在宅薬剤師の1日の流れ|訪問スケジュールと業務のリアル

在宅薬剤師の1日のスケジュール

「在宅薬剤師って、実際には毎日何をしているの?」

調剤薬局で働いている薬剤師にとって、在宅業務は想像しにくい世界かもしれません。処方箋を受け取って調剤する店舗業務とは違い、在宅では患者さんの自宅に伺い、生活の中で薬と向き合います。そこには店舗では見えなかった発見もあれば、予想外のトラブルもあります。

本記事では、在宅薬剤師の1日を朝から晩まで時系列で追いかけながら、各場面でどんな判断をし、何に気を配っているのかをリアルにお伝えします。


目次

朝の準備(8:00〜9:00)

出勤したらまず、今日の訪問リストの確認から始まります。前日に調剤・セットしておいた薬剤を再チェックし、お薬カレンダーやお薬手帳のシールなど必要なアイテムを訪問バッグに詰めます。

この時間帯で大切なのは、前回の訪問記録を読み返すことです。「前回、Aさんは食欲が落ちていた」「Bさんは降圧薬でふらつきがあった」——こうした情報を頭に入れてから訪問するのとしないのとでは、患者さんとの会話の深さがまったく変わります。

時間やること
8:00出勤、訪問リスト確認
8:15前回の訪問記録・申し送り確認
8:30調剤済みの薬剤を最終チェック
8:45訪問バッグの準備、ルート確認

午前の訪問(9:00〜12:00)

午前中は個人宅を2〜3件訪問するのが一般的です。1件あたりの滞在時間は20〜40分程度ですが、初回訪問の場合は1時間近くかかることもあります。

訪問でやること

訪問先では、ただ薬を届けるだけではありません。まずは患者さんの様子を観察します。顔色、声のトーン、歩き方、部屋の状態——これらすべてが情報です。

次に、残薬の確認を行います。前回渡した薬がどのくらい残っているかを数えることで、飲み忘れの頻度が正確に把握できます。残薬が多い場合は、その理由を一緒に考えます。「朝は忙しくて忘れる」なら服用タイミングの変更を提案し、「薬が大きくて飲みにくい」なら剤形変更を医師に提案します。

バイタルサインの測定も重要な業務です。血圧、脈拍、SpO2などを測定し、前回の値と比較します。降圧薬を服用している患者さんの血圧が急に下がっていれば、それは副作用の可能性を示す重要なサインです。

午前の訪問スケジュール例

時間訪問先内容
9:00〜9:40Aさん宅(85歳・女性)定期訪問。降圧薬+糖尿病薬。残薬確認、血圧測定
10:00〜10:30Bさん宅(78歳・男性)定期訪問。パーキンソン病。薬の飲み忘れ対策の相談
11:00〜11:40Cさん宅(92歳・女性)初回訪問。退院後の在宅移行。家族への薬の説明

訪問と訪問の間の移動時間は、地域によって10〜30分程度。この移動時間を使って、音声メモで訪問記録の下書きを残しておくと、後の薬歴記入が格段に楽になります。


昼休み・薬局業務(12:00〜13:30)

薬局に戻ったら、午前中の訪問記録を薬歴に記入します。記憶が新しいうちに書くのがポイントで、患者さんの発言や表情の変化など、数値には表れない情報も残します。

昼食の前後で、医師やケアマネージャーへの報告書を作成することもあります。特に処方変更を提案したい場合は、トレーシングレポートを書いて医師にFAXまたはメールで送ります。

また、この時間帯に店舗業務のヘルプに入ることもあります。在宅薬剤師は「店舗半分・在宅半分」という働き方が多く、完全に分離されているケースはまだ少数派です。


午後の訪問(13:30〜16:30)

午後は施設への訪問が入ることが多いです。個人宅と違い、施設では一度に5〜10名の患者さんを対応するため、効率は上がりますが、1人ひとりに向き合える時間は短くなります。

施設訪問の流れ

施設に到着したら、まず看護師さんやケアスタッフに最近の変化を聞きます。「Dさんが最近むせることが多い」という情報があれば、粉砕や簡易懸濁法への変更を検討します。

その後、各入居者のお薬ボックスをチェックし、残薬があれば理由を確認。看護師さんと一緒に、次回の配薬スケジュールを調整します。

施設訪問では、個人宅ほどじっくり話す時間は取れませんが、そのぶんスタッフとの連携が重要になります。「この患者さんの薬は食前に変更になりましたので、配薬のタイミングをお願いします」といった具体的な申し送りを、口頭とメモの両方で確実に伝えます。

時間内容
13:30施設到着、看護師との情報共有
14:00〜15:30入居者8名の薬剤管理指導
15:30施設スタッフへの申し送り
16:00薬局へ帰還

夕方の事務作業(16:30〜18:00)

薬局に戻ってからが、実は一番地味だけど大切な時間です。

まず、午後の訪問記録を薬歴に記入します。施設の場合は患者数が多いので、フォーマットを統一しておくと効率的です。

その後、明日の訪問準備に入ります。処方箋の受付、調剤、一包化、お薬カレンダーのセット。翌日の訪問ルートも、グーグルマップなどで最適化しておきます。

さらに、多職種への連絡も この時間帯にまとめて行います。ケアマネへの月次報告書、訪問看護ステーションへの情報提供書、そして必要に応じて医師へのトレーシングレポート。これらの書類作成は地味ですが、他職種から「あの薬局は報告がしっかりしている」と信頼されるかどうかの分かれ目です。


24時間対応について

在宅薬局では、24時間の連絡体制が求められます。夜間・休日の対応方法は薬局によって異なりますが、一般的には以下のパターンです。

当番制で携帯電話を持ち、緊急の連絡に備えます。実際に夜間に呼ばれる頻度は月に1〜3回程度で、内容は「麻薬の追加が必要」「症状が急変して薬の確認をしたい」などが多いです。

正直なところ、24時間対応は体力的にも精神的にも負担があります。しかし、終末期の患者さんが深夜に痛みで苦しんでいるとき、薬剤師が対応して鎮痛薬を届けられる——この経験は、在宅薬剤師にしかできない仕事の一つです。

対応例頻度内容
麻薬の緊急配達月1〜2回がん患者の急な疼痛増悪
症状変化の相談月1〜2回家族からの服薬に関する問い合わせ
看取り対応数ヶ月に1回終末期の最後の対応

在宅と店舗の1日比較

項目店舗薬剤師在宅薬剤師
業務開始処方箋を待つ自分で訪問計画を立てる
患者との接点投薬カウンター(3〜5分)自宅や施設(20〜40分)
移動ほぼなし1日30〜60km
昼休み比較的自由記録作成に充てることも
判断の幅処方箋の範囲内生活環境も含めた総合判断
退勤後基本的にオフ24時間対応の当番がある

まとめ

在宅薬剤師の1日は、店舗薬剤師とはまったく異なるリズムで動きます。朝の準備から始まり、個人宅や施設を訪問し、夕方は書類作成と翌日の準備。そして月に数回は夜間対応もあります。

大変な面も正直に書きましたが、患者さんの自宅に伺い、生活の中で薬が本当に役立っている瞬間を見られるのは、この仕事ならではの醍醐味です。「先生が来てくれるから安心」と言われたとき、この仕事を選んでよかったと心から感じます。


この記事は筆者の在宅薬剤師としての実務経験に基づいて作成しています。


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この記事を書いた人

薬剤師マルのアバター 薬剤師マル 在宅ファーマ編集長
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