は基本的にできません。一方、執筆のように「薬事に関する実務」に当たらないと考えられる活動には個別判断の余地がありますが、勤務先の就業規則の確認と、迷う場合の行政への確認が前提です。本記事では、できないこと・判断の余地があることを、安全側の視点で整理します。
管理薬剤師の兼務制限とは?なぜ副業が制限されるのか
管理薬剤師は、医薬品の管理や従業員の監督など、その薬局の運営全体に責任を負う管理者です。だからこそ薬機法は、管理者が自分の薬局の管理業務に専念できるよう、原則として、その薬局以外の場所で薬事に関する実務に従事することを認めていません。例外的な取り扱いの余地がないわけではありませんが、その判断は行政が行うものであり、副業のために気軽に使える建て付けではないと考えておくのが安全です。
この制限の趣旨は、管理者が不在がちになれば医薬品の管理や従業員の監督が行き届かなくなり、最終的に患者さんの安全に影響しかねない、という点にあります。「本業の管理に穴を開けないこと」が制度の出発点だと理解しておくと、どのような活動が問題になりやすいかの感覚がつかめます。
一般の勤務薬剤師の副業が「就業規則しだい」であるのに対し、管理薬剤師には就業規則の前に法律のハードルが1段加わる、という二重構造で理解してください。この違いを知らないまま「同僚がやっているから自分も」と始めてしまうのが、もっとも危険なパターンです。
できないことの典型例:他の現場で「薬剤師として働く」副業
まず、原則としてできないと考えるべき典型例を整理します。共通点は、薬局以外の場所で「薬事に関する実務」に従事することです。
| 副業の例 | 可否の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 他の薬局での単発・スポット勤務 | 原則できない | 他薬局での調剤などの薬剤師業務が該当する |
| ドラッグストア等でのOTC医薬品の販売 | 原則できない | 医薬品の販売業務も薬事に関する実務に当たる |
| 他社での薬事関連業務(品質管理・許認可対応など) | 原則できない | 自分の薬局の管理業務への専念が求められる |
つまり、薬剤師免許を使って別の現場で働くタイプの副業は、管理薬剤師である間はほぼ選択肢から外れます。副業の入口としてよく紹介される単発・スポット勤務も同様です。「管理薬剤師の役職と引き換えに、副業の自由度を差し出している」と捉えると、キャリアの判断がしやすくなります。
なお、この制限がかかるのは管理薬剤師である期間です。管理者を交代した後や、管理者でない立場に変わった後は、一般の勤務薬剤師と同じく就業規則の範囲で副業を検討できます。「今は制約が強い時期」と割り切り、時間軸で考えるのが現実的です。
「薬事に関する実務」に当たらない活動——個別判断の余地
一方、記事の執筆・監修、勉強会の講師、専門知識の情報発信のように、調剤や医薬品の販売を伴わない活動については、薬事に関する実務に当たらないと考えられる余地があります。ただし、ここは「一律にOK」と断定できる領域ではありません。活動の内容や態様によって評価が変わりうるため、本記事では安全側に倒して、次の順番で確認してから始めることをおすすめします。
- 就業規則と雇用契約を確認する:副業規定・競業避止・届出の要否。法律以前に、無断副業は懲戒リスクになる
- 活動内容を説明できる状態にする:何を・どのくらいの頻度で・報酬の有無。曖昧なままでは職場も行政も判断できない
- 判断に迷う場合は都道府県の薬務課等に確認する:個別ケースの最終判断は行政に委ねる
同じ「書く」活動でも、報酬を受け取って継続的に行う場合と、学会発表や職能団体の活動のように本業の延長で行う場合とでは、周囲からの見え方が異なります。報酬の有無・頻度・相手方は、勤務先や行政に説明する際の重要な情報になるため、始める前に整理しておきましょう。
この順番が大切です。かりに法律上問題のない活動でも、就業規則違反であれば職場での信頼を失います。逆に就業規則で認められていても、薬機法上の整理が曖昧なままでは安心して続けられません。両方をクリアにしてから始めるのが、遠回りに見えて確実な道です。執筆・監修という仕事の中身は「薬剤師の執筆・監修という副業」で詳しく解説しています。
管理薬剤師の期間は「副業の準備期間」と考える
制約が強い時期だからこそ、視点を変えることを提案します。管理薬剤師として積む経験——医薬品の管理、スタッフの教育、行政対応、経営の数字との向き合い——は、将来の執筆・講師・コンサルティングの「商品」そのものです。今すぐ外で稼げなくても、売り物を作る期間と捉えれば、この時間の価値は変わります。
- 本業の中で成果物を作る(勉強会資料、業務改善の記録、新人教育の仕組みなど)
- 得意領域を言語化しておく(「管理×在宅」「管理×教育」のような掛け算で考える)
- 自宅で完結する副業の選択肢を研究しておく(「自宅でできる薬剤師の副業まとめ」)
とくに在宅医療に取り組む薬局の管理経験は、体制づくりや多職種連携の実例を語れるという点で希少です。管理者を退いた後や転職などキャリアの節目が来たとき、準備してきた人とそうでない人の差は大きく開きます。管理薬剤師の経験は市場でも評価されやすく、動ける時が来れば選択肢はむしろ広い立場です。
準備期間の過ごし方に迷ったら、「1年後に自分の名前で語れる実績を1つ作る」と決めるのがおすすめです。テーマは在庫管理の改善でも新人教育の仕組みづくりでも構いません。数字や手順で示せる成果は、そのまま将来の執筆・講師の題材になります。
副業が認められる場合の税金の基本
就業規則と法律面の整理がついて副業を行う場合、税金の基本ルールは他の薬剤師と同じです。執筆料などの給与所得以外の所得が年20万円を超えると、所得税の確定申告が必要というのが一般的なルールです。また、所得税の申告が不要な場合でも住民税の申告は別途必要とされる点など細かい論点もあるため、要否の最終判断や手続きは税務署・税理士に確認してください。副業の選択肢全体と注意点は「薬剤師の副業ガイド」で整理しています。
まとめ:断定せず、確認してから動く
管理薬剤師の副業は、「できる・できない」を自分で断定しないことが最大のリスク管理です。押さえるべきは3点。①他の現場で薬剤師として働く副業は原則できない、②執筆など薬事の実務に当たらない活動には個別判断の余地がある、③就業規則の確認→勤務先への相談→迷ったら都道府県の薬務課等への確認、の順で安全側に進める。この3点を守れば、管理薬剤師であることは「副業を諦める理由」ではなく、将来の選択肢を仕込む期間に変えられます。
最終更新日:2026年7月5日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

