在宅医療における多職種連携の中で、薬剤師と訪問看護師の連携は最も頻度が高く、効果的な組み合わせの一つです。看護師は週に複数回訪問して患者の全身状態を観察し、薬剤師は薬物療法の専門的な視点を提供します。
この記事では、訪問看護師との連携で服薬管理が改善した具体的な事例を紹介します。
なぜ看護師との連携が重要なのか
| 職種 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 薬剤師 | 薬の知識、副作用判断、処方提案 | 訪問頻度が少ない(月2〜4回) |
| 訪問看護師 | 訪問頻度が多い(週2〜5回)、全身観察 | 薬物療法の詳細な知識 |
両者の強みを掛け合わせることで、「薬剤師が訪問しない日にも薬の状態が把握できる」体制が構築できます。
事例1:飲み忘れの早期発見
80代女性。独居。降圧薬3種類を服用中。薬剤師の月2回の訪問では「ちゃんと飲んでいます」と話していたが、週3回訪問する看護師から「血圧が毎回バラバラで安定しない」と連絡がありました。
看護師が一包化カレンダーを確認したところ、3日分の飲み残しが発見されました。薬剤師が訪問しない日にまとめて飲み忘れていたのです。
対応として、ヘルパーの訪問時間と服薬タイミングを合わせる調整を行い、看護師が訪問時にカレンダーの残数を記録するルールを作りました。その結果、1ヶ月後には飲み忘れがほぼゼロになり、血圧も安定しました。
事例2:副作用の早期発見
70代男性。がん性疼痛でオキシコドン徐放錠を服用中。定期訪問での薬剤師の評価は「疼痛コントロール良好」でしたが、看護師から「最近ずっとウトウトしている」と報告がありました。
薬剤師が改めて評価したところ、過鎮静の兆候が確認されました。痛みが軽減している一方で、用量が過剰になっている可能性があると判断し、医師に減量を提案。オキシコドンを20%減量した結果、意識の清明度が回復しました。
看護師の「ウトウトしている」という何気ない観察が、薬剤性の過鎮静の早期発見につながった好例です。
事例3:吸入指導の継続サポート
60代女性。COPD(慢性閉塞性肺疾患)で吸入薬を使用中。薬剤師が初回訪問で吸入手技を指導し、正しく使えることを確認しました。しかし数週間後、看護師から「咳が増えている」と連絡があり、看護師の目の前で吸入してもらったところ、手技が崩れていることが判明しました。
対応として、吸入手技のチェックシートを作成し、看護師の訪問時にも簡易チェックを実施する仕組みを作りました。薬剤師が月1回しか訪問できなくても、看護師が週2回チェックすることで、手技の維持が可能になりました。
効果的な連携の仕組み
共有ノートの活用
患者宅に「連携ノート」を置き、薬剤師と看護師がお互いの記録を確認できるようにします。記載は日付、記録者、内容の3点を簡潔に。
ICTツールの活用
MCS(メディカルケアステーション)などの多職種連携ICTツールを使えば、リアルタイムで写真や数値データを共有できます。カレンダーの飲み残し状況を写真で送ってもらうだけでも、遠隔からの服薬評価が可能になります。
定期カンファレンスへの参加
サービス担当者会議やケアカンファレンスに薬剤師と看護師の両方が参加し、顔を合わせて情報交換する場を持つことが、日常の連携の質を高めます。
連携のNG行動
| NG | 理由 |
|---|---|
| 看護師の報告を軽視する | 現場を最も見ているのは訪問頻度の高い看護師 |
| 指示的な態度を取る | 対等なパートナーとして接する |
| 専門用語で一方的に説明する | 共通言語で話す努力が必要 |
筆者の実感
訪問看護師は薬剤師にとって最も頼りになるパートナーです。お互いの専門性を尊重し、患者さんを中心に情報を共有することで、一人では実現できないケアの質が生まれます。
連携の第一歩は「相手の名前を覚えて、電話で声を聞くこと」。デジタルツールも大事ですが、最初の信頼関係はアナログな人間関係から始まります。

