居宅療養管理指導は、在宅薬局の収益の根幹をなす報酬です。算定要件は改定のたびに変更されるため、正確に把握しておく必要があります。
「算定漏れ」や「返戻」を防ぐためにも、最新の算定要件を体系的に理解しておくことが重要です。本記事では、薬剤師による居宅療養管理指導の算定要件を2024年度改定に対応した形で整理しました。
日々の実務で迷ったときに立ち返れるリファレンスとしてご活用ください。
居宅療養管理指導とは
基本の定義
居宅療養管理指導は、介護保険に基づくサービスです。通院が困難な要介護・要支援の患者に対して、薬剤師が居宅を訪問し、薬学的管理指導を行った場合に算定します。
在宅薬局にとっては、訪問1件ごとに算定できる主力の報酬であり、在宅業務の収益性を左右する最も重要な算定項目です。
医療保険との違い
同じ「在宅での訪問薬剤管理指導」でも、患者の状態によって使う保険が異なります。
| 項目 | 居宅療養管理指導(介護保険) | 在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 介護保険法 | 健康保険法 |
| 対象者 | 要介護・要支援認定者 | 通院困難な患者(介護認定なし) |
| 算定回数 | 月4回まで | 月4回まで |
| 給付管理 | ケアプランへの位置づけが必要 | 医師の指示が必要 |
| 優先関係 | 介護認定ありの場合はこちらを優先 | 介護認定なしの場合に算定 |
| 利用者負担 | 1〜3割(介護保険の自己負担割合) | 1〜3割(医療保険の自己負担割合) |
| 区分支給限度基準額 | 対象外(ケアプランの枠外) | — |
ポイント: 要介護認定を受けている患者には、原則として介護保険の居宅療養管理指導を算定します。居宅療養管理指導は区分支給限度基準額の対象外であるため、他のサービスの利用枠を圧迫しません。
算定のフロー全体像

薬剤師が居宅療養管理指導を算定するまでの流れは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | 関係者 |
|---|---|---|
| ①医師の指示 | 処方箋交付 or 訪問指示書 | 医師 |
| ②ケアプランへの位置づけ | ケアマネに情報提供し、ケアプランに組み込む | ケアマネジャー |
| ③訪問実施 | 居宅を訪問し、薬学的管理指導を行う | 薬剤師 |
| ④記録作成 | 薬歴に訪問日時・指導内容・患者の状態を記録 | 薬剤師 |
| ⑤報告書作成・送付 | 処方医に訪問結果を報告 | 薬剤師→医師 |
| ⑥ケアマネへの報告 | 毎月の訪問実績・服薬状況等を報告 | 薬剤師→ケアマネ |
| ⑦レセプト請求 | 介護保険で請求 | 薬局事務 |
算定要件(4つの柱)
1. 医師の指示
薬剤師による居宅療養管理指導を行うには、医師または歯科医師の指示が必要です。
| 指示の形態 | 説明 |
|---|---|
| 処方箋の交付 | 処方箋の発行をもって指示とすることが可能 |
| 訪問指示書 | 別途書面で指示を出すケースもある |
| 口頭指示 | 緊急時は可能だが、事後に書面化が望ましい |
訪問の必要性について医師と事前に確認しておくことが望ましいです。特に新規患者の場合は、医師に「在宅訪問が必要な患者である」ことを確認する一手間が返戻防止につながります。
2. 訪問の実施と薬学的管理指導
薬剤師が患者の居宅を訪問し、以下の業務を行います:
- 薬歴管理:服用薬・副作用歴・アレルギー歴の把握
- 服薬指導:薬の効果・副作用・飲み合わせの説明
- 服薬状況の確認:残薬チェック、コンプライアンスの把握
- 薬学的管理:処方提案、剤形変更提案、減薬提案
- バイタルサイン確認:血圧、脈拍、体温等の確認(必要に応じて)
- 生活環境の確認:保管状況、一包化の要否、服用補助具の提案
重要: 「薬を届けただけ」では算定できません。薬学的管理指導の実施が必須要件です。
3. ケアプランへの位置づけ
居宅療養管理指導は、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけられる必要があります。
| タイミング | 対応 |
|---|---|
| 新規開始時 | ケアマネに「居宅療養管理指導を開始する」旨を連絡 |
| 毎月 | 訪問実績・服薬状況をケアマネに報告 |
| 状態変化時 | 服薬状況の変化・処方変更等をケアマネに共有 |
| サービス担当者会議 | できるだけ参加する(対面 or 書面) |
4. 報告書の作成と送付
訪問後、医師に対して訪問結果の報告を行う必要があります。
| 報告内容 | 記載事項 |
|---|---|
| 服薬状況 | 残薬の有無、飲み忘れの頻度 |
| 副作用の有無 | 患者の訴え、バイタルの変化 |
| 処方提案 | 剤形変更、用法の見直し、減薬提案 |
| 患者の全体状態 | ADL、認知機能、食事・水分摂取量 |
| 次回訪問予定 | 次回訪問の目安 |
報告手段はFAX、メール、トレーシングレポートなど。電子薬歴システムから自動出力する仕組みを作ると効率化できます。
報酬単位数(2024年度改定対応)
薬剤師が行う場合の単位数
| 区分 | 単一建物居住者1人 | 同2〜9人 | 同10人以上 |
|---|---|---|---|
| 薬局の薬剤師 | 517単位 | 378単位 | 341単位 |
| 病院・診療所の薬剤師 | 565単位 | 416単位 | 379単位 |
※ 1単位 = 10円(地域区分による加算あり。東京23区は1単位=11.40円)
地域区分による加算
| 地域区分 | 1単位の単価 | 代表的な地域 |
|---|---|---|
| 1級地 | 11.40円 | 東京23区 |
| 2級地 | 11.12円 | 横浜市、大阪市 |
| 3級地 | 11.05円 | 名古屋市、さいたま市 |
| 4級地 | 10.84円 | 札幌市、仙台市 |
| その他 | 10.00円 | 上記以外 |
算定回数の上限
| 疾患 | 月の算定回数上限 |
|---|---|
| 通常 | 月4回まで |
| がん末期・中心静脈栄養 | 月8回まで(週2回かつ月8回) |
収益シミュレーション
在宅患者数に応じた居宅療養管理指導の月間収益目安:
| 在宅患者数 | 訪問回数/月 | 月間収益(概算) | 年間収益 |
|---|---|---|---|
| 10名(個人宅中心) | 40回 | 約20万円 | 約240万円 |
| 20名(個人宅+施設) | 60回 | 約28万円 | 約336万円 |
| 30名(施設中心) | 80回 | 約30万円 | 約360万円 |
| 50名(個人宅+施設混合) | 120回 | 約50万円 | 約600万円 |
施設在宅は効率が良い反面、1人あたりの単価が下がります。個人宅と施設のバランスを取ることが重要です。
算定できないケース
以下の場合は算定できません。返戻リスクを避けるためにも確認しておきましょう。
| ケース | 理由 | 対処法 |
|---|---|---|
| 通院が可能な患者 | 「通院困難」が要件 | 医師の意見書で通院困難を確認 |
| 医師の指示がない | 指示が必須 | 処方箋 or 指示書を確認 |
| 単なる薬の配達のみ | 薬学的管理指導の実施が必要 | 指導記録を必ず残す |
| 介護認定を受けていない患者に介護保険で算定 | 医療保険で算定する | 保険の種類を確認 |
| 同一月に医療保険と介護保険を併算定 | 併算定不可 | どちらか一方を選択 |
| ケアマネへの情報提供を行っていない | 算定要件 | 毎月の報告を忘れずに |
オンライン服薬指導との関係
2022年の法改正以降、オンライン服薬指導でも居宅療養管理指導の算定が可能になっています。
| 項目 | 対面 | オンライン |
|---|---|---|
| 算定 | 通常通り | 可能(一定の要件あり) |
| 単位数 | 通常 | 対面と同一 |
| 要件 | 居宅への訪問 | 映像・音声による薬学的管理指導 |
| 初回 | — | 原則対面で実施 |
| 通信環境 | — | 患者側の環境確認が必要 |
| 算定上限 | 月4回 | 対面と合わせて月4回 |
オンライン服薬指導は、遠方の患者や感染症流行時に有効ですが、初回は対面で信頼関係を構築し、2回目以降にオンラインに移行するのが望ましいです。
施設在宅の算定のポイント
施設の種類と算定の可否

| 施設種別 | 居宅療養管理指導 | 理由 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | ○ 算定可 | 居宅扱い |
| 有料老人ホーム | ○ 算定可 | 居宅扱い |
| グループホーム | ○ 算定可 | 居宅扱い |
| サービス付き高齢者住宅 | ○ 算定可 | 居宅扱い |
| 小規模多機能型居宅介護 | ○ 算定可 | 居宅扱い |
| 介護老人保健施設 | × 算定不可 | 施設の薬剤師が管理 |
| 介護医療院 | × 算定不可 | 施設の薬剤師が管理 |
「単一建物居住者」の数え方
施設在宅では「同一月に同一建物に居住する利用者のうち、当該薬局が訪問した人数」で区分が決まります。
| 人数 | 単位数 | 金額(1単位=10円) |
|---|---|---|
| 1人 | 517単位 | 5,170円 |
| 2〜9人 | 378単位 | 3,780円 |
| 10人以上 | 341単位 | 3,410円 |
施設在宅では10名以上を一度に訪問することが多いため、1件あたりの単価は下がりますが、移動時間が短縮されるため時間あたりの効率は高くなります。
施設在宅の経営ポイント
| ポイント | 説明 |
|---|---|
| 効率 | 1施設で10名以上を1回の訪問で対応可能 |
| 単価 | 個人宅(517単位)の約66%(341単位) |
| 時間効率 | 1名あたりの所要時間は個人宅の半分以下 |
| 安定性 | 長期的な取引になりやすい |
| リスク | 施設との契約解除で一度に大量の患者を失うリスク |
実務上のチェックリスト
毎日の業務で確認すべきこと
- □ 訪問前に処方箋(=医師の指示)を確認したか
- □ 薬学的管理指導を実施し、記録を残したか
- □ 患者の服薬状況・残薬・副作用を確認したか
- □ 薬歴に訪問日時・指導内容・患者の状態を記録したか
毎月の業務で確認すべきこと
- □ ケアマネへの月次報告を送付したか
- □ 医師への報告書を作成・送付したか
- □ 算定回数が上限(月4回)を超えていないか
- □ 介護保険と医療保険の使い分けは正しいか
新規患者の受入時
- □ 要介護認定の有無を確認したか
- □ ケアマネに連絡してケアプランに位置づけたか
- □ 医師の指示を確認したか
- □ 初回訪問で十分な薬学的管理指導を行ったか
まとめ
- 居宅療養管理指導は介護保険のサービス。要介護認定者に対して算定する
- 算定の4つの柱:医師の指示、訪問実施、ケアプランへの位置づけ、報告書作成
- 薬局の薬剤師の単位数は1人517単位、2〜9人378単位、10人以上341単位
- オンライン服薬指導でも算定可能(初回は原則対面)
- 施設在宅は効率が良いが単価が下がるため、個人宅とのバランスが重要
- 返戻を防ぐためにも、毎日・毎月のチェックリストで確認を習慣化する
この記事は介護保険法および関連告示・通知に基づいて作成しています。最新の算定要件は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

