処方箋1枚あたりの営業利益は、1枚あたりの売上から薬剤原価と配賦した人件費・その他経費を引いて計算します。全国平均の処方箋単価だけでは、自局の利益はわかりません。本記事は利益の計算方法を解説します。売上単価の平均と内訳は、処方箋単価の平均と薬剤料・技術料の違いで確認できます。
処方箋1枚あたりの売上構造を分解する

処方箋単価の全国平均
厚生労働省の令和6年度「調剤医療費(電算処理分)の動向」表2-2では、処方箋1枚当たりの調剤医療費は9,372円です。これは薬剤料等を含む医療費であり、薬局の営業利益を示す数字ではありません。厚生労働省:令和6年度 調剤医療費(電算処理分)の動向、表2-2(冊子2ページ)。
この内訳は以下の通りです。
| 項目 | 1枚当たり(令和6年度・電算処理分) | 構成比 |
|---|---|---|
| 薬剤料 | 6,760円 | 72.1% |
| 技術料 | 2,594円 | 27.7% |
| 特定保険医療材料料 | 18円 | 0.2% |
| 合計 | 9,372円 | 100.0% |
処方箋単価そのものの平均値(薬剤料込み・技術料のみの違い)と、自局の単価をレセコンで分解する手順は処方箋単価の平均はいくら?薬剤料込み・技術料のみの違いと単価を上げる打ち手で整理しています。本記事は「1枚あたりの利益」に絞って進めます。
売上と利益は違う
処方箋1枚10,000円の売上があっても、そのまま利益にはなりません。以下は原価・経費を仮定した計算例です。全国平均利益を示すものではなく、自局の数値に置き換えて使います。
| 項目 | 仮定する金額 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 処方箋売上 | 10,000円 | 計算例の前提。全国平均とは別 |
| 薬剤原価 | ▲6,500円 | 計算例の前提 |
| 粗利 | 3,500円 | 10,000 − 6,500 |
| 人件費(按分) | ▲2,000円 | 計算例の前提 |
| その他経費(按分) | ▲1,200円 | 家賃・光熱費等を含めた仮定 |
| 営業利益 | 300円 | 3,500 − 2,000 − 1,200(売上比3%) |
薬価差益の実態
薬価差益とは
薬価差益は「薬の公定価格(薬価)」と「実際の仕入れ価格」の差額です。
| 確認項目 | 計算・見方 |
|---|---|
| 薬価差益 | 薬価に基づく薬剤料−実際の薬剤仕入原価 |
| 薬価差益率 | 薬価差益÷薬剤料×100% |
| 先発品・後発品の比較 | 実際の銘柄・数量・仕入条件を照合。分類だけで差益率は決まらない |
後発品の使用比率と利益への影響
2026年6月改定では、後発医薬品調剤体制加算は地域支援・医薬品供給対応体制加算へ統合されています。後発品の使用率だけで加算額は決まらず、各区分の体制・実績要件と届出が必要です。
| 現行加算の区分 | 点数 | 月2,400受付すべてで算定できると仮定した金額 |
|---|---|---|
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算1 | 27点 | 648,000円 |
| 同2・5 | 59点 | 1,416,000円 |
| 同3 | 67点 | 1,608,000円 |
| 同4 | 37点 | 888,000円 |
技術料で利益を上げる仕組み
技術料の内訳
技術料は薬局の「腕の見せどころ」であり、利益率が最も高い部分です。
| 項目 | 点数(例) | ポイント |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 47点 | 処方箋集中率が低い薬局 |
| 調剤基本料3-ハ | 37点 | 大手チェーン等 |
| かかりつけ薬剤師指導料(旧) | 76点 | 2026年6月改定で廃止→服薬管理指導料に統合。代替はかかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点等 |
| 服薬管理指導料 | 45〜59点 | 指導内容で点数が変わる |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算 | 27〜67点 | 2026年改定で再編。在宅実績等が要件 |
| 在宅患者訪問薬剤管理指導料 | 290〜650点 | 在宅業務の中核 |
技術料を最大化する3つのポイント
- かかりつけ機能の加算を取りこぼさない
- 旧かかりつけ薬剤師指導料(76点)は2026年6月改定で廃止。現行は「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点(3月に1回)」「かかりつけ薬剤師訪問加算230点(6月に1回)」が代替の上乗せになる
- 地域支援体制加算を確保する
- 在宅実績を含む各区分の体制・実績要件を満たし、所定の届出を行う
- 在宅業務を拡大する
- 在宅の薬学管理料は外来と算定単位・要件が異なるため、業務時間と費用も含めて比較する
処方箋枚数による損益分岐点

枚数別のシミュレーション
以下は売上単価1万円・月24営業日を仮定した計算例です。薬剤原価は売上の65%、人件費とその他経費は表の金額を置いています。事務職員や法定福利費等を含む人件費の総額を想定しており、全国の標準値や薬剤師2人の給与相場を表すものではありません。
| 項目 | 50枚/日 | 80枚/日 | 120枚/日 |
|---|---|---|---|
| 月間売上 | 約1,200万円 | 約1,920万円 | 約2,880万円 |
| 薬剤原価 | ▲780万円 | ▲1,248万円 | ▲1,872万円 |
| 粗利 | 420万円 | 672万円 | 1,008万円 |
| 人件費 | ▲250万円 | ▲300万円 | ▲400万円 |
| 固定費 | ▲150万円 | ▲150万円 | ▲150万円 |
| 営業利益 | 20万円 | 222万円 | 458万円 |
| 利益率 | 1.7% | 11.6% | 15.9% |
ポイント: 損益分岐点は原価率と経費で変わります。50枚/日の列の経費400万円が固定と仮定すると、400万円 ÷(1万円×35%)÷24日 ≒ 47.6枚/日です。
在宅を加えた場合
外来80枚/日+在宅20名の薬局では:
| 項目 | 外来のみ | 外来+在宅20名(仮定) |
|---|---|---|
| 月間売上 | 1,920万円 | 2,120万円(+200万円) |
| 追加薬剤原価等 | — | C万円(患者の処方・仕入れで変動) |
| 追加人件費 | — | 50万円 |
| その他追加経費 | — | T万円(交通費、資材費等) |
| 営業利益 | 222万円 | 372 − C − T万円 |
| 利益率 | 11.6% | (372 − C − T)÷2,120×100% |
追加売上200万円は、20名×1人当たり月10万円と仮定した薬剤料込みの例です。訪問回数や処方内容で変わります。追加の薬剤原価・交通費・資材費を差し引いて初めて営業利益が分かるため、売上増200万円をそのまま利益増とみなさないでください。
処方箋1枚あたりの利益 早見表:1日の枚数でここまで変わる
1枚あたりの営業利益は「月間営業利益÷月間処方箋受付回数」で計算します。以下は上の各列の仮定を1枚当たりに直した値です。受付回数が増える列では人件費も変更しているため、枚数だけを増やした場合の効果を示す比較ではありません。
| 1日の処方箋枚数 | 月間営業利益(仮定) | 1枚あたりの営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 50枚 | 20万円 | 約167円 | 1.7% |
| 80枚 | 222万円 | 約1,156円 | 11.6% |
| 120枚 | 458万円 | 約1,590円 | 15.9% |
| 80枚+在宅20名 | 372 − C − T万円 | 患者構成・在宅分の受付回数も確認して計算 | 追加原価・経費により変動 |
利益改善は、適切な算定の徹底、業務時間と仕入れ・在庫の管理、患者構成に合った体制づくりを組み合わせて考えます。枚数や在宅患者が増えても人員・移動・薬剤原価が増えるため、各施策の追加売上から追加費用を差し引いて判断します。
利益率を改善する5つの具体策
| 施策 | 効果の大きさ | 難易度 |
|---|---|---|
| 後発品使用率の向上 | ★★★★★ | 低 |
| 算定漏れの防止 | ★★★★ | 低 |
| かかりつけ算定率の向上 | ★★★★ | 中 |
| 在宅業務の拡大 | ★★★★★ | 中〜高 |
| 薬価差益の最大化(共同購入等) | ★★★ | 中 |
まとめ
| 指標 | 確認する値 |
|---|---|
| 調剤医療費の1枚当たり全国値 | 9,372円(令和6年度・電算処理分) |
| 自局の1枚当たり営業利益 | 月間営業利益÷月間処方箋受付回数 |
| 営業利益率 | 営業利益÷売上高×100% |
| 損益分岐点 | 固定費÷(売上単価−1枚当たり変動費) |
| 在宅追加の利益 | 追加売上−追加薬剤原価−追加人件費−その他追加経費 |
処方箋1枚あたりの利益は決して大きくありません。だからこそ、薬剤料以外の部分(技術料・加算・在宅)で差をつけることが薬局経営のカギになります。1枚あたり1円の改善でも、1日100枚・月24日・12か月なら年間28,800円の差になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 処方箋1枚あたりの利益はどのくらいですか?
A. 原価・人件費・経費で大きく変わります。本記事の1枚10,000円の仮定例では営業利益300円ですが、全国平均を示すものではありません。自局では月間営業利益を処方箋受付回数で割って確認します。
Q. 処方箋1枚の売上の内訳はどうなっていますか?
A. 厚生労働省の令和6年度「調剤医療費(電算処理分)の動向」表2-2では、1枚当たり9,372円のうち薬剤料6,760円(72.1%)、技術料2,594円(27.7%)、特定保険医療材料料18円(0.2%)です。
Q. 薬局の損益分岐点は処方箋何枚くらいですか?
A. 一律には決まりません。売上単価1万円・薬剤原価率65%・月経費400万円・月24営業日を固定する計算例では約47.6枚/日ですが、人件費の増員や原価率が変われば損益分岐点も変わります。
Q. 利益率を改善するには何から始めればよいですか?
A. 自局の算定漏れ、薬剤原価、在庫、業務時間を確認し、改善額と必要な費用を見積もることから始めます。在宅業務を増やす場合も、点数だけでなく移動・報告・人員の追加費用を含めて営業利益を計算してください。
薬局のお金・収益をもっと深く知る
出典・参考(一次情報)
本記事の点数・単位数・算定要件は、公開時点の厚生労働省の告示・通知・疑義解釈資料等にもとづいています。実際の算定にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認ください。
- 厚生労働省(診療報酬・介護報酬の告示・通知・疑義解釈資料)
- WAM NET(独立行政法人福祉医療機構)(介護報酬・介護保険制度の解説)
- e-Gov法令検索(健康保険法・介護保険法などの条文)
この記事の根拠資料

