在宅薬剤師の年収・給与相場|働き方別の比較データ

「在宅薬剤師の年収は高いのか?」——これは転職を検討する薬剤師から最もよく聞かれる質問のひとつです。

結論から言えば、在宅薬剤師の年収は一般的な調剤薬局勤務と比較して同等〜やや高めです。ただし、年収の差は「在宅業務をしているかどうか」よりも、「どの薬局で、どのポジションで働いているか」によって決まる部分が大きいのが実態です。

本記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査、求人サイトの公開データ、転職エージェントへの取材をもとに、在宅薬剤師の年収相場を働き方・地域・経験年数別に整理しました。


目次

薬剤師全体の年収データ

まず、在宅に限らず薬剤師全体の年収データを確認しましょう。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2023年)

項目数値
薬剤師の平均年収約583万円
平均年齢41.1歳
平均勤続年数8.3年
男性薬剤師の平均年収約620万円
女性薬剤師の平均年収約560万円

薬剤師の年収は全職種の平均(約458万円)より100万円以上高いですが、医師(約1,400万円)や歯科医師(約800万円)と比較すると、医療専門職の中ではやや低めのポジションにあります。

年齢別の年収推移

年齢平均年収(目安)
25〜29歳400〜480万円
30〜34歳450〜550万円
35〜39歳500〜600万円
40〜44歳550〜650万円
45〜49歳600〜700万円
50歳以上600〜750万円

薬剤師の年収は40代前半までは着実に上がりますが、40代後半以降は伸びが鈍化する傾向があります。これは役職の有無や勤務先の規模によって差が開く時期でもあります。


在宅薬剤師の年収相場

勤務形態別の年収レンジ

年収比較

在宅薬剤師の年収は、勤務形態や地域、経験年数によって幅がありますが、大まかな相場は以下の通りです。

勤務形態年収レンジ一般調剤との差
調剤薬局(在宅あり)勤務450〜600万円±0〜+30万円
在宅専門薬局 勤務480〜650万円+30〜+50万円
管理薬剤師(在宅あり)550〜750万円+50〜+100万円
在宅特化・薬局長クラス600〜800万円+100〜+200万円
独立開業(在宅薬局)800万円〜経営次第

なぜ在宅薬剤師の年収はやや高いのか

在宅業務を行っているからといって、必ずしも年収が大幅に上がるわけではありません。ただし、以下の理由から在宅薬剤師の求人は比較的高めに設定される傾向があります。

  • 在宅対応できる薬剤師が不足しているため、求人の競争力を高める必要がある
  • 在宅手当訪問手当を別途支給する薬局が多い(月1〜5万円)
  • 管理薬剤師のポジションに就きやすく、管理者手当が加算される
  • 在宅業務の経験自体が市場価値を上げる——転職時の交渉力が強い
  • 24時間対応手当など、夜間・休日の待機に対する手当が支給される場合がある

働き方別の年収詳細

パターン1:調剤薬局(在宅業務あり)の薬剤師

最も一般的なパターンです。店舗での調剤業務がメインで、1日1〜3件の在宅訪問を行います。

項目目安
基本年収450〜550万円
在宅手当月1〜3万円(薬局により異なる)
訪問1件あたりのインセンティブ500〜2,000円(制度がある薬局)
実質年収(手当込み)470〜600万円

在宅手当の有無は薬局によって大きく異なります。求人情報で「在宅手当あり」と明記されていない場合でも、交渉次第で追加されるケースもあるため、面接時に確認することをおすすめします。

パターン2:在宅専門薬局の薬剤師

処方箋の大部分が在宅患者であり、日中は訪問業務がメインとなります。

項目目安
基本年収480〜600万円
訪問件数1日5〜10件
求められるスキル多職種連携、フィジカルアセスメント、無菌調剤
キャリアパス在宅専門のマネージャー、エリア統括へ

在宅専門薬局は訪問効率が収益を左右するため、ルート設計能力コミュニケーション力が重視されます。1日の訪問件数を増やせる薬剤師は高い評価を受けます。

パターン3:管理薬剤師(在宅あり)

管理薬剤師として店舗の管理責任を持ちながら、在宅業務も行うポジションです。

項目目安
基本年収550〜700万円
管理者手当月3〜8万円(年間36〜96万円のインパクト)
求人の傾向中小薬局で多い。即戦力を求む
年収上限経験10年以上で700〜750万円も

中小薬局では管理薬剤師と在宅担当を兼務するケースが多く、「在宅もできる管理薬剤師」は最も需要の高い人材像です。

パターン4:独立開業(在宅薬局経営者)

自ら薬局を開業し、在宅メインで運営するケースです。

項目目安
オーナー年収800万円〜(経営状況による)
売上の目安在宅30名で月250〜350万円
初期投資2,000〜4,000万円程度
開業から黒字化1〜2年
リスク経営リスクを負う。採用・集患が課題

在宅薬局は門前薬局と比べて立地に依存しないため、家賃を抑えた開業が可能です。マンションの一室やテナントの2階以上で開業するケースも増えています。在宅患者30名で年間売上3,000〜4,200万円、経費を差し引いたオーナー年収は800〜1,200万円が目安です。


地域による年収差

エリア別の傾向

地域マップ
地域年収傾向理由
東京23区やや低め(450〜550万円)薬剤師の供給が多い。競争激しい
東京郊外・埼玉・千葉標準〜やや高め(480〜620万円)在宅需要が高く、人材不足
都市部(大阪・名古屋・福岡)標準(450〜600万円)競争は激しいが需要もある
地方都市(仙台・広島・新潟など)やや高め(500〜650万円)人材不足。在宅ニーズの高まり
過疎地域(北海道・東北・離島)高め(550〜700万円+住宅手当)薬剤師不足が深刻。手厚い手当

地方では年収が100万円以上高くなるケースもありますが、以下の点も考慮する必要があります。

  • 訪問エリアが広い:1件の訪問に車で30分〜1時間かかることも
  • 24時間対応の負担:代替人員が少ないため、当直回数が多い
  • 生活環境:教育・娯楽・医療アクセスなどの生活の質

都市部 vs 地方の実質年収比較

項目東京23区地方(例:東北)
額面年収500万円600万円
家賃(月額)12万円5万円
通勤手段電車(定期代支給)車(ガソリン代・車両維持費)
年間住居費144万円60万円
実質可処分ほぼ同等やや有利

額面年収だけでなく、住居費・交通費・生活コストを含めた実質年収で比較することが重要です。


年収を上げるためにできること

1. 在宅の専門資格を取得する

在宅関連の認定・専門資格を持つ薬剤師は、転職市場での評価が+30〜50万円高くなる傾向があります。

資格名認定団体取得難易度年収への効果
在宅療養支援認定薬剤師日本在宅薬学会★★★+20〜40万円
緩和薬物療法認定薬剤師日本緩和医療薬学会★★★★+30〜50万円
認定実務実習指導薬剤師薬学教育協議会★★+10〜20万円
プライマリ・ケア認定薬剤師日本プライマリ・ケア連合学会★★★+20〜30万円
無菌調剤処理の技術各種研修★★+10〜30万円

特に緩和ケア無菌調剤のスキルは、がん患者の在宅対応で必須であり、持っている薬剤師が少ないため希少価値が高いです。

2. 管理薬剤師のポジションを狙う

管理者手当は月3〜8万円(年間36〜96万円)のインパクトがあります。在宅業務の経験が豊富であれば、管理薬剤師への昇格は比較的早いケースが多いです。

特に中小薬局では、在宅経験3〜5年で管理薬剤師に昇格するケースも珍しくありません。

3. 在宅に力を入れている薬局を選ぶ

在宅患者の多い薬局は収益性が比較的高く、その分、給与にも反映されやすい傾向があります。求人を見る際のチェックポイントは以下の通りです。

チェックポイント良い兆候
在宅患者数20名以上(在宅に本格的)
在宅手当月1万円以上が明記
24時間対応体制チームで分担(一人に集中しない)
訪問車両社用車あり
無菌調剤室設備がある(高度な在宅対応可能)

4. 独立・開業を視野に入れる

在宅薬局は少ない初期投資で開業可能な分野です。門前薬局のように好立地のテナントを確保する必要がなく、住宅街の一角でも開業できます。

在宅薬局開業の年収シミュレーション(3年目):

項目金額
在宅患者数35名
月間売上約350万円
年間売上約4,200万円
薬剤費+経費約3,000万円
オーナー年収約1,200万円

まとめ

  • 在宅薬剤師の年収相場は450〜650万円。管理薬剤師では550〜750万円
  • 在宅手当・訪問インセンティブがある薬局を選ぶことで年間20〜60万円の上乗せが可能
  • 地方は人材不足により年収が高い傾向。ただし実質年収で比較することが重要
  • 専門資格の取得管理薬剤師への昇格が年収アップの王道ルート
  • 在宅薬局の独立開業は、リスクがある分リターンも大きい(年収800万円〜)

自分のキャリアステージと目指す働き方に合わせて、最適な選択肢を検討してみてください。在宅ファーマでは、在宅薬剤師の転職やキャリアについても、今後の記事で詳しく取り上げていきます。


この記事は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、求人サイト・転職エージェントの公開データおよび業界調査に基づいて作成しています。個別の年収は勤務先・経験・地域によって異なります。


参考リンク


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この記事を書いた人

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