在宅を伸ばすうえで、避けて通れないのが医師・診療所からの依頼獲得です。ケアマネや地域包括からの紹介も重要ですが、訪問薬剤管理の起点となる医師の指示を得られなければ在宅は始まりません。しかし多くの薬局が「どう診療所を回ればいいのかわからない」「何を話せば信頼されるのか掴めない」と悩みます。本記事では、在宅の依頼を医師から得るための診療所開拓を、準備・アプローチ・関係構築の順に、実践的に解説します。
結論として、医師開拓の要諦は「売り込み」ではなく「医師の困りごとを薬で解けると示すこと」です。ポリファーマシー、残薬、服薬アドヒアランス——医師が手を焼く領域で、薬剤師が具体的に役立つと伝われば、依頼は自然に生まれます。
- 訪問薬剤管理は医師の指示が起点。診療所開拓は「売り込み」ではなく「医師の困りごとを薬で解ける」と示すのが要諦。
- 医師が在宅の薬剤師に期待するのは、訪問での服薬管理・処方の質を上げる情報提供・手間の削減の3点。
- 準備→アプローチ→関係構築の順に、診療所開拓の実践ステップを解説。
医師が在宅の薬剤師に期待していること
開拓の前に、相手が何を求めているかを理解します。医師が在宅で薬剤師に期待するのは、主に次の3点です。
- 訪問先での服薬管理:残薬・飲み間違い・アドヒアランスを訪問して整える
- 処方の質を上げる情報提供:ポリファーマシー・相互作用・副作用の兆候を報告する
- 手間を減らすこと:医師が把握しきれない在宅の服薬状況を代わりに見て、要点だけ報告する
裏を返せば、これらを「できます」と口で言うだけでは弱く、具体的な提案やレポートで示すと一気に信頼されます。医師に伝わる提案の書き方はトレーシングレポートの書き方を参考にしてください。
診療所開拓の準備|回る前に整えるもの
準備なしに飛び込んでも、名刺交換で終わります。以下を整えてから訪問します。
| 準備物 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 薬局の在宅対応一覧 | 無菌調剤・麻薬・24時間対応・多職種連携の可否 | 「何ができる薬局か」を一目で伝える |
| 連携フロー資料 | 依頼から初回訪問・報告までの流れ | 医師の手間が増えないことを示す |
| 報告書サンプル | トレーシングレポート・訪問報告の見本 | 報告の質と頻度をイメージさせる |
| 対応エリア地図 | 訪問可能な範囲 | 「その患者さん、対応できます」を即答するため |
特に効くのが「連携フロー資料」です。医師の心配は「在宅を頼むと自分の仕事が増えるのでは」という点にあります。依頼後は薬局が主体的に動き、要点だけ報告する——この流れを見せると安心されます。在宅を始める体制づくり全体は薬局が在宅訪問を始めるにはで解説しています。
アプローチの実践|誰にどう話すか
診療所は医師だけでなく、看護師・事務長・地域連携の担当が窓口になることもあります。段階を踏んで関係を作ります。
- 入口:まず事務・看護スタッフに挨拶し、在宅対応薬局として認知してもらう
- きっかけ作り:既存患者の疑義照会・情報提供を丁寧に行い、仕事ぶりで信頼を得る
- 提案:残薬や多剤併用が気になる患者について、訪問管理の提案を具体的に持ちかける
- 定着:依頼後は報告を欠かさず、次の依頼につなげる
いきなり「在宅ください」と頼むより、日常業務の質で信頼を積み、自然に在宅の話につなげるのが王道です。医師とのカンファレンスで処方に薬剤師の視点を反映させた事例は在宅医とのカンファレンス実践例が参考になります。
関係を継続させる報告と連携
一度依頼を得ても、報告が雑だと次は来ません。医師との関係を継続させる要は「報告の質と頻度」です。
| 場面 | 報告のポイント | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 初回訪問後 | 状態・残薬・生活環境の要点を簡潔に | 長文で要点が埋もれる報告 |
| 変化があったとき | 副作用の兆候・アドヒアランス低下を早めに | 次回定期報告まで抱え込む |
| 処方提案 | 根拠と代替案をセットで提示 | 否定だけで代替案がない指摘 |
医師は多忙です。「短く・要点・代替案つき」の報告を徹底すると、「この薬局は任せられる」と評価が定着します。ケアマネ・地域包括・病院まで含めた依頼獲得の全体像は在宅の依頼を増やす薬局の営業完全ガイドにまとめています。
断られたときの受け止め方と次の一手
診療所開拓では、断られることのほうが多いのが現実です。ここで落ち込んで足が止まると、開拓は続きません。「断り」は終わりではなく、次につながる情報だと捉え直しましょう。
- 「今は必要ない」=将来もない、ではない:患者の状態が変われば依頼は生まれる。定期的に顔を出す
- 断りの理由をそっと聞く:既に別の薬局と連携/在宅患者がいない等、理由で次の一手が変わる
- すぐ売り込まず関係を残す:情報提供や挨拶を続け、想起される薬局であり続ける
- 1回の訪問で決めようとしない:開拓は積み重ね。回数と誠実さが信頼を作る
大切なのは、断られても関係を切らないことです。「困ったときに思い出してもらえる薬局」でいられれば、タイミングが来たときに依頼は自然に舞い込みます。
ケアマネ・地域包括と合わせて面で開拓する
在宅の依頼は医師の指示が起点になりますが、患者を掘り起こすのはケアマネや地域包括支援センターであることも多いです。医師だけを追うのではなく、関係機関を「面」で開拓すると、依頼の入口が増えます。
| 開拓先 | 担っている役割 | アプローチの要点 |
|---|---|---|
| 診療所・医師 | 訪問薬剤管理の指示を出す起点 | 処方の困りごとを薬で解けると示す |
| ケアマネジャー | 患者の生活課題を把握しケアプランを作る | 服薬の困りごとを拾い、訪問を提案する |
| 地域包括支援センター | 地域の相談を幅広く受ける窓口 | 在宅対応薬局として認知してもらう |
| 病院の地域連携室 | 退院患者を地域へつなぐ | 退院時カンファレンスに参加し引き継ぐ |
ケアマネから信頼される具体的な動き方はケアマネとの連携術で詳しく解説しています。医師・ケアマネ・地域包括が互いにつながっているため、一つの機関で信頼を得ると、そこから紹介が広がるのが在宅開拓の面白さです。
開拓の成果を数字で管理する
営業を「気合と根性」で終わらせないために、開拓活動を数字で管理しましょう。訪問数・依頼数・継続率を可視化すると、どこにテコ入れすべきかが見えます。
- 訪問した機関数:活動量が足りているかの基本指標
- 依頼につながった件数・率:アプローチの質を測る
- 依頼元別の内訳:医師/ケアマネ/病院のどこが効いているか
- 依頼後の継続率:報告の質が保たれ関係が続いているか
数字で管理すると、感覚に頼らず改善できます。追うべき指標の設計は在宅薬局のKPI設計が参考になります。開拓は一度きりではなく、「量×質×継続」を回し続ける仕組みにすることで、安定した依頼の流れが生まれます。
依頼を受けたあと信頼を落とさない受け入れ体制
せっかく医師から依頼を得ても、最初の対応がもたつくと「頼んで損した」と思われ、次の依頼が途絶えます。開拓と同じくらい、受けたあとの初動が大切です。依頼から初回訪問までをスムーズに回す体制を、あらかじめ整えておきましょう。
- 依頼受付の窓口を一本化する:誰が受けても同じ流れで動けるようにする
- 初回訪問までのリードタイムを短くする:依頼から日を空けすぎない
- 初回で全体像を把握する:残薬・生活環境・介護者・多職種の状況を丁寧に確認する
- 初回報告を早めに返す:「ちゃんと動いている」と医師に安心してもらう
特に病院からの退院直後の依頼は、移行期のリスクが高く、初動の丁寧さが患者の安全に直結します。退院から在宅への引き継ぎの実務は病院から在宅への移行期を支える薬局の実務ガイドで詳しく解説しています。「依頼して良かった」と思ってもらえる初動が、次の依頼を呼ぶ最良の営業になります。
開拓と受け入れは、車の両輪です。いくら開拓しても受け入れがもたつけば信頼を失い、受け入れ体制が整っていても開拓しなければ依頼は増えません。「取りに行く力」と「受け止める力」を同時に育てることが、在宅を安定して伸ばす薬局の共通点です。まずは一つの診療所と深い信頼関係を築き、その成功体験を横に広げていきましょう。
よくある質問(FAQ)
飛び込みで診療所を訪問しても大丈夫ですか?
挨拶程度なら問題ありませんが、いきなり在宅依頼を求めるのは逆効果です。まず事務・看護スタッフに認知してもらい、日常業務の質で信頼を積んでから提案するのが効果的です。
医師に何を話せば信頼されますか?
「売り込み」より「医師の困りごとを薬で解ける」ことを示すのが有効です。残薬・多剤併用・アドヒアランスなど、医師が手を焼く領域で具体的に役立つと伝えると信頼されます。
報告はどのくらいの頻度で行うべきですか?
定期報告に加え、副作用の兆候やアドヒアランス低下など変化があれば早めに報告します。「短く・要点・代替案つき」を徹底すると、多忙な医師に評価されます。
医師以外に誰を開拓すればいいですか?
ケアマネ・地域包括支援センター・病院の地域連携室も重要な依頼元です。医師の指示が起点になる一方、患者の掘り起こしは多職種から入ることも多いです。
最終更新日:2026年7月9日
本記事は厚生労働省の告示・通知や公的資料を確認のうえ作成しています。最新の算定要件・点数は各年度の改定内容と原典で必ずご確認ください。

